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IPOにおけるJ-SOX導入プロジェクト【第2回】3点セットの完成までに越えなければならない「二つの壁」

この連載では、IPOを目指すJ-SOX導入プロジェクトを担当される方々が、具体的にどのようなアクションをとればよいかを説明します。
IPOを目指す際に、最も苦労する作業といわれるJ-SOX導入。「J-SOX導入プロジェクト」を担当される実務家の方が「何をすれば良いのか」、「どのように進めれば良いのか」といった具体的なイメージを描けるよう、実際のゴールとなる「成果物」に焦点を当てて話を進めたいと思います。

3点セット完成までの「二つの壁」

前回はJ-SOX導入において、まず「3点セットを作ること」(文書化)に着手することをお話しさせて頂きました。今回は「3点セット」(「業務記述書」、「フローチャート」、「リスク・コントロール・マトリックス」)完成までの二つの壁、「内の壁」と「外の壁」についてお話ししたいと思います。

J-SOXプロジェクトの担当者の方は、監査法人のコメントに対応しながら以下のサイクルを回すこととなります。

社内に存在する統制(業務フロー)を調べる→文書化する(1st)→統制が不十分と分かる→統制を新設、変更し統制レベルを上げる→再度文書化する(2nd)・・・

統制レベルが不十分な箇所については、J-SOX担当者、他社内メンバーが気づくケースもあれば、監査法人からのコメントで気づくケースもあります。いずれにしてもサイクルをひたすら回し、監査法人からOKをもらうことができたら3点セットは完成です。

ここで監査法人からOK をもらうまでにJ-SOX担当者が越えなければならない二つの壁についてお話します。

一つ目の壁:「内の壁」

一つ目の壁は社内メンバーへ業務フローを変更してもらわなければならないという「内の壁」です。J-SOX導入においては、従来の社内業務フローで監査法人からOKがもらえることはまずありません。結果、社内の業務フローの変更が必要となるため、今までと違うやり方を社内のメンバーにお願いしなければなりません。当該業務に関与していなかったメンバー(J-SOX担当者)が業務フローの変更を依頼してくるため、現場には戸惑いが生じます。時にはJ-SOX対応を実施していることさえ知らないメンバーとの間でJ-SOX対応を理由として業務フローの変更を求めていくことは、高いコミュニケーション能力が求められます。

二つ目の壁:「外の壁」

二つ目の壁は監査法人からのOKをもらうという「外の壁」です。監査法人から「3点セット」に対してOKをもらうまでのプロセスには、「3点セット」を作成するだけでなく、なぜそのような記載となっているのか、なぜリスクに対して十分な統制が整備されていると考えたのか等、背景、根拠を追加的に説明しなければなりません。

ここで、多々発生する事象が「説明の失敗」です。「説明の失敗」には様々なケースがありますが、監査法人が懸念するリスクに対して、社内に統制があるにもかかわらずそれを説明していない、もしくは誤った説明を行った結果、監査人から是正を求められてしまう状態です。「説明の失敗」を引き起こす多くの要因は、単純に社内統制を把握していない、誤認識しているということではなく、①監査法人が何を懸念しているのか分からない、②何を説明すれば安心してもらえるのか分からない、から生じていることが多い印象です。

監査法人は社内メンバーではないので、社内業務の詳細な状況把握という観点では、社内メンバーのレベルよりも劣後します。結果、実際には監査法人が懸念するリスクを低減させる統制が社内にあるにもかかわらず、「説明の失敗」により追加的に「新規の統制を整備する」という事象が生じます。「3点セット」について監査法人から何とかOKをもらったが、多くの新規統制を導入したため、業務の効率が著しく悪化してしまったとなっては、中長期にわたって会社の収益力にも大きなダメージを与えてしまいます。

まとめ

J-SOXの担当者となったときに注意しなければならいことがあります。

一つ目は業務フローの変更をお願いしなければならない社内メンバーへの配慮です。メンバーへの配慮が欠如しますと社内の雰囲気が険悪になることや、時には激しい衝突を引き起こしてしまうこともあります。J-SOX担当者は限られた時間の中で多くの業務を完成させなければならない状況にありますが、社内メンバーの協力なくしてJ-SOX導入はできません。J-SOX担当者が直面している状況も社内メンバーと率直に共有しながらお互いのベクトルを揃えてプロジェクトを進めることが重要です。

二つ目は監査法人の問題認識に対して、安易に新規統制を導入するという対応を行わないことです。監査法人の問題認識を正しく理解し、「説明の失敗」が生じていないか十分に確認することが重要です。「監査法人の懸念点を解消する統制がすでにあるかもしれない」という視点を常に持ちJ-SOX導入プロジェクトを進めて頂けたらと思います。

監査法人の懸念点が解消される社内に現存する統制を見つけ出し、適切な説明を行うことで、安易に新規の統制を構築するのではなく、業務効率の悪化を回避しながら、監査法人からOKをもらえる方法を見出すことがJ-SOX担当者の腕の見せ所です。


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著者: 坂林 弘文

公認会計士、税理士 日本公認会計士協会東京会・税務第一委員会・元副委員長

慶應義塾大学経済学部卒業。金融機関、外資系コンサルティングファーム、新日本有限責任監査法人金融部(公的機関出向経験あり)を経て坂林公認会計士事務所を設立。上場会社、上場準備会社等への内部統制構築支援業務(J-SOX支援業務)を実施。

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