■なぜ配偶者居住権の制度が設けられたのか
ではここで配偶者居住権が創設された背景を見てみましょう。冒頭で「配偶者の住む権利を保護する目的で創られた」とお伝えしましたが、実はある判例が影響しているのです。
●平成25年9月最高裁「婚外子の平等な相続権」を認めたのが始まり
現在の民法の相続部分は日本国憲法の制定以後、改正に次ぐ改正で創られたものです。平成22年改正で家督相続制度の廃止と配偶者の相続権の確立、昭和37年改正で代襲相続制度の見直しや特別縁故者への分与制度の創設、昭和55年改正で配偶者の法定相続分の引上げや遺留分の見直しが行われました。過去の法制審議会では配偶者の居住権保護や婚外子の相続分の同等化についても議論されましたが、「ハードルが高い」として法制化は見送られたのです。
しかし思わぬところで配偶者の居住権保護の必要性が問われるようになります。平成25年9月4日、当時の民法で「婚外子の相続分は婚内子の2分の1」とされていた規定を最高裁が「違憲である」という判断を下しました。翌日以降、婚外子の相続分は婚内子のそれと同等に扱われるようになったのです。
生まれによる相続分の差別がなくなったことで、新たな問題が浮上しました。それは愛人の子が自宅を相続したときのリスクです。実の子が自宅を相続すれば住んでいる親を追い出そうとはしないものですが、血のつながりのない人間ならば分かりません。そこで配偶者の住む権利の保護が重要な課題となり、平成30年7月、配偶者居住権という制度が成立したのです。



