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女性記者のひとりごと vol.52 節税目的の養子縁組

最高裁判決は、結果としてこれまでの「ケースバイケース」が踏襲されたものの、養子縁組の「意思」に関するツッコミは甘いのなんのって。最高裁なんだからもっとビシッと決めてよ、と思ったのは私だけだろうか。

一昨年、「節税目的の養子縁組でもOK」とする最高裁判決が話題になった。
節税、租税回避、脱税の境界線があやふやになり、
それについての議論が活発化するなかでのこの判決。
司法もずいぶんドライになったものだ。

富裕層の間で、養子縁組がスタンダードな相続対策となって久しい。
事件当時の相続税基礎控除は、
5000万円+(1000万円×法定相続人数)
法定相続人には被相続人の配偶者や子供が含まれるが
養子については、実子がいる場合は1人まで、
実子がいない場合は2人まで含める事ができるとされている。
養子1人につき基礎控除が1000万円増えるので、節税効果はかなりのものだ。
当然、税務署はピリピリ。
税務調査で否認して裁判になるケースも多かったが、
下級審では判断が分かれていた。
最高裁が「節税目的と養子縁組の意思とは共存し得る」と判断したことで
不安定だった相続税対策に最高裁の〝お墨付き〟が与えられた格好だ。

租税裁判で国が負けると、いつも何となくスカッとするのだが、今回は微妙。
判決を読むと、最高裁は「節税目的の養子縁組であっても直ちに無効とはいえない」と判示している。
この「直ちに」の一言によってケースバイケースの現状が維持された感が強い。
キレの悪さが滲む判決に、「なんだ、今までと変わりないじゃん」と思った人も多いだろう。
それでもまあ、認知症の高齢者の財産を狙った養子縁組などが排除される余地が出来てよかったのだと思う。
気になるのは、少しドライすぎやしませんか?ってこと。
下級審では、養子縁組にあたって当事者の「意思」が問題になるケースが多かった。
「親子になること」の意味を理解し、意思と覚悟をもって縁組みしているかという、当事者の心の中にまで踏込んで検討されてきた。
しかし最高裁判決は、結果としてこれまでの「ケースバイケース」が踏襲されたものの、養子縁組の「意思」に関するツッコミは甘いのなんのって。
最高裁なんだからもっとビシッと決めてよ、と思ったのは私だけだろうか。

著者: 川瀬かおり

記者/税金ライター

社会部を根城とする税金オタクの女性記者。財務省・国税庁を中心に取材活動を展開すること20余年。事件モノを得意とし、裁判所にも日参する。税金ネタをこよなく愛する一方で、税制の隙間や矛盾を見つけては叩きまくるサディスティックな一面も。趣味は夜討ち朝駆けとクラブ通い。

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