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酒井克彦の「税金」についての公開雑談~煽り運転と租税~

ここ最近「煽り運転」という言葉を度々耳にします。つい先日には、高速道路で運転手が殴られるといった事件が発生しましたが、何度も運転手を殴打するドライブレコーダーの映像は、ショッキングなものだったと思います。さて、今回は法令遵守の精神を考えてみましょう。

「煽り運転」と交通ルールの遵守

「煽り運転」という悪質な行為が注目される契機となった事件があります。

高速道路のパーキングエリア付近で進行を妨げたという因縁をつけられて煽り運転を受けたことがきっかけで高速道路上でトラブルが発生し、煽り運転を受けた運転手夫婦が路上に出たところ、後続車にはねられて死亡するという悲惨な事故があったことは記憶に新しいところです。

かかる事故について煽り運転を行った者が危険運転致死傷罪を問われた事件について、横浜地裁平成30年12月14日判決(判例集未登載)は同罪の成立を認め、「強固な犯意に基づく執拗な犯行」であることを認定し、「夫婦の無念は察するに余りある」として懲役18年(求刑懲役23年)を言い渡しました。

この判決の是非を巡っては今後の議論を待つほかありませんが、この事件はいかに運転手が交通ルールを誠実に守っていたとしても、謂れなき事故に市民が巻き込まれるという恐怖を市井の人々に与えるものだったかと思います。
全ての道路利用者が法令を遵守する必要があることはいうまでもありませんが、それが担保できない限りおちおち外も歩けないという不安にも接続する話です。

ここに、交通安全教育の本来的な意義があるでしょう。
たった1人の交通違反者が社会秩序を乱すのです。「教育を受けなくても人様に迷惑をかけることはない」という理は存在しません。
だからこそ、初等教育の段階で交通安全教育が行われるのであって、これはいわば国民の義務としてなされなければならないものでしょう。

租税と法令遵守

さて、租税も、程度の差こそあれ、同様の性質を有しているといえはしないでしょうか。負担すべき会費―租税は、国や地方自治体を運営するために国民あるいは住民が負担する「会費」ともいえるでしょう―を違法に免れる者がいれば、直接あるいは間接に、他の国民や住民に損害が及ぶのです。
また、1人の脱税者を見逃すことは、他の国民や住民のコンプライアンス意識を下げるおそれもあり、社会秩序を瓦解させることにもなりかねません。

租税に対するリテラシー教育においても、「教育を受けなくても人様に迷惑をかけることはない」という理は存在しないのですから、教育の各ステージで租税の重要性を学ぶ機会をもっと多く設けることが望ましいと考えます。

著者: 酒井克彦

中央大学商学部教授 兼 法科大学院教授/法学博士

中央大学商学部教授。法学博士。現在、税務会計論・租税法などを担当。一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。単著に『スタートアップ租税法〔第3版〕』、『クローズアップ保険税務』他5冊のアップシリーズ、『所得税法の論点研究』(財経詳報社)、『裁判例からみる所得税法』、『裁判例からみる法人税法〔2訂版〕』(大蔵財務協会)、『レクチャー租税法解釈入門』(弘文堂)、『プログレッシブ税務会計論Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』(中央経済社)、『アクセス税務通達の読み方』(第一法規)、『キャッチアップ 仮想通貨の最新税務』、『キャッチアップ改正相続法の税務』(ぎょうせい)など。その他、論文多数。
■一般社団法人アコード租税総合研究所
http://accordtax.net/
■一般社団法人ファルクラム(FULCRUM)
http://fulcrumtax.net/

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