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元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識:判決・裁決紹介 海外子会社に支払った業務委託費が、海外子会社の欠損を補填するための資金援助であるとされた事例

海外子会社に支払った業務委託費が、海外子会社の欠損を補填するための資金援助であり、「国外関連者に対する寄附金」と認定された裁決事例を紹介します。海外子会社に対する業務委託費は税務調査で狙われやすい項目の一つです。(平成19年4月10日裁決)

事実関係

①調査対象法人(X社)は、電子基板等を製造し、国内外に販売している。X社は海外に100%出資の子会社Kを有している。
②X社とK社は業務委託契約を締結した。K社は当契約に基づき、X社から電子基板を購入し、これを取引先に販売するとともに、販売した電子基板の補修サービスを行っていた。対価については、両当事者間でその都度合意されていた。
③その後、X社とK社は、別途「サービス業務に関する契約」(以下「新契約」)を締結した。K社からX社に送付された新契約書に基づく請求書には、「平成0年4月から平成0年3月までの1年間の調整金として○○○○ドル」と記載されており、X社は、当該金額をK社に支払い、業務委託費として計上した。
④税務調査において、調査担当者が新契約に基づく業務委託費について説明を求めたところ、X社とK社間の価格設定の見直しを行った結果、X社とK社との間で精算されていない費用があることが判明したことから、K社との間で新契約書を作成して、当該未精算費用に10%のマージンを加算した額を支払ったものであるとの説明をした。しかし、本件未精算費用について、具体的な計算根拠の説明及び資料の提出をしなかった。
⑤調査担当者は、当該業務委託の担当課長であるM課長が関係者に送信したメールを把握した。メールには以下の内容が書かれていた。
■M課長→N部長(営業担当部長)へのメール
『K社平成0年3月期の決算が○○○○ドルの欠損の見込みである。』
■M課長→T部長(経営管理担当部長)へのメール
『平成0年10月から平成0年3月の間で、K社の欠損を解消させるためには、X社からから○○○○円の支援が必要である。』
■M課長→K社社長へのメール
『X社としては、K社の行っているサービス業務に対して、業務委託費を支払うこととする。なお、これまで支払っていない業務委託費を支払うことの理由について、日本の国税当局から指摘を受けると予測されるので対応が必要である。』
『K社に対する業務委託費の支払金額は、○○○○円となった。これにより、K社の単年度黒字化は可能なはずである。』
⑥以上の事実関係から国税当局は、本件業務委託費をX社からK社に対する寄附金と認定し、仮装行為を伴うため、重加算税を賦課した。X社は、当該課税処分を不服として審査請求を行った。

審判所の判断

①一般的に、取引上、未精算費用があった場合には、会社間で当該未精算費用の額、支払方法等についての検討や話合いがされてしかるべきであり、その結果を両社ともに文書で記録しておくのが通常である。本件の場合、具体的な計算根拠の説明及び資料の提出はなく、両社間で当該未精算費用の額、支払方法等について具体的に検討などをした事実も認められない。
②M課長が送信した各メールの記載内容、K社の各事業年度の決算状況等からすれば、K社は設立以来3期連続欠損の状況にあり、平成0年3月期の決算も○○○○ドルの欠損が見込まれたため、これを解消し単年度で黒字化にするための方策として、X社が業務委託費を支払うことで支援をすることとしたものと認められる。
③本件サービス業務の未精算費用があったとは認められず、本件業務委託費は、K社の欠損を補填するために援助としてされた金銭の贈与であり、寄附金に該当する。
④サービス業務の未清算費用がないにもかかわらず、K社の欠損を補填するために必要な資金を捻出し、業務委託費の名目で支出するため新契約を締結して支出し、業務委託費として申告したことは、事実の仮装にあたることから重加算税の賦課処分は適法である。

コメント

海外取引の調査において、調査官が重点的に調査する項目の一つが海外子会社との取引である。

本件のように、海外子会社へ業務委託費の支払いがある場合には、業務委託費に仮装した資金援助ではないかという観点からも調査が行われる。現地子会社の業績が低迷し赤字続きの場合など、業務委託費等の支払いに仮装して財務支援を行うケースがよく見られる。このような場合には仮装行為を伴うため、重加算税の対象ともなる。

海外子会社へ業務委託費を支払う場合には、業務報告書等の成果物、業務委託料の算定根拠の資料、金額変更があった場合にはその変更が合理的であることを説明する資料等を準備しておくことが必要である。

著者: 多田恭章

租税調査研究会 主任研究員

元国税庁国際業務課主査。
中小企業に対する税務調査や国際税務に関する経験等をフルに活かし、企業の方々の抱える疑問や不安を少しでも解消できるよう、適切なアドバイスをしていきたい。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/

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