新型コロナウイルスの感染拡大を受け、会計業界に特化して人材総合支援をしている株式会社レックスアドバイザーズ(東京・千代田区,代表取締役岡村康男氏)がクライアント向けに実施した「新型コロナウイルス感染拡大に伴う中途採用への影響」についてのアンケート結果をまとめました。

株式会社レックスアドバイザーズ(以下REX)は2020414日~2020416日にかけ、新型コロナウイルスの感染拡大が中途採用におよぼす影響について、自社のクライアントに対して緊急のアンケートを実施しました。

調査結果概要

◆求職者の転職活動にどのような影響が出てくるのか読めない部分があるものの、現状を採用のチャンスと捉えている法人が全体の約6割。

◆7割の法人がWEB面接の導入済または導入を検討している。一方でWEB面接に慣れていないことや、WEB面接のみで内定の判断をすることへの懸念の声が上がっており、選考方法の変更やミスマッチを防ぐために自社をどのように発信していくのか工夫の余地がある。

◆6割以上の法人が今回の事態を受けて急遽テレワークの導入を決定しており、セキュリティや労務管理についての体制整備が急務であるといえる。

目次

・回答企業 について

・現在の中途採用市場について

・新型コロナウイルス感染拡大前と比較した中途採用の募集状況

・採用活動(応募者数・面接数・内定辞退数)への影響

 ・WEB面接について

・テレワークについて

回答企業 について

事業会社からの回答が31%、会計事務所、コンサルティングファーム。監査法人など会計系ファームからの回答が69%でした。事業会社については、経理・財務・経営企画等、管理部門に関わる採用についての結果です(図1)。

また、従業員規模については50名以下の法人が55.3%、51~100名の法人が1.1%、101名~500名の法人が12.2%、501名~1000名の法人が4.5%、1001名以上の法人が4.5%となっています(図2)。会計事務所やコンサルティングファームからの回答数も多いことから、50名以下の法人が約半数となっています。

 

図1:業種(REXアンケート調査結果)

 

 

図2:従業員数(REXアンケート調査結果)

 

 

現在の中途採用市場について

まず、現在の中途採用をどう捉えているのか、採用温度感の大枠について伺いました。現状を「チャンスと捉えている」、「どちらかというとチャンスと捉えている」との回答が59%と半数を超える結果となりました(図3)。その他、「変化なし」との回答が25%、「どちらかといえば危機と捉えている」、「危機であると捉えている」との回答は併せて17%でした(図3)。

チャンスであると捉えている背景としては「優秀な人材が転職市場に増えると思われる」「採用の競合が減少すると考えられる」などが挙げられています(図4)。「業績上昇により採用を強化する必要がある」との法人に関しても危機ではなくチャンスであると捉えていることから、このタイミングで優秀な人材を採用することに意欲的であることが窺えます。

リーマンショック時にも見られたように、即戦力人材や高年収帯の優秀な人材がチャンスを求めて転職市場に出てくる傾向があります。また、業種によっては採用人数を絞るところもあるため、これまでの売り手市場がやや緩まり採用をする側にとってはチャンスとなるかもしれません。

一方で危機であると捉えている法人に関しては「外出自粛等で採用活動ができない」「業績の停滞や低下が見込まれる」等を理由として挙げていました。現時点で「テレワークや時差出勤の体制がない」という意見もありました。テレワークについては後ほど、別の項目でも取り上げますが、今後、さらに働き方の整備も進むかもしれません。他にも「(採用)想定者が転職時期を再検討するのでは?」といった転職時期に関する懸念もありました。

採用活動への影響でもお伝えしますが、応募者の動きが見えづらい状況となっています。

 

図3:中途採用の捉え方(REXアンケート調査結果)

 

 

図4:その理由(REXアンケート調査結果)

 

 

新型コロナウイルス感染拡大前と比較した中途採用の募集状況

新型コロナウイルス感染拡大前と比較をした中途採用の状況については雇用形態別・職種別ともに、現時点では「変更なし」という回答が最も多くなっていますが、採用の縮小よりも 拡大を考えている法人が多い傾向が見られます(図5)。 現状をチャンスと捉えている法人が多いという結果の通り、採用意欲の高さが反映されています。 特に正社員の採用を拡大したいという回答は半数を超えています。非正社員の採用を縮小し、この機会に人手不足を解消して優秀な人材を確保したいという強い意欲が見られました。

職種別に関しては資格者や会計・税務スタッフの採用について半数以上が採用を拡大していきたいとの回答となっています(図6)。人手不足で採用が難しくなっている業界であるため、今後も継続して採用活動に力を入れていくとみられます。

 

図5:雇用形態別 募集状況(REXアンケート調査結果)

 

 

図6:職種別 募集状況(REXアンケート調査結果)

 

 

採用活動(応募者数・面接数・内定辞退数)への影響

新型コロナウイルスの感染拡大前から有効求人倍率は緩やかに低下をしていましたが現時点では応募者数などの動向はまだ読みづらい状況ですアンケート結果でも4割以上の法人が今後の影響については「まだわからない」との回答となっています(図7)。現時点で現れている応募者数や面接数の減少は、外出自粛が影響が大きいと考えられます。

例年、繁忙期や資格試験、決算のスケジュールに合わせた転職活動が多い業界ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、イレギュラーな対応が続いています。有価証券報告書提出期限の延期が延長されたこともあり、外出自粛の影響と合わせて転職活動の動きに変化が現れるかもしれません。

また、次の項目で解説をする通りWEB面接の活用が進んでいます。求職者目線では自宅で手軽に選考を受けることが可能となるため、WEB面接の活用により母集団は広がる可能性がありますが、内定辞退数(内定承諾率)への影響も気になるところです。

 

 

図7:応募者の状況(REXアンケート調査結果)

 

 

WEB面接について

今回、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、WEB面接が注目を浴びています。以前よりWEB面接を行っている法人はありましたが、そのほとんどが遠方の応募者に対するものでした。現在のWEB面接の活用状況については、導入検討中もあわせると、70%以上の法人が導入に前向きです。 一方、懸念点は「WEB面接に慣れていない」ことや「直接会わずに採用することへの不安」「入社後のギャップが大きいのではないか」に集中しており、すべてをWEB面接にはせず、採用活動の一部に活用するなど、工夫の途上にあるようです。 

採用側にとっては会わずに採用を決定する/求職者にとっては職場に足を運ぶことなく就職先を決定することになります。以前より声が上がっていた面接の均一化や適性検査の導入など、WEB面接でどのように相手を見極めるのか?といった面接(選考)の質の向上や、内定後のフォローについても今後の採用活動の焦点となるでしょう。また、WEBでの接点のみでどのように自社の魅力を伝えていくのか?といった点に関しても工夫の余地があるといえます。

 

図8:WEB面接の活用(REXアンケート調査結果)

 

 

図9:WEB面接への不安や懸念(REXアンケート調査結果)

 

 

テレワークについて

政府や地方自治体から在宅勤務の推奨が行われ、テレワークについても注目度が上がっています。求職者からも 「在宅勤務が可能か」という要望が多くなっています。 アンケート結果でも、新型コロナウイルスの拡大を受けてテレワークを実施した、あるいは実施の決定をした企業が65%にのぼり、急遽導入を決定したところが多いことがわかります(図10)。 

テレワークの懸念に関しては、システムや機器のハード面の心配もあるものの、セキュリティや労務、業務の整備など、ソフト面の対応が求められています(図11)。

ハード面に関しては、近日中小企業・小規模事業者を対象としてIT導入補助金の 「特別枠」にの詳細発表があるようです(※)。業務でのテクノロジー(IT、AI-OCR、RPA等)の活用がさらに進むことが想定され、ソフト面に関する体制整備はもちろん、従業員ひとりひとりの意識改革が重要となっています。

また、会計事務所業界においてはテレワークと切っても切り離せないのが税理士法の2か所事務所についてです。こちらに関しても、今回の事態が一石を投じる結果となっており、新型コロナウイルス終息後も、テレワークの導入が進むことが予想されます。 

経済産業省・中小企業庁・中小機構 リーフレット(4月16日):https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/it-hojo.pdf

 

図10:テレワークの活用状況(REXアンケート調査結果)

 

 

図11:テレワークの不安・懸念(REXアンケート調査結果)

 

 

今回の記事では、新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言に伴う会計業界の採用市場について、アンケート結果をもとに現状を分析し、考察しました。

4月16日、緊急事態宣言を全国へ拡大する旨の表明もありました。予断ならない状況の継続が想定されますので、引き続き採用状況の変化についても追ってまいります。

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調査概要

■調査目的:新型コロナウイルスが会計業界や企業管理部門の中途採用に与える影響を把握すること

■調査期間:2020年4月14日(火)〜2020年4月16日(木)

■調査方法:メールでのアンケート調査

■調査対象:株式会社レックスアドバイザーズクライアント

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