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法人税 申告漏れ所得金額が1兆円超え 実地調査件数は約9万9千件

国税庁によると、今年6月までの1年間に行った法人税調査件数は、海外事案や無申告事案などを含めた申告漏れ所得金額が前事務年度に比べて約4割増加し、平成23事務年度以来の1兆円超えとなった。

国税庁が公表した平成30事務年度法人税・法人消費税等の調査事績は、平成30年2月1日から31年1月31日までの間に事業年度が終了した法人を対象に、30年7月から令和元年6月までの間に行った全国の国税局・税務署の法人税調査結果。法人への税務調査は大きく分けて、「実地調査」と「簡易な接触」による方法が執られているが、実地調査は、大口・悪質な不正計算が想定される法人など調査の必要度が高い法人に対して、法人の事業所等に臨場して帳簿書類や申告内容の真実性について調査し、誤りを把握した場合には修正申告等を勧奨する。一方、簡易な接触は、申告内容の確認を行った際に、計算間違いや税額控除等の適用誤りといった単純ミス等が想定される法人に対して、書面や来初依頼により、申告書の自発的な見直し及び提出の要請をするもの。

同事務年度の実地調査件数は9万9千件(対前年比1.3%増)で、このうちの7万4千件(同1.8%増)から1兆3,813億円(同38.2%増)の申告漏れ所得金額を把握し、加算税等含め1,943億円(同0.2%減)が追徴されている。平均調査日数は、前事務年度と同様の11日間。

対象法人に占める調査割合(いわゆる「実調率」)は3.2%で、国税局所管法人は9.8%、税務署所管法人は3.1%となっており、計算上では国税局が所管する法人は10年に1回、税務署所管の法人は33年に1回の計算となる。

実調率は、平成元年度では8.5%あったが、毎年増え続ける新設法人や経済取引の国際化・広域化・複雑化及び高度情報化の進展に伴う申告事務の大幅増加に対して、国税職員の定員は毎年、国会の財務金融委員会での税制改正法案の採決に当たり増員の付帯決議が行われているものの予算の関係から満足に増えていないことなどから、この30年近くで実に5%以上も低下している。

そこで国税当局で増やしているのが是正を目的とした「簡易な接触」。臨場するのではなく、税務署に来てもらうことでの時間の短縮や、法人の経理担当者や社長と会うことで申告書から読み取ることのできない真実も把握できることも少なくないことから、個人事業者等の所得税調査でおなじみのこの手法が、近年は法人税調査でも増えているようだ。30事務年度では、法人税及び法人消費税で4万3千件実施され、法人税では44億円の申告漏れ所得金額の是正が図られている。また、国税庁局では近年、ICT化の環境整備を進めており、申告書作成時の計算誤りなど単純な案件は、この簡易な接触で処理を進めるケースが多い。

不正1件当たり1,385万円の不正所得、不正割合ワースト業種は「バー・クラブ」

実地調査における7万4千件の非違事案のうち、故意に仮装・隠ぺい等による不正計算を行っていた法人は調査件数全体の2 万1千件(同1.4%増)と調査全体の約2割で、その不正所得金額は2,887億円(同0.1%減)。不正申告1件当たりの不正所得金額は不正所得金額の総額が減っていることから1,385万円(同1.5%減)となってはいるが決して少なくない。

業種別の不正状況では、まず不正発見割合をみると、今回も「バー・クラブ」が70.3%で「外国料理」46.7%、「大衆酒場、小料理」46.3%「その他の飲食」42.7%を大きく引き離しダントツで17年連続のワースト1となった。また、上位を飲食店が占めており、クレジットカードが増えているものの、やはり昔から“現金商売には不正が多い”と言われるように依然として飲食店の不正が多いことが伺える。一方、1件当たりの不正所得金額をみると、「輸入」が4,385万円とワースト1となり、以下、「その他の化学工業製造」4,236万円、「産業用電気機械器具製造」3,145万円で、例年上位に名を連ねる「パチンコ」は3,062万円で4位となっている。また、別表を見てわかるように不正発見割合と違い不正所得金額は前年を大きく変動しているが、これは国税当局が毎年定期人事異動後に決定するその事業年度における調査重点業種により大きく変わることから、30事務年度は輸入業者等を重点業種として事務量を傾注したことがわかる。

海外取引事案の申告漏れ所得が対前年比約90%増

一方、国税当局では、好況業種をマークするとともに、「海外取引事案」、「無申告・無所得申告事案」、「消費税不正還付事案」などへ目を光らせている。

わが国も経済取引のグローバル化が加速している中、大企業に限らず中小企業等においてもアジアを中心に海外進出を図っている。これに比例して、税法の知識不足からくる申告ミスも増えているようだが、海外の取引先や関連企業に対する外注費を水増し計上や、海外に作った子会社を利用する方法による不正事案も目立っている。

このような状況に対して国税当局では、国外送金等調書や租税条約等に基づく諸外国との情報交換制度を活用するとともに、必要に応じた職員の海外出張などの手段を講じることで、海外取引事案の適正公平な課税に向けて取り組んでいる。

海外取引法人等への調査(実地調査)件数は1万5,650件(同5%減)と若干減っているが、このうちの4,367件(同3.0%減)から6,968 億円(同89.9%増)の申告漏れ所得金額を把握しており、今回は申告漏れ所得金額は大口事案が把握されたこともあり大幅増加している。申告漏れ所得金額は、26事務年度は2,206億円だったものが30事務年度には7千億円近くまで右肩上がりで増えていることから、国税当局の的確な調査選定が実施されていることがわかる。一件当たりの申告漏れ所得金額も前事務年度の2,228.6万円から4,452.4万円と倍増となっている。

また、申告漏れ件数4,387件のうち646件は、租税回避行為などの不正を故意に行っていて、その不正所得金額は227億円(同10.3%増)に達している。

不正事例としては、A海外法人に対する多額の外注費が計上されているものの、その外注費が関連のB海外法人となっていたことから調査が展開された設計コンサルタント会社のケースでは、これについての役務提供の内容について確認したが代表者が曖昧な回答に終始したため租税条約等に基づく情報提供要請をX国税務当局に要請。その結果、A海外法人への外注費は計上した一部しか支払われておらず、支払われた残金は代表者の生活費を捻出するために水増し計上されていたことを把握した(遡及期間2年、申告漏れ所得金額2,300万円、追徴税額重加算税含め700万円)。

赤字法人の7社に1社は実は黒字法人

先に国税庁が公表した「平成30事務年度法人税等申告事績」においても、法人の約1割が申告をしていないことが明らかになっている。確かに休眠中だったり、廃業したもののその登記を行っていない法人もいるが、この中には事業を行っているにもかかわらず申告しない法人(無申告法人)や所得がありながら赤字に仮装して申告する法人(無所得法人)が含まれており、これらを放置しておくことは納税者の公平感を著しく損なうものとして国税当局では海外事案とともに目を光らせている。

無申告法人については、登記情報等から法人を把握した上で的確に管理するとともに、稼働無申告法人と見られる法人を重点的に調査している。

30事務年度では資料情報などの分析・検討を行った結果、事業を行っていると見込まれる2,683件(同3.5%増)に実地調査を実施し、法人税76億円(同51.4%増)及び消費税66億円(同12.7%増)を合わせた142億円(同30.5%増)を追徴している。また、このうち稼働していることを意図的に隠して無申告していた法人は488件にのぼり、法人税43億円、消費税22億円を追徴している。

不正事例としては、C法人に対する実地調査において下請法人(D法人)が無申告法人であることが判明したことから所轄税務署へ連絡が行われ調査が展開されたケースでは、多額の利益があり申告義務があることを知りながら、作成していた売上げに係る書類を破棄して申告を行わず、さらに取引先と通謀して架空の外注費を振込することによって得た金員を代表者が個人的に消費していたことを把握した(遡及期間5年、申告漏れ所得金額1億5,700万円、追徴税額加算税含め4,900万円)。

一方、赤字申告の法人の中から資料情報等により赤字に仮装している可能性のある2万9千件に対して実地調査が行われた結果、2万1千件(同8.8%減)から7,645億円(同211%増)の申告漏れ所得金額を把握し、加算税58億円を含め284億円(同4.7%増)を追徴しており、調査件数の減少に対して申告漏れ所得金額は大幅に増えているのが特徴だ。

また、調査した27.2%に当たる8千件(同6.8%減)は故意に申告から所得を除外しており、その不正所得金額は1,128億円(同8.2%減)に達していて、1件当たりの不正所得金額は1,425万6千円だった。

そして調査の結果、赤字から黒字となった有所得転換割合14.6%で、実に調査した7法人に1法人が実は黒字なのに赤字と偽った法人だったことになる。

法人消費税の不正計算で1件当たり144万円の追徴課税

国税当局では、消費税の創設以来、同税が“預り金的性格”を持っていることから、より一層の適正・公平な課税及び納税に向けて調査等を実施している。まず法人税等との同時調査では、法人消費税については9万5,417件(対前年比1.4%増)へ調査を行い、5万6千件(同0.6%増)から非違を把握して800億円(同6.9%増)を追徴している。

一方、法人消費税では、景気の良し悪しに関わらず虚偽の申告による不正還付事案が後を絶たっていない。不正還付に対しては、社会的な関心も高いことから、法人税との同時調査とは別に単独での調査に力を入れた。30事務年度も消費税の還付申告をした6,553件に対して実地調査を実施し、故意に不正を働いていた829件を含む3,687件から何らかの非違を把握し174億5,600万円を追徴している。

不正の手口は年々巧妙化しており、30事務年度の調査では輸出物品販売場の許可を受け、外国人旅行者に対し高級腕時計の免税販売を行う法人の事例が明らかにされている。多額の消費税の還付申告書が提出されたことからその実態を確認するため同法人に行政指導を実施したところ、取引実態に不審な点があったことから実地調査が行われた。その結果、同法人は消費税の還付金を不正に受領するため、架空の課税仕入れを計上するとともに、自社と全く関係のない外国人旅行者等のパスポートの写しを利用して、店頭で外国人旅行者に販売したかのように装って架空の免税売上げを計上していたことを把握した(遡及期間1年、追徴税額加算税込め3,100万円)。

国税当局では、赤字法人等のほか、近年、外国人旅行者の増加に伴い増えている輸出物品販売場の許可を受けて商売をしている法人への消費税の還付申告調査もしっかり行っている。

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著者: イーター侍

税金ライター/元税金専門誌編集者

四半世紀以上、税金専門誌の編集者として国税庁、国税局、税務署、会計事務所に出入りする。数年前に独立した後、編集者時代に築いた人脈をいかし、ネットワークビジネスを手がける。その傍ら、趣味と副業を兼ねて税務関係ニュースを追いかける“中年ライター”だ。

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