バックヤード部門の弱い会社は「危ない」

好景気の時は目立ちませんが、不景気になったとたん、組織のバックヤード部門の充実度で会社の実力差が広がります。

これは今回のコロナ禍の状況では想像しやすいですね。

バックヤード部門が充実している会社は、迅速に総務部門や人事部門がリモートワークの準備をし、経理財務が資金繰りの対応をしたり、環境変化に合わせた事業計画を修正する、など生き残るための仕事をしっかりとこなせるわけです。

そうすることによって経営者は、本来の経営者の職務である経営判断に集中できる、ということになります。

ところがバックヤード部門の弱い会社では社長が経理財務や総務人事の仕事を行わなければなりません。

そうすると経営に専念できずに他社に差を広げられてしまうということになりますね。

これが、「バックヤード部門の弱い会社は“危ない”」理由です。

1秒でも早く動き出して生き残る確率をあげる

私も数多くの会社を見てきましたが、伸びている会社とそうでない会社の違いは実は「ほんの少しの差」だということをつくづく思うことがあります。

勢いのある時に周囲がその会社のためを思ってアドバイスとしても聞く耳を持たない、というケースはよくあることです。後に、そういった「かつて順調だった」会社が業績悪化で苦しむということもよくあることで、その際、「あのときのあのアドバイスをきちんと聞いておけば」と後悔する経営者を数多く見ました。

経理については基本的なことが重要です。

それはやはり「数字の潮目の変化に敏感になっておく」、ということですが、その重要性を知っている経営者であればあるほど、管理部門のコストを安易に削る事に対する違和感を理解できるものです。

「数字の潮目の変化」というのは「ささいな変化」と言い換えてもいいかもしれません。

利益率や売り上げ単価、1人当たりの数値、顧客獲得当たりのコスト、そういった個別の指標となる項目の数字の変化を見逃さず、その背景になる事象をとらえて経営の舵を切る(行動する、手を打つ)ということが肝要だといえます。

危機下でも発揮される「ディフェンス力」

2つ目の視点で考えてみましょう。

過去の大企業の再建フェーズにおける財務や経理という機能の重要性という視点です。

ここまではバックヤード部門と一括りにしてきましたけど、私の専門である財務・経理に絞ってみたいと思います。そして、存在する大企業を例に、具体的な事例を元に見てみましょう。

話はずいぶん昔になります、2000年前後の話ですから、20年前の話です。

「景気後退」とか「経済ショック」というフェーズではなく「企業再建フェーズという危機的環境」でも財務や経理機能は同じく重要である、という事例だと考えていただいて結構です。

フランスのルノー社から派遣されたカルロス・ゴーンが日産自動車株式会社の奇跡のV字回復を成し遂げたことを覚えている方も多いと思います。

(なにせ、2018年11月に第1回目の逮捕をされて以降、保証金総額15億円、保釈時の“変装”、楽器ケースに隠れた“出国劇”と、センセーショナルな話題に事欠きませんでした。皮肉にもそれらとともにゴーン氏の偉業は広く喧伝されていましたね。)

1999年にルノーと資本提携するまでの日産自動車は、「技術の日産」というほどの名門企業であったにもかかわらず、技術偏重の社風により販売政策はあまり上手とは言えず、しかも組合闘争と内部権力抗争が足を引っ張り、徐々にトヨタ自動車等のライバルに差を広げられていました。1980年代後半、つまりバブル景気の頃は「シーマ」をヒットさせ存在感を示しますが、バブル崩壊後は拡大路線がとん挫し、1998年時点では2兆円の有利子負債を抱えていました。