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中日・松坂大輔のグリーンカード取得で所得課税における居所に関心

プロ野球の春季キャンプが真っ盛りだが、中日の松坂大輔投手が、米国の永住権(グリーンカード)取得手続きのため、キャンプから離脱したという。松坂投手は2014年に日本球界に復帰しているものの、家族は米ボストンに残っている。単身日本で頑張る松坂選手だが、納税問題はどうなっているのだろうか。

税法上、米国に滞在の外国人は実質滞在条件(米国国税庁であるIRSが定める計算式を元に米国滞在日数が183日を越えるかを判断)により居住者・非居住者の判定を行う。ただ、グリーンカード保有者の場合は、グリーンカード取得日から米国居住者となるため、実際の居住地に関係なく常に米国居住者として認識される。つまり、たとえ1年中、日本で生活をしていたとしても、松坂選手は米国居住者として米国に年間の全世界所得を申告する義務を負うのだ。また、松坂選手が日本でも所得税を納める義務があった場合は、日米両国で税金を納める事になる可能性がある。結果的に同じ所得に対し二重課税の不利益が発生する場合があるわけだが、その場合は、二重課税の調整として外国勤労所得控除 (Foreign Earned Income Exclusion) や外国税額控除 (Foreign Tax Credit) を適用することにより、米国での納税額を低く抑えることになる。

米国のグリーンカードは、米国への出入国が自由で滞在に期限がなく、職業も自由に選択できる許可書。条件を満たしていれば、米国以外の国籍を持つ者に対して発給される。有効期間は10年で更新も可能だ。取得には6カ月~2年かかるとされている。

納税地の判断においてグリーンカード取得の有無は大きいが、取得していない場合はどうなるのだろうか。所得税法では、住所や居所等の居住形態に応じて納税義務者を区分し、納税義務の内容を定めている。

住所は「各人の生活の本拠」であり、生活の本拠とは「人の生活の中心となっている場所」とされているが、民法上の住所はさらに「定住という客観的な事実(客観主義)」の他に「定住の意思が必要(意思主義)」との考え方も取り入れている。

所得税の納税義務の判定において国内に住所を有するか否かについては、所得税法施行令第14条(国内に住所を有する者と推定する場合)に定めている。

 

第14条  国内に居住することとなった個人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その者は、国内に住所を有する者と推定する。

その者が国内において、継続して一年以上居住することを通常必要とする職業を有すること。

その者が日本の国籍を有し、かつ、その者が国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有することその他国内におけるその者の職業及び資産の有無等の状況に照らし、その者が国内において継続して一年以上居住するものと推測するに足りる事実があること。

前項の規定により国内に住所を有する者と推定される個人と生計を一にする配偶者その他その者の扶養する親族が国内に居住する場合には、これらの者も国内に住所を有する者と推定する。

また、住所については、所得税基本通達2-1で、法に規定する住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定するとしている。

なお、居所については所得税法や所得税基本通達にも定義されていないが、居所とは、一般的に「人が相当期間継続して居住しているものの、生活の本拠までには至らない場所」とされている。

国税OB税理士によると、「住所や居所が日本国内にあるか否かの判定は課税上重要な問題だが、単に日本から国外に出国した事実や住民登録、在留資格等により形式的に判断できるものでもない。その人の職業や住居、その者と生計を一にする家族の居住状況、資産の有無等を総合的に考慮して判定する必要もある」と指摘する。居住地の判断については、納税者と課税当局とで争いになることも多く、税金の実務においては慎重な判断が必要となるのだ。

著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
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