会計・税務各領域のプロフェッショナルが集う東京共同会計事務所(東京・千代田区)フィナンシャル・ソリューション部 アドバイザリーグループ 公認会計士・不動産鑑定士の石渡朋徳氏に、プロフェッショナルファームならではのREIT業務の魅力や東京共同会計事務所の展望について伺いました。
(インタビュアー:レックスアドバイザーズ 村松)

―今までのご経歴について教えてください。

石渡以前はEY新日本有限責任監査法人にて、証券化の業務に携わっていました。当初は一般の事業会社の監査チームに入ったのですが、今でいう修了考査、当時の三次試験が終わったタイミングで異動の希望を出して、不動産証券化をメインに行っている部隊に入りました。

私の名刺にもありますが、公認会計士だけでなく不動産鑑定士も持っているということから、不動産と会計の接点を探っていきたいと思っていたためです。

不動産証券化に10年携わった後に投資会社に転職をして、その後東京共同会計事務所に入所しました。

監査法人から投資会社、そして東京共同会計事務所へ

―監査法人から投資会社へ転職をされたきっかけは何ですか。

石渡:監査法人は”自分で何かをやる”というよりも、”人が作ったものを見る”という仕事と思っています。業務の中で不動産証券化のスキームのご相談や、「こんな取引、どう思いますか」といったご相談を受けたりする中で、一度、自分で投資する側に回ってみたいという気持ちが強くなり、投資会社へ転職しました。

―投資会社には3年ほど在籍していたとのことですが、その後プロフェッショナルファーム(東京共同会計事務所)への転職のきっかけは何だったのでしょう。

石渡:監査法人というプロフェッショナル側にいる時間が長かったので、投資会社でもブレーキを踏む立場としての考え方が抜け切らなかった、ということがあります。本来は儲けるために事業をやっているのに、この考え方はどうなのだろうかと論点を考え出すと、どうしても二の足を踏んでしまうということもありました。

このことから、実際に転職を考えていたときに、東京共同会計事務所がREITの業務に携わる人材を探していて、ご縁がありこちらに入所しました。

ー事業会社とプロフェッショナルファームで働くことの違いについてはどのように感じていらっしゃいますか。

石渡:分かりやすいところですと、プロフェッショナルファームは、接する案件が非常に多いと思います。一方で、事業会社ですと1つの案件に時間を掛けます。また、プロフェッショナルファームですと、よく論点となるような案件のご相談も複数いただきます。 結果として複数の案件で且つ特化して業務ができることがプロフェッショナルファームの特徴だと思っています。

個人資産を積み上げることができる ストラクチャード・ファイナンス分野でのキャリア

―それでは、REIT含めストラクチャード・ファイナンス業界の特徴はありますか?

石渡:一番のポイントは、クライアントの方との距離が近い業界であることだと思います。

監査の現場ですと、重厚長大なクライアントが多いように思います。そのようなクライアント(会社)では、こちらの出した意見をすぐに上まで汲み上げてもらうことは難しいことが多いです。それに対して、ストラクチャード・ファイナンス業界でお付き合いのあるアセットマネジメントなどのクライアントは、10~20名くらいの精鋭部隊で、投資規模に対して意思決定がとても早いことが多いと思います。仕事をしていて、自分の意見や考えが、早いスピード感で意思決定者まで通じる様が体感でき、とてもやりがいを感じます。

また、仕事相手が同じ業界で転職することも多く、個人的な人脈の広がりが財産となります。監査法人時代から証券化に携わっていますが、シンクタンクの方や証券会社のアナリストの方、そこからさらに転職して社長になっている方など、現在でも付き合いがずっと続いているのです。このような付き合いをさせていただけることも、ストラクチャード・ファイナンス業界の特徴だと思いますね。

また、東京共同会計事務所の看板を背負っていれば大変有難いことにクライアントからの依頼を多く頂けるので、そこできちんと仕事をしていけば、信頼を得ることができ、結果としてそのクライアントは自分のクライアントとなってくれます。そしてその「個人の財産」を、今度は事務所に還元することで、さらに事務所にとっても良い循環が生まれていると感じています。

― 一方でこの業界に対しては単調、作業が多い、といった「個人の財産」とは正反対の印象をもっている方が多いようですが実際はいかがですか?

石渡:確かに一般事業会社のクライアントがメインであるファームより一人あたりの担当社数は多いかもしれませんが、その数の分、会計・税務の業務の流れを短い期間で覚えてしまうことができるので、「個人の財産」が得られやすいと思っていますね。業務の幅は限定的なところもありますが、例えば、通常の税務申告書の流れは大企業でも中小企業でも変わりませんので、数をこなせることで、短い期間で会計・税務の業務の流れを習得できるということです。

ただし、件数が多いといっても、業務量としては多すぎると感じることはありません。月の中での繁閑はありますが、弊所には代休制度や時間給制度もあるので、残業時間(※1)を休みに代えることも可能です。また、代表も人事部門も、残業を減らすということについて、特に力を入れています。


※1 弊所の所定労働時間は7時間です。フィナンシャル・ソリューション部の残業は平均月50時間程度なので、8時間勤務の会社に換算すると、残業時間は月30時間程度となります。(2020年8月時点)

プロとして仕事を請け負う体制

石渡:ストラクチャード・ファイナンスに関しては東京共同会計事務所以外にも著名なプロフェッショナルファームはありますが、弊所は特に資金管理関係の業務が特徴的です。SPCの事務受託業務では資金管理を丸ごと請け負うので、SPCの銀行通帳・印鑑を預かって行う業務について、完全に分業のうえで、システム的な仕掛けも含む相互牽引による管理体制を敷いていることは、大きな特徴だと思います。勿論、管理する金額も億単位と非常に大きいので、管理体制(内部統制)も厳重です。

10年ほど前に、フィーが安いという事由で、公認会計士が会計記帳業務も資金管理業務も担当するといった小さな会計事務所に事務委託をしていたところ、一気に資金が流出してしまったという事件も実際にあったようです。ですから我々としてもその部分の管理は特に厳重にしていて、内部統制に関して、毎年、監査法人の保証業務の提供を受けて、継続的に入手する保証報告書(米国保証業務基準書(AT-C320、AT-C105およびAT-C205)および国際保証業務基準(ISAE3402))を入手することで、クライアントにも信頼を頂いています。この点も、他のプロフェッショナルファームと比べて、大きな特徴だと思います。

―緻密な部分にも担当者がしっかりいるというのは、働く側にとっても、クライアント側にとっても安心ですね。

東京共同会計事務所の今後の展望

―東京共同会計事務所としては、今後どのような事業展開を考えていらっしゃいますか?

石渡:個人的な意見となりますが、自分は2軸で考えていて、1つ目としては、やはりREITを増やしていきたいですね。国土交通省が2020年頃迄にREIT等の資産総額約30兆円規模の実現を目標としているので、少なくとも1.3倍くらいには増えていくと思っています。市場拡大余力もあるのですが、弊所の受託数として、その増加割合以上に受託数を増やし、寡占化している現在の状況の中で、「REITといえば東京共同」というように当事務所の名前が出るようにしていきたいと思っています。REIT案件の受託を獲得していくにあたっては、会計の専門家であること、受託を行っている他の金融系企業よりもコストが抑えられる可能性があることも、有利ではと考えています。

そしてもちろん、2つ目として、東京共同会計事務所の強みであるSPCの事務受託業務についても、幅を広げるということも考えています。我々はもともと1993年に代表の内山が独立して作った会計事務所で、債権の証券化から始めて、不動産の証券化、そして最近は太陽光や風力、バイオマス発電など再生エネルギー関連のプロジェクトファイナンスも増えています。そして新たに、ベンチャーキャピタルの管理業務も数年前から始めています。

長く続けられるREITを増やす、受託できるアセットの幅を増やす、という2本立てが、事務所の戦略の一つではないかと思っています。

生き残っていくためには、自分の強みを持つ

―最後に、KaikeiZineの読者に一言お願いします。

石渡:最近、公認会計士・税理士はIT・AIで駆逐される業界とも言われていますが、その中で生き残っていくためにはより深く専門的なところを身につけていかなければならないと思います。業界に特化してしまうと、キャリアアップの中で潰しがきかないと思われることもありますが、東京共同会計事務所から転職してアセットマネジメント会社に行く人もいますし、私のように投資側に回ることもあります。また、私も一つREITの監督役員をやっています。REITの監督役員は結構特殊で、証券化に詳しい人がなかなかいないのが実情です。その為、経験を積んで自分自身の市場価値を高めることもできます。


編集後記

インタビューのあと、東京共同会計事務所人事担当の方からお話を伺う機会がありました。

”他社より代表との距離が近いこと”、”プロフェッショナルが揃っていること”についてお話しいただきましたが、その中にあった「追いかけたい背中が所内にたくさんいるのが魅力」という言葉が印象的でした。

若手が刺激を受けながら、自身のキャリアを創造し成長できる事務所であると、改めて感じることができました。

東京共同会計事務所
●所在地
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル9階

https://www.tkao.com/

リクルートページ
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