弥生株式会社(以下、弥生)は2017年10月、「青色申告会計 弥生」を発表してから30周年を迎えた。ソフト発表当時は、専門家が使うオフコンメーカー全盛期の1970~80年代、突然現れた中小企業に直接会計ソフトを提供する「弥生会計」は、“業界の異端児”的なイメージが強かった。時代を超え、中小企業も自前で帳簿付けをするのが当たり前になってくると、“業界の異端児”は中小企業向け会計ソフトの先駆者と評価され、今では業界のオピニオンリーダーとしてトップを走っている。ただ、ここまで決して順調だったわけではない。振り返れば10年毎に大きな節目があり、そのカベを乗り越えることで飛躍してきた。 この企画では、KaikeiZineの宮口貴志編集長が、弥生の岡本浩一郎代表取締役社長と30年の歴史を振り返りながら、成長の要因はどこにあったのか、メジャーとなった弥生は、次の時代を睨んでどういった方向に進んでいくのか探っていく。また、弥生と二人三脚で共に成長してきた生き証人であるパートナー会計事務所に迫りながら、弥生の良さ、先見性など、生の声を紹介する。
会計業界に対しての弥生にできること
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宮口編集長 - 岡本社長は、いろいろな会計事務所を見てこられたと思います。会計事務所業界に対して提言したいことはありますか。
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岡本社長 - 偉そうなことは言えませんが、私が会計事務所の先生とお話しして感じることは、「このままではダメになる」と危機感を持つ先生が多いということです。企業の数が減っている中で先生の数は減っていませんから、競争が激化して、優勝劣敗がはっきりしてくると思っています。
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宮口編集長 - 弥生が会計事務所の先生に対してできることは何でしょうか。
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岡本社長 - 先生の中には、クラウド会計など新しい技術が登場するたびに「何をすればいいんだろう」と悩まれる人がいると思います。私のアドバイスは「クラウドといった手段に捉われるのではなく、どういった価値を提供したいか」を明確にしましょう、そして、「問題意識を持ったら行動に移しましょう」ということです。別に、一晩で事務所をガラっと変える必要はありません。確実にできることから、一歩前に進むことが大切だと思います。
弥生は、先生をある方向へ強引に引っ張るのではなく、一歩を踏み出すお手伝いをしたいと考えています。
事業コンシェルジュでありたい
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宮口編集長 - 岡本社長は「業務ソフトメーカー」から「事業コンシェルジュ」への転換を図りたいとおっしゃっています。具体的にどのようなことをイメージされているのでしょうか。
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岡本社長 - 現在の弥生は、お客様の業務をお手伝いしています。しかし、お客様がやりたいことは「業務」ではなく「事業」です。つまり、「弥生は事業をお手伝いします」という姿勢が「事業コンシェルジュ」になります。
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宮口編集長 - お客様の売上UPもお手伝いする?
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岡本社長 - はい。売上を伸ばしたり、資金繰りをお手伝いしたりすることも含まれます。「お金が足りないんだけどどうしたらいいのか」と相談されたら融資の提案をします。
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宮口編集長 - 何でもかんでも弥生がサービスを提供するということでしょうか。
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岡本社長 - それは少し違います。ホテルのコンシェルジュを思い浮かべてください。「おいしいものを食べたい」と宿泊客に相談されたコンシェルジュが自分で料理することはありませんよね。それと同じで、弥生は相談を受けたら、会計事務所を紹介するなど、次の一歩に導いてあげられるようにしたいと考えています。
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宮口編集長 - 会計事務所の先生も「トータルサポート」や「ワン・ストップ・サービス」という視点から同じ方向を目指しているように思いますが、いかがでしょうか。
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岡本社長 - それも少し違います。まず、会計事務所は弥生よりも顧問先企業とのつながりが深いですよね。弥生が会計事務所のように一つひとつの企業に深く寄り添うことは難しいと思います。それよりも、弥生はスケールメリットを生かした、会計事務所とは違ったサービスを提供できるのではないでしょうか。
たとえば、会計事務所が企業のカスタマーセンターの役割を担おうとしたら大変な労力をかけなければなりません。でも、弥生のカスタマーセンターを利用してもらえれば、24時間体制で顧問先企業を支援することが可能になるかもしれません。
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宮口編集長 - 会計事務所と弥生がお互いの特徴を生かすことをイメージされているのですね。
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岡本社長 - そうです。私たちは「福利厚生サービス」も提供していますが、これも会計事務所が自ら一つの顧問先のために立ち上げられるサービスではないと思います。今年から始める予定の「小規模事業者向けの融資を行うサービス」もいい例です。会計事務所には、弥生のスケールメリットを活用していただければと考えています。

自分の引き際と事業継承
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宮口編集長 - 弥生が岡本体制になってもうすぐ10年になります。当初は3年とか5年とか、期間を決めて仕事をお請けになったのではないですか。
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岡本社長 - そうですね。当初は「最低でも3年は頼むよ」と言われていました。それが10年も続けることになるとは思ってもいませんでした。
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宮口編集長 - そろそろ、ご自身の引き際を考えることはありませんか。
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岡本社長 - 私は弥生が好きなんですよ。だからもう少し続けたいとも思っています。
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宮口編集長 - それでもいつかは事業承継を行うときが来ますよね。
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岡本社長 - もちろんそのことも考えています。弥生はこれから10年、20年とお客様に価値を提供し続けて行かなければなりません。その会社が1人の経営者に依存することは健全でありません。私の最後の仕事は、次の経営者にバトンを引き継ぐことだと思っています。
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宮口編集長 - どのような形での事業承継を考えていますか。
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岡本社長 - やはり、社内にいる人間にバトンを渡したいと考えています。そう言えるだけ、社内の人材が育ってきました。
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宮口編集長 - 最後にお聞きします。弥生の30年を振り返り、また弥生の経営者として10年を過ごされ、経営者として大切なことは何だと実感されていますでしょうか。
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岡本社長 - 皆が納得できる中長期的なビジョンを明確に示すことではないでしょうか。それが弥生には必要でしたし、これからの弥生にも必要だと思います。

岡本 浩一郎(おかもと こういちろう)
弥生株式会社 代表取締役社長
1969年横浜市生まれ。東京大学工学部卒業。野村総合研究所(NRI)入社。システムエンジニアとして証券系システムの開発、マーケティングなどに従事。プロジェクトマネージャーとしてWindowsベースの基幹システム開発ツールの商品化にも携わる。在籍中の97年にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校で経営大学院を修了。98年、ボストンコンサルティンググループの経営コンサルタント、2000年、IT戦略に特化した経営コンサルティング会社を設立。08年4月、弥生の代表取締役社長に就任。


