会計士・税理士の未来は明るいか?

さて、今回の「コロナ不況 残る会計士 消える税理士」をざっと要約します。

□新型コロナウィルスの感染拡大で不況突入は不可避。旧態依然とした士業の淘汰が加速する

□個人にスポットをあてると大量リストラの再来もあり得るわけで、監査法人内では、キャリア不安が高まるだろう
(2008年のリーマンショック後は企業の値下げ要請が強く、10年ごろから監査法人は数百人規模の早期退職希望を募ったし、新入社員の募集を大幅に絞った)

□40代の会計士の6割が年収1千万円を超えているが、「今の給与水準を維持した転職は難しい」と大半が考えている

□監査法人に入所する会計士は5年で50%が退職し、10年で87%が退職する
その後のキャリアは事業会社が43%、コンサルティング会社及び会計事務所が30%

□「税理士離れ」が堅調
税理士は2009年の受験者数5.1万に対し、2019年は3万人と10年で4割減少

□税理士の高齢化
合格者に占める41歳以上の比率が、10年前は20%だったのに現在は36%に上昇している

□「税理士離れ」「高齢化」の背景には、各種クラウド会計ソフトの台頭がある

□税理士業務はAIによる自動化によって代替される確率が95%とメディアで報じられている

□要するにデジタル化、AI化の波はコロナによって加速し、「淘汰」が本格的に来る
(逆に言うと勝ち組にはそれなりの「投資」という重いコストがかかるともいえる)

ここまでが、業界全体の動向であり、まず残念なのは、全般的に会計士税理士にとって「明るい未来」が語られていないことです。

確かにマクロ環境をみると、これから若者が会計士や税理士を目指すとなると少し迷ってしまうだろうな、というのが直感です。

要するに会計士や税理士のマーケットは縮小していく、と皆が考えているようです。

業界の未来に対してトップが考える生き残り戦略

今後のマーケットを語る上でやはり「AI」はキーワードであるものの、

□AIを搭載したサービスを前提に、企業不正調査のニーズは高まるが

□不正・粉飾発見ソフトにAIを搭載することで会計士の領域が大きく侵される可能性

ネガ・ポジ両面での意見があります。

4大監査法人のトップはAIの台頭をポジティブに捉えているようで、AIを活用した「生き残り戦略」は印象的です。

□「iPodで監査の紙減らす」

□「海外経験者の育成カギ」

□「リアルタイム監査を試行」

□「5年後見据えAI加速」

会計士や税理士のマーケットが縮小している(少なくとも拡大はしていない)ことは先のデータでも明らかであるからこそ、(私も含めて)業界の先輩たちは明るい業界の未来を考え・切り開いていかなければなりません。

しかし、それほど悲観的に考える必要はないのではないか?と個人的には思っています。

まず、業界が活性化しないという意味では現状の「税理士離れ」や「会計士のキャリア不安」は大問題ですが、すでに資格を取り、実務経験を積んでいる方にしてみれば、逆に「競合が少ない」という言い方もできます。

つまりライバルが少なくなっていくわけですから「生き残れば勝ち残れる」という状態に近づいていくわけです。

ちなみに、当グループの生き残り戦略の一つは「チャレンジ」が挙げられます。

大手監査法人を退職し、独立して会計事務所を立ち上げてから19年目の当グループですが、過去に何度か生き残りがかかった試練の時はありました。その大きなものがリーマンショックです。コンサルティング事業の売上が1/3になるほどの大打撃を受けたことをきっかけに、事業の中心軸を「総合型の会計事務所」に変えるチャレンジ。今の事業の多角化に繋がっています。

AIの活かし方については、単に「ITツールを導入して業務効率を上げました」に終わることなく、ビジネスモデルへの転換にチャレンジできるような、DX(デジタルトランスフォーメーション)の考え方を重視しています。