国税庁が公表した平成29年度分「会社標本調査」によると、赤字法人割合が8年連続で減少していることが分かった。さらに、利益計上法人の所得金額が8年連続で過去最高を更新。企業の収益等は右肩上がりの好調をキープしている。

統計問題により3カ月遅れで公表
国税庁が実施する会社標本調査は、「法人企業の実態」と呼ばれ、昭和26年から毎年実施されているもの。
法人企業について資本金階級別や業種別にその実態を明らかにし、併せて租税収入の見積り、税制改正及び税務行政の運営等の基礎資料としている。
第68回に当たる平成29 年度分は、29 年4 月から30年3 月に終了した法人の事業年度を対象とし、30年7月末現在で取りまとめられている。
法人企業の実態は、例年3月下旬に公表されていたが、今回は先月閉会した通常国会でも時間を割いて審議された厚生労働省の不正統計問題の影響もあり、公表が3カ月遅れとなった。
法人数は5年連続過去最高に
29年度分の法人数は、270万6627社(前年度分比1.3%増)で、5年連続で過去最高を更新。資本金総額も147兆7561億円(同5.6%増)となっている。
資本金階級別の構成比でみると、「資本金1千万円以下」の階級が86.1%を占め、「1千万円超1億円以下」の階級を合わせると、全体の99.2%に達している。また、業種別の構成比では、「サービス業」が28.1%と3割近くを占め、「建設業」が16.1%、「小売業」が12%と続いている。
黒字法人数はバブル期水準まで増加
270万6627社のうち連結法人を1グループとして計算した269万3,956社の状況をみると、黒字法人は100万6857社、赤字法人は168万7099社で、黒字法人数は平成2年度~4年度の3年間連続で100万社を突破(過去最高は平成3年の111.4万人)して以来、実に26年振りに100万社を超えた。
全法人数に占める赤字法人の割合は前年度分から0.9ポイント減少の62.6%と、過去最高の赤字割合を記録した平成21年度分(72.8%)から8年連続で低下している。数字上はアベノミクス効果等による企業業績の改善がみられる。
業種別に赤字法人割合をみると、最も高いのが「出版印刷業」で74.8%と4社に3社が赤字。以下、「繊維工業」74.4%、「料理飲食旅館業」73.3%、「小売業」70.6%、「食料品製造業」70.3%までが赤字割合が7割を超えており、最も低い業種は「建設業」の57.2%だった。

黒字法人の所得額は約68兆円
営業収入金額は、黒字法人の営業収入金額が1236兆4302億円と2年続けて増加したことを受けて、全体では1519兆4651億円と前年度分に比べて4.7%とこちらも2年連続で伸びており、企業の本業での業績の回復傾向が伺える。この結果、所得金額も67兆9437億円と14.3%増えて8年連続の増加とともに過去最高を3年連続で更新した。営業収入金額に対する所得金額の割合である所得率は5.5%と前年度分に比べて0.3ポイントの上昇となった。

法人税額は約12兆円
企業が納めた法人税額は11 兆9,772 億円と14.4%前年度分を上回っている。また各種控除税額をみると、「所得税額控除」は3兆5,496 億円で前年度分に比べ11.9%増加し、外国と日本で生じる二重課税を日本における税額控除の方法で排除する「外国税額控除」は5,344億円と4.7%増えており、海外での企業の収益が増えているようだ。繰越欠損金は、当期控除額が8兆3,627 億円(前年度分比10.1%増)、翌期繰越額が68 兆9,888 億円(同0.8%増)で、1事業年度当たりでみると、当期控除額は931 万円、翌期繰越額は4,130 万円。
企業の交際費は6年連続上昇
景気のバロメーターとも言われる企業の交際費等の支出額は、3兆8104億円と5.1%増加して6年連続で増えており、その伸び率も前年度分と比べ1ポイント伸びているなど、企業が営業等において交際費の支出を増やしていることが浮き彫りとなっている。1 社当たりでは141.4 万円を支出。なお、支出額のうち税法上損金に算入されない金額は平成25年度分以来の1兆円超えとなる1兆94億円に達し、支出額に占める割合(損金不算入割合)は26.5%となっている。
営業収入金額10万円当たりの交際費等支出額は平251円で前年とほぼ変わらないが、この10年間で支出額は最も高い。これを資本金階級別にみると、1,000万円以下の階級では671円と高く、10億円を超える大企業では103円となり、資本金が大きくなるにつれて支出額が低くなっている。また、業種別では、建設業の668円が最も高く、以下、不動産業582円、サービス業463円と続いており、最も低いのは鉱業の148円。


寄附金は前年度分の反動で大きく減少
28年度分においては、4年連続で過去最高を更新するとともに、初めて1兆円超えの1兆1229億円となった寄附金の支出額は、7610億円と32.2%も大幅に減少した。これについては、28年度分は災害関連、企業版ふるさと納税のほか、政治団体や関連子会社等への寄附金等が過去最高額となったことから大幅に増え、29年度分はその反動もあるのではないかと国税庁では分析している。
寄附金を区分別にみると、支払った金額全てを損金に算入できる「指定寄附金等」は1106億円(前年度分比25.5%減)、「特定公益増進法人等に対する寄附金」は1005億円(同0.9%増)、「その他の寄附金」は5499億円(同37.1%減)となっており、特定公益増進法人等に対する寄附金以外は大きく前年度分を割っている。
営業収入10万円当たりの寄附金支出額は50円と27円ほど前年度分を下回り、これを業種別にみると、最も高いのが「鉱業」の96円で、最も低いのが「卸売業」の19円と約5倍の差がある。
貸倒引当金の期末残高は1兆7,485億円
貸倒引当金の利用法人は、71万3282社で前年度分よりも3千社多く、利用割合は26.5%、期末残高は1兆7485億円となった。利用割合を資本金階級別にみると、資本金1千万円超1億円以下の階級で43.9%と最も高く、1億円超10億円以下の階級で1.6%と最も低い。また、当期発生分の減価償却費の損金算入額は38兆2,111億円で損金算入限度額に対する割合である損金算入割合は、前年度分の93.6%から3.7ポイント低い89.9%となっている。損金算入割合を業種別にみると、「化学工業」が97.2%と最も高く、「サービス業」が88.2%で最も低くなっている。