税理士を目指したころから、「開業はしない」と思っていた私が、ひょんなことから開業することになりました。これまでとは違った責任の重さに不安もありましたが、その分、自由とやりがいが大きく、また、育児との両立もしやすく、今では開業してよかった!と心から思っています。

税理士法人で正社員として勤務して3年半、仕事にも慣れてきて充実感もあり、職場の仲間やお客様との関係などの環境にも恵まれていたのですが、知り合いからベンチャー企業の上場を支援する仕事のお誘いがあり、とても魅力的に思えたので、激務を覚悟の上、チャレンジすることにしました。

ところが、覚悟の上だったとはいえ、想像を絶する長時間労働と職場環境に、すぐに滅入ってしまって、ほどなく退職することにしました。育児との両立どころか自分自身の体調管理すらままならず、今思い返しても自分の考えの足りなさに恥ずかしくなります……。その後、「気を取り直して税理士として再スタートしよう」と考えたとき、どこかに就職するのではなく、自然と「開業しようかな」と思ったのでした。

私一人の税理士事務所。それまでは「開業なんてとても」と尻込みしていたけれど、いざ開業しようかなと考え始めたら、それはとても魅力的なことに思えました。

顧客ゼロからのスタート。収入はいったん減るけれど、これまでの経験と人脈でそれなりにやっていけるのではないか。当時中学1年生と小学3年生だった子どもたちとの時間や、セミナー講演や執筆業など、自分のやりたいことを広げていくなら、開業がいいのかもしれない、と。

思い立ったら即行動です。開業届を出して、パソコンと名刺、封筒を買い、会計ソフトの契約をし、自宅の一部を「脇田弥輝税理士事務所」としてスタートしました。起業した友人が顧問先第1号になりました。その後はボチボチと友人の紹介や、知人の社労士や行政書士からのご紹介で少しずつ顧問先を増やしていきました。私のようなこんな小さな税理士事務所にご依頼いただくのだから、誠心誠意、お客様と向き合いたいと思いました。だから、事務所のミッションは「『外部の税理士の先生』ではなく、『内部の敏腕経理』と思っていただき、お客様とともに事業を成長させること」としています。

開業したばかりのころは、たまに先輩税理士のお仕事を単発でお手伝いしていたものの、正直、家にいることが多く、育児との両立というほどのものもありませんでした。そのころは、久しぶりに昼間の時間ができたのがうれしくて、友人とランチをよくしていましたね(笑)。

開業した年の4月には、自分が卒業した東亜大学大学院法学専攻の非常勤講師になり、そのうち少しずつ顧問先も増え、また、セミナーのご依頼や、インターネットや雑誌の取材・執筆依頼も来るようになりました。このように、時間を自由に調整できることも、開業してよかったと思うことの一つです。

平日の昼間に子どもの学校行事に参加したり、友人とランチをする代わりに、夜や土日に仕事をすることもあります。でも自分で選んだ仕事なので(仕事を選べるのも開業の特権)、ほとんどストレスはなく、好きなことをしている延長の感覚です。とはいえ、常に家事をこなしながら、子どもの習い事のことも考えてお弁当を作るなど、いろいろなことを考えながら仕事をしているので、ときどき、夫に対して「男性は仕事だけに集中してればいいんだからいいよね~」なんて嫌味を言ってしまうこともあります……(笑)。

今、子どもたちは中学3年生と小学5年生。随分、手が離れてきましたが、それでもまだ部活や受験など親が必要な場面は多々あります。でも、数年後にはもっと手が離れると思うので、そのときがきたら、仕事の比率を増やしていきたいと思っています。このように、ライフスタイルによって働き方を調整できるので、育児をしながら働きたい人には「開業税理士」はおすすめです。

そしてこのようになんとか一人でもやっていけているのは、これまでの税理士事務所での経験と、わからないことや不安な点を相談できる税理士や他士業の先輩や仲間の存在、そして協力してくれる家族があってのこと。この環境にいつも感謝しています。

(*)先日出演した「フクロウ大学」での一幕。確定申告のお話やママから税理士になるまでの話をしました。

今いるお客様とこれからも一緒に成長していきたいし、新たにご縁のある方の事業のご支援をしていきたい。そして税理士としてまだまだ活躍の場を広げたい、と夢は大きく膨らんでいます。仕事と育児との両立は簡単ではないけれど、その分楽しい。まだ整っていない面もあるけれど、今は「働くママ」の環境がどんどんよくなっている世の中です。この時代のこの日本の女性に生まれてきたことを最大限楽しみましょう! では、また!