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令和元年度確定申告 源泉徴収票などの添付が不要に

令和元年度の確定申告が2月17日からスタートした。3月16日までの約1カ月間、税業界は年一番の忙しさになるが、今年の確定申告は、平成から令和への改元にともない「令和元年分以降用」として確定申告書類が新しくなるなど、いくつか変更点があるので注意したい。

今年の所得税の確定申告から、給与や公的年金などの支払者から交付される「源泉徴収票」などの添付及び書類の5年間保存が不要となっている。これは、支払者から別途、源泉徴収票などを税務署へ提出していることから、再提出を要しないもの。この改正は平成31年4月1日以降から適用されている。

添付及び5年間保存不要の書類は以下の通り。

①給与所得、退職所得及び公的年金等の源泉徴収票

②オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書

③配当等とみなす金額に関する支払通知書

④上場株式配当等の支払通知書

⑤特定口座年間取引報告書

⑥未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書

⑦特定割引債の償還金の支払通知書

とはいうものの、紙による提出でもe-Taxで申告しても、税務署が入力内容を確認するため、必要があるときは、書類の提示または提出が求められる可能性もあるので、原則として法定申告期限から5年間は対応できるようにしておくことが必要だ。

住宅ローン控除が13年間に

住宅ローンの残高に応じて所得税・住民税から控除が受けられる住宅ローン控除の特例。従来は10年間だった控除期間が、消費税10%が適用される住宅を取得し、令和元年10月1日から令和2年12月31日の間に居住の用に供した人は、13年間に3年間延長された。

11年から13年目の控除額は、

(イ)「建物購入価格(4千万円が限度)×2%÷3

(ロ)「住宅ローン年末残高(4千万円が限度)×1%

のいずれか少ない金額。所得税額から控除しきれない額は個人住民税から控除することになる。こちらは13万6500円が限度だ。

相続した空家なら活用したい3千万円特例

親が生前に住んでいた実家を相続したが、今は空き家になっているという話をよく聞く。日本の空家問題を解決するため、設けられた税制が「空き家の譲渡所得の3千万円特別控除の特例」だ。

同特例は、空家となった被相続人の住まいを相続した相続人が、耐震リフォームまたは取壊しをした後にその家屋または敷地を譲渡した場合には、その譲渡にかかる譲渡所得の金額から3千万円を特別控除するというもの。

居住用財産の保有期間を問わず適用でき、譲渡益が3千万円に満たない場合は、その金額まで控除できる。もし3千万円を超える場合には、超える金額に対して、短期譲渡所得又は長期譲渡所得などの税率を適用することになる。

なお、同特例は、前年、前々年に3千万円控除や居住用の買換え特例、居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けていないことが適用の前提条件になる。3千万円控除は3年に1度しか適用できない仕組みだ。ただし、10年超保有の居住用不動産に対する軽減税率は、重複して適用が可能。

兄弟姉妹で土地建物を相続し、これを売却した場合は、相続人1人当たりが3千万円の控除を受けることができる。たとえば、兄弟が2分の1ずつ持分で相続した場合は、それぞれ3千万円控除の特例が適用できるが、被相続人の居住用家屋と敷地の両方を取得することが条件。長男が土地、次男が建物を相続する場合は同特例を受けられない。

仮想通貨の評価方法が明確化

仮想通貨に係る税務上の取扱いも今回の確定申告から変更された。具体的には、取得価額の評価方法が明確化された。原則的には、納税者が届出により「総平均法」か「移動平均法」により算定した取得価格をもって評価した金額とされた。届出がない場合には、「総平均法」が用いるとされている。

また、例外的な取扱いとして、売却収入の5%相当額を取得価額として認める通達も新設された。

スマートフォンで確定申告が可能に

このほか、今回の確定申告で変わったことは、スマートフォンからの確定申告が可能になった。現時点では、個人事業主は利用できないが、2カ所以上から給与所得を得ている人や、年金収入や副業などの雑所得がある納税者は、スマートフォン専用画面から確定申告ができる。

また控除に関しては、すべての所得控除がスマートフォンで対応可能。一般的な会社勤めの納税者にとっては、比較的、手間をかけずに申告できるので利用してみる価値がある。

消費税は軽減税率に注意

令和元年10月1日より、消費税率の引上げにあわせて軽減税率制度が実施されたが、消費税の課税事業者においては、通常の帳簿付けに加えて税率ごとの区分経理が求められるようになった。

課税事業者が仕入れに係る消費税を、売上にともなう消費税から差し引く場合、その売上が標準税率10%なのか、軽減税率8%なのかを区分経理する必要がある。しかし、取引の一つひとつに税率を書くのは手間がかかるため、今のところは軽減税率対象品目には摘要欄に「※」などの記号を併記し、帳簿の欄外に「※は軽減税率対象品目」などと記載することで、記帳を簡略化することが認められている。

消費税の課税事業者のうち、本則課税での申告ならば、その仕入れなどが標準税率10%なのか、軽減税率8%なのかを区分経理が条件となる。

簡易課税を選択している場合は、売上で預かった消費税を基に消費税を計算されるので、仕入れなどについての区分経理は求められていない。とはいうものの、本則課税と簡易課税のどちらが有利かを判断するためには区分経理をしておくことが必要だ。

改正前の消費税では、請求書等に

①発行者の氏名又は名称

②取引年月日

③取引内容

④取引金額

を記入しておけばよかった。

一方で軽減税率制度実施後は、取引が標準税率10%なのか、軽減税率8%なのかを明確にするため、令和元年10月1日から令和5年(2023年)9月30日までの期間については、請求書等保存方式が導入されている。

区分記載請求書等は、前述の①~④に加えて軽減税率の取引については「軽減税率対象品目である旨」、さらに「税率区分ごとの合計請求額」の2項目を追加記載しないといけない。

税理士などの専門家でもなければ、かなりハードルの高い処理が求められる。

この区分記載請求書等によって、売上の内容が軽減税率対象品目なのかどうかを税務署では知ることができるため、消費税を預かる義務のない免税事業者であっても区分記載請求書等の発行を求められる場合があるので注意しておく必要がある。

なお、軽減税率対象品目であるのにその旨の記載がない場合や、税率ごとの合計請求額がない場合など、記載事項につき不備がある場合には受け取った側で追記することが認められている。

基礎控除の引上げ

今年、令和元年度の確定申告では大きな改正はない所得税だが、来年の令和2年分からは、基礎控除が引き上げられるので覚えておきたい。今年までの基礎控除額は一律38万円だが、令和2年分からは48万円に引き上げられる。一方で、高所得者に対しては徐々に控除額が減っていき、所得金額が2500万円を超えるとゼロになる方式に変わる。

65万円の青色申告特別控除の引下げ

基礎控除は10万円引上げとなっているが、その代わりに給与所得者は給与所得控除、年金所得者については公的年金等控除が10万円引下げられる。

事業所得者についても青色申告特別控除のうち最大65万円の控除については他と同じく10万円引下げられ、最大55万円となる。ただし、これまでの最大65万円の青色申告特別控除の要件である、

①事業所得または不動産所得(事業的規模)であること

②これらにつき複式簿記等により記帳していること

③帳簿に基づいた貸借対照表、損益計算書を確定申告書に添付し、控除を受ける金額を記載して、法定申告期限内(3月15日まで)に提出すること

 

に加えて、次のどちらかをクリアすれば、従来通りの65万円控除の対象になる。

・その年分の事業にかかる仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること

・その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと

つまり、最大65万円の青色申告特別控除を継続するためには、電子帳簿保存かe-Taxのどちらかを導入すればよいわけだ。

ただ、電子帳簿保存を導入するためには、電子帳簿保存法に対応する会計ソフトを用意し、電子帳簿保存の承認申請書を税務署に提出しなければならない。同制度の適用を受けるには、帳簿の備え付けを開始する3カ月前までに申請書を提出する必要があり、原則として途中から適用することはできないためハードルが高い。とはいうものの、令和2年分に限っては、同年9月29日までに申請書を提出して承認を受け、同年12月31日までの間に電子帳簿保存を行えば適用対象となるので覚えておきたい。

e-Taxでの申告については、マイナンバーカードを取得してe-Taxの開始届出書を提出するという従来の方法に加え、すでに昨年の確定申告から事前に税務署の窓口で本人確認を行いID・パスワードを発行してもらうことで、ID・パスワードだけでe-Taxによる申告が可能となっている。つまり、e-Taxでの申告の方がハードルが低く、最大65万円控除が使えるというわけだ。国税当局としても、e-Taxの普及を第一の目標に掲げていることから、現状のようにe-Taxを使いやすくしたものと思われる。来年の確定申告からではなく、最大65万円控除の適用をうけようと考えるなら、今年の確定申告から活用しておくことをお勧めする。

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著者: 宮口貴志

KaikeiZine編集長

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在は一般社団法人租税調査研究会の事務局長であり、会計事務所ウオッチャー、TAXジャーナリストとして活動。㈱ZEIKENメディアプラス代表取締役社長。
■税と経営の顧問団租税調査研究会
https://zeimusoudan.biz/
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