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大相撲 かつては数億円売買されていた親方株 現在の引き継ぎの課税区分

昨年の秋場所前に現役を引退した大相撲の西岩親方(39)(注:元関脇若の里、本名古川忍、青森県出身、田子ノ浦部屋)の引退相撲が5月28日、東京・両国国技館で行われた。元横綱3代目若乃花の花田虎上氏ら約400人がはさみを入れ、同期で師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)が大銀杏を切り落とした。西岩親方は、将来的に独立の意向を示したが、力士引退後の親方にまつわる年寄名跡金や部屋維持費の課税関係に触れてみたい。

大相撲の力士の引退年齢は30歳前半と言われるが、引退後に年寄名跡(年寄株又は親方株という)を手に入れ、親方として活躍できるのはほんの一握り。というのも、親方となるためには、一部例外を除き、日本国籍を有するほか、
①最高位が小結以上、
②幕内在位通算20場所以上、
③十両以上在位通算30場所以上
のいずれかを満たすことが条件とされている。
さらに、日本相撲協会では、親方の定年(協会では「停年」という)を65歳としており、親方になれる年寄株数も105と決められている。基本、親方が退職する際に譲り受けるしかないため、空きが出るまで親方にはなれないのだ。一部例外としては、相撲部屋承継者として承認された場合(幕内通算12場所以上又は十両以上通算30場所以上の条件を満たすことが必要)か、大鵬・千代の富士・貴乃花などのように現役時代に顕著な成績を残して特別に「一代親方」となる場合はある。

親方になれば、力士引退後30年以上の生活が確保されるわけだが、年寄株はどうすれば手に入るのか。一昔前までは、親方が有望な弟子や、自分の娘と結婚させて婿に後を継がせるという“世襲制”による無償の譲渡が採られていたが、その後、年寄株が売買されるようになり、もともと明確に価格が決められていないことから、需要と供給のバランスにより一時は億単位まで高騰した。力士の中には、現役の早い段階から給与等を貯金に充てたり、番付が下がっても年寄株の購入費用が貯まるまで引退しないケースも少なくなかった。これを象徴するような話として、1999年に元立浪親方の娘と結婚して年寄株・立浪を引き継いだ旭豊が、その後、離婚する際に元立浪親方から年寄株の譲渡にあたる代金として1億7500万円を支払うよう訴訟を起こしたことがあった。

裁判は、最高裁判所まで争われ、元立浪親方の主張は認められなかったが、下級審(一審)では元立浪親方の主張が認められたことから、年寄株を財産として裁判所が認めたケースとして今でも注目された判決だ。

年寄株も単純に引き継げば「相続」、売買があれば「譲渡」として、課税関係が生じそうだが、国税庁が力士等の収入についての課税区分を定めている所得税個別通達「力士等に対する課税について」では、年寄名跡金は「給与所得」と明記されているだけで、他の通達等をみても売買等に係る課税の規定は見当たらない。

これは、協会が年寄株の移動に関して「売買」等ではなく「無償の贈与と生活費の前渡し」という認識に立っていることも影響しているようだ。なお、公益法人改革に伴って2014年1月に協会が公益法人に移行したとき、年寄名跡は協会が管理すること及び名跡の襲名、襲名の推薦に関して金銭等の授受を禁止している。「協会に申告することを条件に前親方に指導料を支払うことができる」というただし書きが付されており、別途の名目による金銭等の授受が実質認められている。

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