相続税の節税対策の一つとして、『タワーマンション節税(タワマン節税)』に関心が集まっている。相続税の増税で最高税率が引き上げられ、節税を後押しする税理士や不動産コンサルタントなどが積極活用の推進役だ。こうした状況に国税庁では、タワーマンション節税封じを検討しているといわれるが、相続税の節税封じの特効薬になるのか疑問の声も聞かれる。
タワマン節税は、タワーマンションの高層階物件を購入することで、金融資産の相続税評価額を下げ、相続税を節税する方法だ。
そのからくりは、タワーマンションの高層階は、低層階に比べ眺望が良い等の理由から、高額取引が行われる一方、相続・贈与上の物件の評価額は、今のところ低層階と同額となっている。というのも、不動産の相続評価額は、土地は路線価、建物は固定資産評価額によって決められるため、マンションの場合、戸数で土地を分け合うことになるため、1戸ごとの土地の持分が小さくなり、土地の評価額を戸建て住宅よりも下がることになるのだ。
株式の贈与など組み合わせ極端な節税も
たとえば、都内のタワーマンション高層階を購入。相続税評価額は、購入価格の40~50%評価というものも現れ、たとえば、株式会社設立後時価10億円のものを、自己資金5億円と借入金5億円で購入(小会社でサービス業の場合、土地割合が総資産の70%以上でなければ土地保有特定会社にならない)し、株式を相続人に贈与すれば贈与税が0円になるような極端なケースも出てくるのだ。
しかも、賃貸に回し収益物件とした場合の評価は、「建物部分=固定資産税評価額×70%」とされ、底地部分である土地持分は貸家建付地であるため、その評価は路線価の約80%とされる。さらに、小規模宅地等の特例によりアパートや駐車場など、貸付事業用の土地で200平方メートルまでは50%評価減があり、貸家建付地評価との併用が可能だ。
こうした相続税の節税効果が見込めるタワマン節税だが、国税庁では平成30年度税制改正でタワマン節税封じを検討しているという噂もある。国税庁の考えは、高層階と低層階の評価額を補正し、節税効果を薄めるというもの(実際には、3年経過後までマンションの評価は10億円のまま。従って、今このスキームを使っても平成30年の改正には間に合わない)。
平成23年7月1日付の国税不服審判所裁決において、タワーマンション節税に一石を投じるような裁決が下された。この納税者側が退けられた採決の経緯は、以下の通りだ。
・平成19年7月被相続人入院
・平成19年8月被相続人がタワーマンションを2.93億円で購入
・平成19年9月3日被相続人死亡(相続開始)、
・平成19年11月相続人名義に相続登記
・平成20年7月相続人がタワーマンションを2.85億円で売却
・同じ頃相続人が相続税申告(タワーマンションの評価額は5,800万円)
・平成21年税務調査実施され、平成22年3月課税処分でマンションの相続税評価額は購入価額の2.93億円が相当と判断されている。