経過措置の「指定日」はどうなる?
経過措置の行方も気になるところだ。消費税は原則として引渡し時の税率でかかるものだが、税率引上げ日以後の資産譲渡等のうち一定のものについては、旧税率を適用するという経過措置が設けられている。経過措置の適否を決めるカギとなるのは「指定日」。指定日前までに締結した契約にもとづいて増税後に引渡しを受けた場合には、旧税率が適用になる。
当初、10%への税率引上げは平成27年10月1日で、これに対応する指定日は同年4月1日だった。しかし、引上げ時期が同29年4月1日に延期されたことを受け、指定日も「平成28年10月1日」に延期されている。
例えばマイホーム取得の場合、指定日の前日(平成 28 年 9 月 30 日)までに工事の請負契約を結んでおけば、引渡しが税率引上げ日 (平成 29 年 4 月 1 日)以後になった場合でも旧税率(8%)が適用されるというわけ。
今回の再延期を受け、指定日についても再延期が行われることになろう。経過措置の指定日は、資産の貸付けや指定役務提供、予約販売にかかる書籍、通信販売、有料老人ホームなどの契約にも設定されている。とくに工事の請負契約は関連する事業者も多く、莫大なお金が動くだけ影響が計り知れない。
複数税率対応レジに買い換えたのに…
「軽減税率対策補助金」も消費増税を見据えた政策だ。
10%への税率引き上げと同時に、酒類・外食を除く飲食料品等について消費税率を8%に据え置く軽減税率がスタートするが、これにより多くの事業者が複数税率への対応を余儀なくされることになる。そこで、中小企業や小規模事業者が複数税率対応レジの導入や受発注システムの改修などを行う場合のフォローとして、経費の一部を補助する「軽減税率対策補助金」制度が設けられている。
レジ1台あたり最高20万円を補助。複数台を導入する場合は1事業者あたり上限200万円。補助率は3分の2。レジ機能に直結するクレジットカード決済端末や電子マネーリーダー、レシートプリンタ、ルーター、サーバーなども合わせて補助対象となる。これを機にレジを総入れ替えしたという事業者は少なくない。
この補助金は、軽減税率がスタートする前日の平成29年3月31日までに対象設備を導入または改修等したものが対象で、申請受付は同29年5月31日までとされていた。再延期が決まっても補助金の受付は継続。延長後の受付期限は追って案内するという。
しかし、「3年後にはもっと高性能な商品が出ているはず」、「同じ商品でも3年後ならもっと安く買えたはず」、「慌てて買い換えるんじゃなかった…」という声は少なくない。消費増税や軽減税率を甘んじて受け入れ、対策を進めてきた事業者にとって、今回の再延期による影響は計り知れない。
役人も振り回される——
国税庁の組織体制にも影響がある。平成28年度予算には、来年4月に予定されていた消費税率10%への引上げを見据えて「消費税軽減税率制度への対応」が盛り込まれ、国税庁に専担ポストとして「消費税軽減税率制度対応室」が設置された。そして軽減税率制度に対応する人員として、国税庁の長官官房に参事官1名、課税部に課税企画官1名、消費税軽減税率制度対応室に課長補佐3名の配置が決まっている。
「消費税軽減税率制度対応室」ではすでに、国税庁ホームページに特設サイトを開設し、リーフレットやQ&Aの公表、軽減税率制度に関する説明会への講師派遣などを展開しているが、あくまで来年4月に予定していた軽減税率スタートを見据えて出来た部署だけに、増税再延期によって「ハシゴを外された感」は否めない。
新たに設定された消費増税時期である平成31年10月まであと3年3カ月。予算が組まれ、ポストが新設され、人員が配置されるという大掛かりな対応に見合ったパフォーマンスが展開できるのか。各部署から集められた優秀な人材は、2年半の長期間にわたり「役不足」の状態になりはしないか。同対応室のその立ち位置と合わせて注目が集まる。




