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【シリーズ】独立若手公認会計士の日常 2.監査法人辞めた後の選択肢はなんだ~③自己分析した状況を踏まえて選択肢をよく考えてみる~

主人公である26歳若手公認会計士が監査法人を辞めた勢いで独立し、せっかく安定したのに再就職して自分の居場所をだんだんと見つけていくフィクションライフスタイル。
この物語に登場する人物や団体、事象はフィクションです。

前章『2.監査法人辞めた後の選択肢はなんだ~②公認会計士としてキャリアを積んできた俺の強みはなんだ~』

(関連記事)

・第1章 俺、監査法人辞めるわ

・第2章① 監査法人辞めた後の選択肢はなんだ~①そもそも俺は何がしたい~

・第2章② 監査法人辞めた後の選択肢はなんだ~②公認会計士としてキャリアを積んできた俺の強みはなんだ~

公認会計士として持っている強みを、最難関国家資格の1つを取得できたビジネス素養と、監査という特殊な業務環境で得た経験から認識した。これによって、これからのキャリアについて選択肢を検討するために役立つ、自分の好き嫌いなどの判断軸と、勝負するための強みという要素が揃った。これらを元にキャリアへの“適性”を考える。

本章『2.監査法人辞めた後の選択肢はなんだ~③自己分析した状況を踏まえて選択肢をよく考えてみる~』

若手公認会計士である俺が進めるキャリアの選択肢への“適性”をイメージしてみる。

①汎用性の高いスキルである法人税、所得税を中心とした会計事務所

いわゆる一般的な税理士業務だ。このキャリアのうまみは、税務というニーズが高く、安定している点だろう。だから収益を築きやすい。そして業務ニーズが高いだけあって、感謝されるし頼られる。さらに会計事務所に勤めた後に、独立もしやすい。独立して組織を作って収益を拡大することも容易だ。

だが個人的には、時給単価が公認会計士業務と比べると高くないことがこのキャリアのデメリットだ。ざっくり2割くらいは違うだろうか。また、ベタな税務は究極の事務作業に思えてつまらないということも、俺が選ぶキャリアとして検討すると魅力に欠ける。税務はあくまで法律に定まった行政手続。あまりアグレッシブな税務は倫理どころか法律違反だろう。

このキャリアについては、自分の適性としてできなくはないが、したいと思えないといったところだ。次を考えよう。

②専門性の高いスキルが身につく、相続税や国際移転価格税制などを経験しやすい税理士法人

いわゆる専門性が高いとされる税理士業務だ。医者で言うなれば街のお医者さんではなく、スペシャルオペチームといったところか。少なくとも普通の公認会計士や税理士では、いきなりこの領域の業務はできない。それなりに学んで、実践も指導を受けながらだろう。THE専門家だ。領域を聞くだけで専門家の矜持を感じる。

メリットは専門領域の中の専門領域であり、専門にしていなければ対応できない業務なだけあって、ニーズがあり、税務でも高単価が狙えるということだ。マニアック領域を極める、専門家としてのフロンティアスピリットを求めるなら、よいキャリアだろう。

一方デメリットは、この専門性が高いとされる領域で実務家として力をつけなければならず、しかもその専門性は他のキャリアへ転用しづらいということだ。このマニアックとされる領域を一生武器にしていく必要がある。

しかしマニアック領域を突き詰めたいとまでの胆力は、俺にはない。次だ。

③一般事業会社の経理

これも公認会計士へのニーズはとても高い。今までチェックしていた側からチェックされる側にまわるということだ。キャリアのうまみとしては、大企業の一員になるため安定して働ける。そして決算など特別な時期を除いて、程々のしんどさで済むだろう。ワークライフバランスを手に入れやすい。

デメリットは、給料が安い点だろうか。基本的に公認会計士手当のような給与条件を提示してくれる会社はほとんどない。監査法人の時と比べて時給が3~4割下がったという人が多いような状況だ。しかも出世がしづらい。経理部長などは狙いやすいとされるが、役員にはなりづらい。経理という事務の専門家としてのキャリアになるが、役員としての素養は事務力ではなく経営判断力が求められる。日本のビジネス環境では育まれにくく、キャリアの天井が発生するのだ。

また、このキャリアにはリスクもある。会社内のバックオフィス業務の何でも屋にされるのだ。労務、法務など様々な実務が求められる。もちろん必要であればやらねばならないだろうし、実際ある程度できてしまうのだが、やりたくもない作業の仕事が延々と年がら年中降り注いでくる。役員への道もなくキャリアの天井頭打ちが見えている中、忙しいばかりが先行するのだ。ベンチャーなどでCFOを目指して役員としての特別なリターンを期待できるならその忙しさは報われるが、単に事務処理の能力が高いからと汚れ仕事のように丸投げされる役になっていると度々耳にしている。イイ人扱いではあるし、存在意義はあるのかもしれないが、積極的にこのリスクは取りたくない。ワークライフバランスを求めているわけでもない。このキャリアは志向しない。

④ベンチャーCFO(候補)

このキャリアのメリットは、ダイナミックなビジネス成長を幹部メンバーとして一緒に最前線で戦っていけることだ。給料も悪くはない。上場を果たした際などはストックオプションなど特別な役員報酬も期待できる。

デメリットはとにかく忙しいことだ。ベンチャーは各所のリソースが不足しているし、組織を作りながら早く成長していかなければならないため、当然さまざまな方面でスキルの高い公認会計士はスーパー何でも屋としてその役割を求められる。

そしてその何でも屋としての役割はバックオフィスに留まらない。あくまで役員の一人として求められるため、裏方だけでなくフロントの究極の援護射撃や場合によっては売上も求められる。究極の援護射撃とは、会社ではなく個人で築いた人脈の活用によるサポートだ。こういったことに面白みを感じられる人間はとても向いているだろう。俺もその一人だ。ただ世の中を勝ち上がっていく幹部メンバーの一人として、今の自分で力が足りるか自信がないところがある。

⑤もう一度監査法人

ない。これはない。「監査法人」自体をもう卒業すべきと思って退職したのだ。出身母体ではない他の監査法人だから行きたい可能性があるなんてことはない。

⑥中小企業を中心とした経営コンサルティング会社

公認会計士の半数くらいは興味があるのではないだろうか。実際、転職した同期もよく見かける。メリットでいえば、給料が特別高いわけではないがそれなりに期待できることと、なにより業務の魅力だ。たくさんの会社のマネジメントに関わることができる。監査法人ではこれまでバックオフィス業務としての関わり方であり、過去に起きたビジネスの記録に関わっていたが、経営コンサルティングでは経営の現在や未来の話について社長の目線で判断に貢献できるというクリエイティブさがあるのだ。そういった経営マネジメントのノウハウを習得できるともいえる。

デメリットは忙しい点だ。経営コンサルティングは作業ではないため、案件によってはとても忙しい。また、多少の基礎素養は公認会計士試験や監査を通じて見聞きしてきたものがあるとしても、実務に活かせる応用は何も知らない。単に本を読んで学べば足りる世界でもない。あるべき論だけでなく、社長という特殊な生き物と向き合うコミュニケーションスキルなども必要となる。そしてコンサルタントは、コンサルティング会社に所属していようが自分自身が売り物であるため属人的であり、営業力やブランディングも必要になる。一人前に通用する力を身に着けるには相応の苦労が伴う。

だが、公認会計士というキャリアをフル発揮できる舞台で戦うことができ、会社勤めという環境で成長のステップも期待できるため、人生における中間キャリアとしては魅力を感じる。

⑦M&Aのコンサルティング会社

よくよく調べてみるとM&Aの仕事は2つに分かれるようだ。1つは企業価値計算など専門的知識を技術職として担う役割。もう1つは営業職であり、営業職と言いながらもM&Aの在り方を提案して完了する、ゴールまで導くハイレベルな企画&交渉役だ。どちらの職も報酬としては十分に高いため条件面はどちらも良い。

自分が2つのうちどちらを希望するかというと、技術職としての役割は興味があまり持てない。企画&交渉役としての営業職は難易度が高そうではあるが自分の志向と合致しているように思え、しかも経験として得られるものも大きいと感じる。

とは言え、M&Aに絞っていきたいとまではそもそも感じられていないので、今回の選択肢としてはない。

⑧会計ソフトなどの専門性が活かせるITベンチャーの専門職

近頃フィンテック(financial technologyからの略語)として会計系ITベンチャーの活躍も目覚ましく公認会計士の会計としての専門的知識のニーズも高まっている。ベンチャーの雰囲気を経験しながら専門知識を着実に活かせ、かつ、新しい世の中にチャレンジできるところに興味がある。

ただ雇用される従業員としてジョインする場合、そんなに条件がよいものではない。総合職として考えたら悪くない給与水準だが、総合職に専門家手当が少し乗ったくらいのものだ。それにしてはかなり忙しいと噂を聞く。

自分たちの会社の幹部役員としてのチャレンジなら、すなわち創業リターンも大きく期待できるならチャレンジのしがいも感じられるが、雇用される従業員としてでは正直あまり割がよいと感じない。

⑨大企業の組織再編・経営企画や戦略部署

雇用状況の安定を考えれば、給与条件は悪くないだろう。しかも大企業ならではのダイナミックな動きをモロに体感できる役割だ。現場感は得づらいかもしれないが、専門的でダイナミックな経験を得られる。

ゆくゆくはCFOになりたいなどのビジョンがあれば、経営コンサルティング会社でのチャレンジに並んで有用なキャリアに感じる。コンサルティング会社と異なるメリットは、実際に会社として意思決定により近い立場で専門性の高い企画職を経験できるということだ。

逆にコンサルティング会社と異なるデメリットは、触れられる業界や規模が限られるということだ。また、社長へのアドバイザーではなく部下として企画するため、エグゼクティブとしてのビジネスコミュニケーションを学ぶことはコンサルティング会社で社長を相手に商売をするより遠い。

⑩その他

独立することも1つの選択肢だ。年がら年中なにかしらニーズはあるなと感じている。1~3月の確定申告の時期は税理士業務があるし、その後の4月~6月はどこも監査業務で人手不足のため、スタッフとして業務委託を受けやすい。また、それなりのツテをいくつか作るだけで非常勤としてさまざまな仕事に勤務しやすいと感じている。一見不安定だが、生活していく分には十分足りそうだ。すなわち「その他」はカッコよく言えばフリーランス公認会計士、実態で言えばアルバイト公認会計士だ。アルバイトとはいえ安くても時給は3千円程度、高いと時給で2万円ほどだ。

仕事以外の好きなことに時間を融通したり、人脈作りなど基盤を作ったりしたいならアリな選択肢だろう。キャリアアップできるような経験は得られないだろうが、自由に活動できる魅力は大きい。

 


次章『3.勢いでなんか独立してみた』は近日公開!

【youtuberとしても活動中:お金のカラクリ侍

 


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著者: 松本ゆうや

公認会計士

立命館大学卒。34歳。大手監査法人を修了考査合格直後に転職、会計系コンサルティングファームへ。財務調査、IPO、事業再生、不正調査対応といった会計業務を経験しつつ、新規事業開発やマーケティング支援まで幅広く経験し独立。独立してからコンサルティング業務を中心にしつつ、自ら飲食店や広告代理店も経営し、ベンチャー役員参画、多様なコンテンツ開発を自社で行うなど多角的に活動。フリーランスの公認会計士の立場からお金のカラクリ侍としてYouTubeも開設している。
◆youtube:お金のカラクリ侍
https://www.youtube.com/channel/UCtzX17fZ0z-iwG4GXsfS84g/videos?view_as=subscriber

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