法人の事業活動のグローバル化に伴い、取引、商談、市場調査、業界視察等のために、法人の役員や従業員が海外出張するケースが増加しています。こうした海外渡航のために法人が支出した費用が税務調査で問題となるケースが見受けられます。税務調査で否認されないためにはどのような点に留意する必要があるのでしょうか。

法人が海外渡航のための費用を支出した場合の取り扱いについては、法人税基本通達9-7-6で、以下のように定められています。
法人税基本通達9-7-6 (海外渡航費)
法人がその役員又は使用人の海外渡航に際して支給する旅費(仕度金を含む。以下この款において同じ。)は、その海外渡航が当該法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、当該渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経理を認める。したがって、法人の業務の遂行上必要とは認められない海外渡航の旅費の額はもちろん、法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航であってもその旅費の額のうち通常必要と認められる金額を超える部分の金額については、原則として、当該役員又は使用人に対する給与とする。
(注) その海外渡航が旅行期間のおおむね全期間を通じ、明らかに法人の業務の遂行上必要と認められるものである場合には、その海外渡航のために支給する旅費は、社会通念上合理的な基準によって計算されている等不当に多額でないと認められる限り、その全額を旅費として経理することができる。
■業務の遂行上通常必要と認められるか
法人が支出する海外渡航費については、国内出張の旅費の場合と同様に、業務の遂行上通常必要と認められる部分の実費弁償的な性格のものであるかどうかがポイントとなります。
結果として業務の遂行上通常必要と認められれば、法人の旅費として損金算入が認められます。したがって、その海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、法人が負担する金額が通常必要と認められる範囲内のものであれば、税務調査で問題となることはないでしょう。
なお、海外渡航費のうち、法人の業務の遂行上必要とは認められない部分の金額、及び通常必要と認められる金額を超える部分の金額は、渡航者に対する給与となるため、源泉所得税の課税対象となります。また、渡航者が役員である場合には、臨時的な役員給与として損金不算入の処理を要します。
■土日等を利用して観光した場合
海外出張中に、土日等を利用して観光地を周ったような場合、その観光地を周った部分の費用は旅費として経費処理できるのかという疑問が生じます。
業務の合間をみて、たまたま土曜、日曜のみを利用して観光を行ったとしても、それは一般的なことですから、この観光部分の日数を区分して取り扱う必要はないと考えられます。このような場合には、海外渡航のおおむね全期間が明らかに法人の業務の遂行上必要と認められる場合には、海外渡航費の全額を旅費とすることが認められます。
しかしながら、土曜、日曜の観光のために特別に多額の費用を支出したような場合には、その特別に支出した費用は、法人の業務の遂行上必要とは認められないとして給与認定されることとなります。
■どのような証拠書類を準備すべきか
法人の役員又は使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるか否かについては、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定することになります。
税務調査では、海外渡航が業務の遂行上必要とは言えないとして否認されるケースも見られます。海外渡航費用が否認されないためには、海外出張報告書、旅行日程表、パンフレット、メモ等により、海外渡航の具体的な内容と業務との関連性を明らかにしておく必要があります。
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