日本国内の監査シェアの大部分を占める新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、そしてPwCあらた有限責任監査法人。この4つを指して「4大監査法人」「BIG4(ビッグフォー)」などと呼ぶが、それぞれの違いについてはあまり知られていない。今回は4大監査法人を業績から分析する。
2015年度の各社の業績から見ていきます。
1、業務収入のトップは新日本、あらたは大きく離れた4位
大手の監査クライアントを多く抱える新日本がここ数年、首位をキープし、非監査に強いトーマツが2位、3位が監査収入で2位につけるあずさとなっています。トーマツは新日本と比較すると約90%、あずさは84%と、1~2割程度離されており、大分差がある印象です。また4位のあらたは、新日本の約1/3に留まり、3法人に大きく水を空けられています。
○監査収入もトップは新日本、4位のあらたも変わらず
監査収入でも上場クライアント数で首位に立つ新日本が引き続きトップ。あずさ、トーマツと続き、ここも新日本との比較では85%程度となっています。4位のあらたは20%程度にとどまり、監査収入では非常に大きく差がついています。
○非監査収入はトーマツがトップ、あらたがあずさを上回って3位
一方、非監査収入では、グループ間の結びつきが強いトーマツがトップとなっており、この傾向もしばらく変わっていません。注目すべきは、監査・非監査比率がほぼ半々のあらたがあずさを上回る3位となっていること。グローバルでトップを争うPwCブランドの強味や、トヨタ、ソニーといった世界的大企業を抱えていることなどが、非監査に強い要因として考えられます。
○飛び抜けて高い利益率を誇るあらた
利益に目を向けると、1位はあらたで、トーマツ、あずさ、そして最後が新日本。あらたが36.6%という高い利益率を誇る一方、他法人は1~2%程度と軒並み低い水準に留まります。他法人の半分程度に留まる社員比率、社員一人当たり業務収入の高さ、そして得意とする非監査が高利益率であることなどが、あらたが高利益率である要因として考えられます。利益率については次回以降の記事で詳しく分析します。
2.過去3年間の業績推移
○監査報酬は回復傾向も大手への影響は限定的
続いて、ここ3年間の業績推移を見ていきますが、その前に、業界動向を確認しておきましょう。日本公認会計士協会が発行している「上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書」によると、上場企業の監査報酬総額は、2013年度が2,118億円、2014年度が2,155億円、2015年度が2,184億円と、それぞれ1.8%、1.3%伸びています。にも関わらず、4大法人の監査収入合計は1%弱の増加にすぎません。従って、2012年頃を底として監査報酬が徐々に増加しているものの、ある程度の割合が中堅及び中小の法人に流れていることになります。
それでは各社ごとに見ていきましょう。
①クライアントの流出が始まったリーディング・カンパニー 新日本
東芝事件等の影響か、監査収入が伸び悩んでいる新日本。なんとか非監査で補っていますが、しかしながら、前述の通りクライアント流出が始まり、2016年度の業績は注目です。
また、上の表で際立っているのが低利益率。詳細は次回に譲りますが、利益率がこれほど低いことは注目に値します。一時期、ダンピングとも囁かれるほどの低価格で監査契約を獲得していた影響もあるかもしれません。
②順調に非監査を伸ばすトーマツ
非監査を22億円伸ばしたものの、監査ではほぼ横ばいのトーマツ。帝国データバンクの調査によれば、2015年に最もクライアントを減らしています。
なお利益率は1~3%程度とあずさと同水準ですが、営業利益率が低下し続けているのは気になるところです。
③優良顧客を数多く抱え、営業上手なあずさ
旧中央青山から数多くの優良クライアントを引き継ぎ、監査収入で第2位のあずさ。収入全体では前期比+3.0%であり、監査/非監査いずれもジワジワと伸び、かつ利益率も安定している印象です。
2016年度にはシャープがあらたへ異動する一方、新日本から富士フイルム、カルビーなどを獲得。上位3法人の中で最も営業上手という印象です。