ローマに、コンドッティ通り(Via dei Condotti)という有名な通りがあります。コンドッティ通りをはじめとするスペイン広場界隈は、世界的に有名なブランドが連なり、高級感が漂います。今回は、「コンドッティ」の上に立ち、租税法を眺めてみましょう。

「コンドッティ」とローマ

コンドッティ通りは、ローマで最も地価の高いところとしても有名です。

また、領土を持たないマルタ騎士団の本部であるマルタ宮殿もコンドッティ通りにあり(コンドッティ通り68)、治外法権が認められているなど、特徴豊かな通りといえましょう。

いつも多くの観光客でにぎわいを見せているコンドッティ通りですが、この名前は、水道管(コンドッティ)に由来します。

すなわち、この通りの下には、水道管が埋め込まれているのです。

このコンドッティの歴史は古く、古代ローマ時代には、既に、コンドッティが11本も引かれていました。

その歴史ある水道管のうちの1本は現在も使われており、トレビの泉に繋がっているそうです。この水道管は、なんと2000年前から使われているというのです。

「導管」と所得税法

ローマのコンドッティ通りは、水道管が敷設されていながらも高級店が集まり、地価も高い場所ですが、我が国の所得税法の世界には、「導管」が敷設されると地価が下がることを念頭においた規定が存在します。

導管(コンデュイ)は、租税法の世界でも重要な概念といえるでしょう。

所得税法施行令79条《資産の譲渡とみなされる行為》は、一見、不動産の貸付けによる所得として不動産所得を構成すると思われる行為について、一定の要件の下で、みなし譲渡課税を規定しています。

すなわち、同条は、「建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権…又は地役権…の設置」などをした場合に、対価として支払を受ける金額がその土地の価額の十分の五に相当する金額を超える場合には、みなし譲渡課税をすることを規定します。

さて、ここで、地役権の設定とは、「特別高圧架空電線の架設、特別高圧地中電線若しくはガス事業法…に規定するガス事業者が供給する高圧のガスを通ずる導管の敷設、飛行場の設置、懸垂式鉄道若しくは跨座式鉄道の敷設又は砂防法…に規定する砂防設備である導流堤…の設置〔下線筆者〕」などを指しています。

これは、水道管の設置などにより、貸付不動産の価値が事実上下がり、実質的に資産の譲渡をしたと同様のケースがあることを念頭に置いた規定といってもよいでしょう。

「導管」と租税回避

ところで、租税法では「導管理論」と呼ばれるパススルー的な課税上の取扱いが存在しますが、かかる取扱いは、組合税制を活用した租税回避商品において活用されることもしばしばです。

富裕層が、導管理論を駆使した租税回避商品に投資し、租税負担の軽減を企図する例は枚挙に暇がありません。

ローマのコンドッティ通りにしても、租税回避商品の導管理論にしても、やはり富裕層は「導管」に集まるのでしょうか。

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