4大監査法人の勢力を分析するあたっては、どのようなクライアントに関与しているのかも重要な要素だ。今回は4大監査法人のクライアントから、勢力を分析する。
1.2015年度 法人別クライアント数
○クライアント数は監査・非監査で新日本がトップ
監査クライアント数は、唯一4千社を超える新日本がトップ。2位トーマツは新日本の88%、3位あずさは81%で、1~2割少なくなっています。また4位のあらたは新日本の4分の1以下と、3法人から大きく離されています。
非監査でも新日本がトップですが、2位トーマツとの差は67社、僅か1.6%であり、拮抗していることが分かります。なお3位のあずさは新日本の6割、4位のあらたは3割に過ぎず、上位2社に大きく引き離されています。
○監査クライアント数3位のあずさは2位トーマツを監査収入で上回る
監査クライアント数が3500社を超えるトーマツの監査収入は約660億円。一方、あずさは約3300社ですが、約680億円の収入をあげ、逆転しています。同様に、非監査クライアント数ではあずさの約50%に過ぎないあらたの非監査収入は166億円で、あずさの150億円を上回っています。
これらの点から、優良な監査クライアントを抱え監査報酬単価の高いあずさ、また非監査業務にめっぽう強いあらた、という構図が浮かび上がります。
続いて売上単価を見てみます。
○売上単価は監査であずさ、非監査ではあらたがトップ
監査を見ると、単価が唯一2千万円を超えるあずさが1位。そして2位が新日本、3位がトーマツ。あずさは優良なクライアントを多く抱えること、またトーマツはIPOから続く比較的小規模なクライアントが多いことが影響していると考えられます。一方、新日本及びあらたをあずさと比較すると、それぞれ141万円、274万円と差があり、やや意外な印象です。
非監査ではあらたが他法人の2倍以上と大きく差をつけてトップに立ち、あずさ、トーマツ、新日本の順です。あらたの非監査に対する強みはもうお分かりだと思いますが、非監査収入総額で2位に立つ新日本の単価は615万円と、2位あずさと比べても120万円近く低くなっています。監査収入の単価もあずさより140万円程度低いことから、やはり新日本の低利益率の要因は受注単価にあるのではないかと考えられます。
2.法人別クライアント数の3期比較
最後に、各社ごとの趨勢を把握するため、2013年度以降のクライアント数の推移を見てみます。
①監査・非監査ともにクライアント数を伸ばすも、監査収入で伸び悩む新日本
新日本のクライアント数を見ると、2015年度は監査クライアントが109社増、非監査クライアントが200社増、合計で309社増と、高い伸びを示しています。一方、第1回で触れたように、監査収入は0.8%しか伸びておらず、監査クライアント数の増加が増収に結びついていません。
そしてメディアでも報じられている通り、クライアントの新日本離れが始まっており、東芝事件の行政処分発表後、わずか6カ月で約30社が異動を決めています。水面下ではさらに活発であると考えられ、今後の新日本クライアントの動向は注目です。
②非監査クライアント数で新日本に抜かれ、また監査クライアントも減少
非監査クライアントでは2014年度が264社増、2015年度が46社増と順調に増やす一方、監査クライアントはここ2年間減らし続けています。他方、売上はともに増加していることから、ある程度はトーマツから契約を解除したのではと想定されます。
2015年、最も監査クライアント数を減らした法人ですが、一方で2016年度には全日空という大口クライアントも獲得しています。今後クライアント数を増やす方向に転じるのか、引き続き減少するのか。また、再び非監査クライアント数トップの座を取り返すことが出来るでしょうか。