ドラッグストアの「決め球」にみる戦略
一つ目は「粗利を高くする」ということが重要かと考えています。「そう簡単にできるか?」との声が聞こえそうですが、むしろ、難しく考えないことがコツです。「粗利を高くする」ということは要するに付加価値を高くする、ということです。
ビジネスの業種や形態にもよりますが、まず「モノ売り」だけではドンドン付加価値が下がります。なぜならこのインターネットの時代では、プラットフォームを支配していない限り、世界がグローバル化されて経済がつながることを前提にするとすれば、安い人件費を抱える国で作ったものがドンドン安いものを作る、つまり、モノ自体はデフレ化が避けられない、というのが大方の見立てです。
そうすると、「商品やサービスの組み合わせ」で付加価値を上げる、つまりクロスファンクショナルにサービスを考える、ということが大事になります。それによりオリジナリティー(強みと考えていただいていいと思います)が発揮され、値段を下げず、むしろ上げることができる、ということです。
身近な例ですとドラッグストアでしょうか。高齢化社会を背景に健康相談ができる、つまり、いわゆる「コンサルティング営業」ができることが強みです。さらに食品、日用品等を安く売ることで「見せ球」として使い(お客さんをたくさん引き寄せるために)、クスリや化粧品を「決め球」として使う、ということです。
結果、近隣のスーパーマーケットから粗利を上げながらシェアを奪うことに成功しています。最近では、コンビニよりもドラッグストアのほうが「生活インフラ」としての機能が高いのでは?と思うときさえあります。
「選択と集中」と「多角化」のどちらを取るか?
二つ目は「収益のマルチチャネル化」を進めるのがよいと思います。財布をたくさん持つということで、要するに「多角化」するということです。これには、異論が出ることは覚悟の上です。最近の経営に関する本や大企業の戦略は、どちらかといえば「選択と集中」、つまり「多角化」の逆に向かっているといわれているからです。
しかし、中小企業が一つの事業だけで成長できる場合は、それはそれでいいのですが、大半の中小企業は中小企業のままでしょうから、それでも生き残って多少なりとも成長するためには「多角化」がおすすめですよという意味でお読みください。
「選択と集中」と「多角化」という話になりますと、話は長くなるのですが、少しだけ解説させていただきます。日本の大企業の経営論や手法のほとんどがアメリカから輸入されるものですから、まずはこの2国間の考えの違いが反映されていると考えても整理しやすいかと思います。もともと日本は多角化が好きな国、アメリカは選択と集中が好きな国、ということで下記の表を見てください。

日本では、企業は人々の共同体でありそれを存続させることが経営者の責任である、と考えられていますが、アメリカでは企業は投資家が利益を得るための用具に過ぎず、その価値がなくなれば市場から退場したほうがよいと考えられています。前者は「企業制度説」、後者は「企業用具説」と呼ばれたりします。
企業制度説に従っている日本の経営者は、企業の存続を重視します。経営の安定化を重視した結果「多角化」の戦略を取る傾向にあります。一方アメリカでは、存在意義を失いかけた企業を存続させるのは無駄な努力であるとして、企業の成長のために「選択と集中」の戦略を取ります。
写真フィルムの最大手だったアメリカのコダック社を例に挙げます。2012年に日本でいう会社更生法にあたる法律の適用を申請し、実質的に破綻しました。デジタル技術の進歩で、写真フィルムの需要が激減する中で、アメリカの投資化が事業の多角化に否定的であった結果と言われていますが、同じく写真フィルムの最大手であった日本の富士フイルムはどうか。複写機・電子部品・デジタルカメラなどもともと事業の多角化を図っており(最近では化粧品分野にも進出していますね)、現在も日本を代表する企業の一つとして2兆円を超える収益を上げています。
さて、中小企業でどうやって多角化するか?ということに話を絞りますね。一言でいえば、「隣地を攻める」ということに尽きるかと思います。



