新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの業種が売上減少などの苦境に立たされています。企業の資金繰りを支援するための制度として、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付が設けられています。これは、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少している事業者が低金利で融資を受けられる制度であり、3年間は無利子になる特例もあります。この制度の内容や申請手続きなどについて説明します。

■新型コロナウイルス感染症特別貸付とは

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、新型コロナウイルス感染症の影響により業況悪化をきたしている事業者を対象にした、低金利の融資制度です。これは、政府系の金融機関である日本政策金融公庫にて行われています。

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日本政策金融公庫には、国民生活事業と中小企業事業があります。国民生活事業は、個人や比較的小規模の事業者を対象にしており、中小企業事業では、それよりも規模の大きな中小企業の長期の事業資金を扱っています。国民生活事業の一般貸付の上限額は4800万円であり、平均の融資額は約700万円です。それに対して、中小企業事業の平均の融資額は約1億円です。

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、国民生活事業、中小企業事業どちらでも扱っています。ここでは、国民生活事業の制度を中心に説明します。中小企業事業については適宜補足いたします。新型コロナウイルス感染症特別貸付の制度概要は次のようになっております。

・対象者

新型コロナウイルス感染症の影響により、「最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方」です。

・融資限度額

8千万円

(中小企業事業では6億円)

以前、融資限度額は6千万円でしたが、2020年7月1日から限度額が引き上げられています。

・利率

0.46%(当初3年間)、1.36%(4年目以降)

(中小企業事業では0.21%(当初3年間)、1.11%(4年目以降))

通常の融資よりも低い利率が設定されています。そのため、既存の借入を新型コロナウイルス感染症特別貸付で借り換えるケースもあります。

・返済期間

設備資金:20年、運転資金:15年

中小企業事業でも同様です。

・据置期間

5年以内

中小企業事業でも同様です。

据置期間中は利子のみの支払いとなり、元本は据置期間が終わってからの返済となります。ただし、据置期間が長くなると、据置期間後の月々の返済額が大きくなるので注意が必要です。たとえば、返済期間15年、据置期間5年とすると、据置期間後の10年間で全ての元本を返済しなければなりません。

新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要は上記のとおりですが、一定の条件を満たすと当初3年間は利子補給がなされて、実質的に無利子となります。

■利子補給制度について

次のいずれかの要件に該当する場合、利子補給制度の対象となります。

ここで、小規模事業者とは、卸・小売業、サービス業は「常時使用する従業員が5名以下の企業」、それ以外の業種は「常時使用する従業員が 20 名以下の企業」とされています。利子補給制度が適用されると、融資後に日本政策金融公庫に支払った利息が後日返ってきます。利子補給が適用される期間は3年間となりますので、当初3年間は実質的に無利子で融資を受けることができます。

・利子補給制度の対象額

4千万円まで

(中小企業事業では2億円まで)

この対象額までは実質的に無利子となります。対象額を超える金額に対しては前述した利子がかかります。利子補給制度の具体的な手続きについては、執筆時点ではこれから公表される予定になっています。