租税回避の意図は認められない
国税当局側は、「AP社は実体のないペーパーカンパニーであり、持ち株会社化に正当な理由や事業目的はなく、一連の行為には法人税を免れる意図があった」と主張したが、一審の東京地裁は、AP社がグループ再編の中で企業買収の受け皿会社として一定の役割を果たしていたこと、金融仲介機能を果たしていたことなどを挙げ、「正当な理由や事業目的がなかったとはいい難い」と指摘。
また株譲渡が連結納税制度の導入前に行われていたことなどから「租税回避の意図は認められない」とし、株譲渡等による法人税負担の減少は「法人税法132条でいう『不当』なものと評価されるべきであると認めるには足りない」としてIBM側に軍配を上げた。
二審の東京高裁も一審判決を支持して国税側の控訴を棄却。そして今回、最高裁が国側の上告を不受理としたことで、国際的租税回避スキームを駆使したIBM側の勝訴が確定した。
なおIBMが利用したスキームは、平成22年度税制改正で「完全支配関係にある法人間における株式の譲渡で発生する譲渡損益は計上しない」などの改正が行われたことで現在は封じられている。
還付加算金も国家予算規模
IBM側は追徴税額1200億円を全額納付した上で裁判に臨んでいるため、今回勝訴が確定したことで、この1200億円を取り戻せるだけでなく、巨額の還付加算金をも手にすることになる。
還付加算金は納めすぎていた税金にかかるいわば「利息」のようなもの。「誤った税金を納めた日の翌日」から「還付が決定(充当)された日」までの期間に応じて支払われる。今回のケースで適用される利率は1.8〜4.3%で、実に数百億円にのぼる還付加算金が支払われるものとみられる。その財源は国庫、つまり、われわれが納めた税金であるということを考えると、企業の節度ある納税姿勢と、時流に即応した法整備が強く求められる。
今後とるべき「3つの対応」
今回の裁判確定を受け、国際税務に詳しい日本大学経済学部教授の伏見俊行氏は「租税法律主義の下、裁判の結果を否定するものではない。しかし、大企業による周到な国際的租税回避スキームであり、その規模から見ても一般的な〝節税〟の域を逸脱している。裁判確定により国家予算規模の税金が失われることで、国にとってはもちろん、国民にとっても、大きなマイナスの影響が及ぶことを認識する必要がある」と話す。
裁判確定による今後への影響も気になるところだが、伏見氏は今後とるべき「3つの対応」を挙げている。
「まず法整備で租税回避行為を封じることが基本。そして、受け入れがたい租税回避行為を企画・実行する納税者や専門家に対して世間が厳しい目を向け税逃れを許さない環境を作ること。最後に、租税回避の発想自体を自制させる意味で租税教育の在り方も考えていく必要がある」(伏見氏)。
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