平成27年の相続税増税によって、相続対策のご相談が急増しています。相続対策というと相続税の対策ももちろんですが、相続財産を巡って相続人が争う「争族」対策も重要となります。
「争族」対策としては、遺言書が効果的です。遺言書が存在しないと相続人がさまざまな主張を行って、遺産分割がこじれてしまうこともあります。「争族」を防ぐためには、生前に遺言書を作成することをお勧めします。遺産分割において法的効力があり、被相続人の意思を示すことになるからです。ただ、遺言がむしろ相続人間の争いのもとになることも少なくないため、失敗を避けるためのポイントを抑えておく必要があります。
遺言書は、亡くなる前に残された家族に対して、どのように相続財産を分配するべきか、何故そのような分配を望むかを伝えるものです。遺言書を作成した場合、原則として遺言通りに相続財産を相続することになります。
遺言書のポイント①:「争族」を防止する
遺言書を作成すると、原則として相続人間で相続財産をどのように分配するかを話し合う「遺産分割協議」を行う必要がなくなります。遺言書で明確に相続財産の分配方法が示されているからです。
「争族」になるのは、遺産分割協議が些細なことからこじれてしまい、話し合いが長期化するうちに過去の経緯等から紛争が拡大するというケースも多いです。遺言書があることでスムーズに相続手続が完了することで「争族」を防止することができます。
ただ、遺言書作成をお勧めすると、相続財産は少額だから相続財産を巡って「争族」になる心配はないと言う方もいますが、金額の大小とは関係なく「争族」になり得ます。裁判所の統計によれば、遺産分割調停・審判事件のうち、相続財産1000万円以下のものが30%、相続財産5000万円以下のものが75%を占めるというデータもあります。遺言書がないために「争族」が生じるのは富裕層だけの問題ではないわけです。
遺言書のポイント②:相続人に対して想いを伝える
遺言書を作成することは、法定相続分と異なる相続をさせることであり、ある意味では相続人を不公平に取り扱うことになります。そこで、遺言書においては、なぜ法定相続分と異なる相続を望むのかという想いを相続人に伝えることがポイントとなります。
たとえば、長年同居して面倒を看てきた子どもに感謝の念を示すため、自宅の全部を相続させる等です。
「争族」が生じるのは、被相続人が死亡しているため、相続人がそれぞれの立場から被相続人の想いを推測して行動するからです。遺言書で相続人に対して想いを伝えることが重要です。