季節は5月です。就職や転職、あるいは部署異動など、新しい環境でスタートを切った方は新年度から1か月が過ぎ、張りつめていた緊張の糸が弛緩するタイミングです。ステイホームとゴールデンウィークの長い時間を、これからのキャリアや人生について、じっくり思いを巡らせた方も多いと思います。これから自分は何をして、どこに向かえばいいのか?人生に迷いはつきものです。今回のコラムでは筆者が最近手にした本でビジネスパーソン必読の名著をいくつかご紹介したいと思います。耳の痛い話もあるかもしれませんが、まぁ親父の説教と思ってお付き合いください。いずれかはきっと、皆さんの人生の羅針盤となるでしょう。
『本気の説教』(日本経済新聞出版社/小笹芳央 著)
- ●仕事の報酬は、給料ではなく仕事である
報酬を給料と考えると不満が生じるが、報酬を仕事と考えて働くと信頼関係が構築でき、大きな仕事を任せてもらえる。(経済的報酬も後から得られる)
- ●ロールモデルとなるような完璧なビジネスパーソンはいない
それを探すよりも身近な人々の長所を吸収し、職場を学びと成長の場にするべきである。
- ●単純作業を否定してはいけない
圧倒的な量をこなすことで体に技術が染みつき、大きな仕事を可能にする土台ができる。
- ●同じ失敗を繰り返すと、周囲からの信頼を失う
失敗は学びの機会であり、自分が失敗に陥りやすいパターンを掴んで次に活かす“失敗の棚卸し”が必要。
- ●上司への提案は「2つの極論」を提示しよう
理想通りの「ベストシナリオ」と、大失敗した時の損失を示した「最悪シナリオ」、この2つがあって初めて上司に判断を促すことができる。
「仕事の報酬は仕事」「失敗は学びの機会」
本当に良い言葉だと思いますし、おそらく実体験としての自らの「成長」を体現したからこそ言える言葉なのだと思います。
この言葉、私の経験では、上昇志向の強い方、あるいはそれなりにしっかりとして結果を出してきた方は実践しているのであろう、と思います。
私がよく部下に伝えているのは「ストレスは成長に必要不可欠」「自己否定がなければ進化なし」という言葉です。
適度にストレスを感じたり、自分を否定されないと「新しい自分」には出会えませんね!
ただ、上司部下の関係でこれを実践していくとなるとハラスメントというワードが気になるこの時代ですから、ほどほどに指導するか、徹底的に指導するか、これは状況次第(相手次第)ですね。
タイトルが「説教」というだけあり、やや概念的なお話となりましたが、部下の指導に悩んでいる管理職、又はもう少し突き抜けたい中堅層、30代前後で悶々としている若手世代の後半戦に差し掛かっている方はぜひ一読を。
さて、これらの「説教」の内容を「実践」に落とし込むにはどのように考え、行動すべきか、次に紹介する本が参考になるのではないでしょうか。
『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(講談社/エイミー・モーリン 著/長澤あかね 訳)
本書によれば、メンタルの力を育むには、3つの方向からのアプローチが必要である。
<思考>
根拠のない思い込みを特定し、より現実的な思考に置き換える
<行動>
どんな状況でも、前向きな行動をとる
<感情>
感情に支配されないよう、感情の手綱を握る
そして、メンタルの力を育むには、以下の悪しき習慣をやめる必要がある。
- ●自分を憐れむ習慣(不幸にいつまでもこだわってはいけない)
- ●どうにもならないことで悩む習慣(自分でできることを明らかにし、それに心を注ぐ)
- ●リスクを取らない習慣(リスクを取ることで力をフルに発揮できることもある)
- ●過去を引きずる習慣(嫌な過去を振り返る時は、その時の感情ではなく事実に目を向ける)
- ●人の成功に嫉妬する習慣(人の成功への嫉妬は、根拠のない思い込みによるものだ)
- ●一度の失敗でくじける習慣(成功への道は、短距離走ではなくマラソンである)
- ●孤独を恐れる習慣(成長に目を向ける上で、1人の時間は大切である)
この本の書いてあることは、仕事をしていく上、いや生きていく上で本当に大切です。
要するに「切り替えて、前に進め」ということでしょう。
私も部下にそう伝えたくなる時が多々あります。
「現実の世界は極楽でもなく楽園でもないのだから、理不尽なことや不平等なことは起こりうるに決まっている。だからといって嘆いたり、引きずったりしても何の得にもならない」と。
ゴルフに似ていますね。
ゴルフはメンタルのスポーツ(多少のセンスも必要?)だと言われます。
バンカーに入っても、気持ちを切り替えないと次のショットに影響が出る、というやつですね。
さて、3冊目に行きましょう。
24時間ビジネスパーソンであり続ける人は稀でしょう。会社を一歩出れば父や母であり、誰かの大切な友人であり、自分の人生を生きる主人公です。
次に紹介するのは、ビジネスだけではなく、人生観にも良い影響が得られる著作です。
『働く君に贈る25の言葉』(WAVE出版/東レ経営研究所特別顧問 佐々木常夫 著)
日本が高度成長期の真っただ中にある1969年に東レに入社。40回を超え入退院を繰り返す妻の看病や自閉症を含む子ども3人の世話に追われながらも、同期トップで取締役となり、2003年から東レ経営研究所社長となった佐々木氏の著作です。
忙殺される私生活の状況でも仕事への情熱を捨てず、様々な事業改革に取り組み成功に導いてきた佐々木氏は「ワーク・ライフ・バランス」のシンボル的存在と言われています。
さて、一部を原文のままそのままピックアップします。
- ●私は、「ワーク・ライフ・バランス」の推進者です。
- しかし、実はこの言葉があまり好きではありません。「ワーク」と「ライフ」を「バランスさせる」という発想では足りないからです。
- 必要なのは、マネジメントの発想です。
ワーク・ライフ・バランスは、内閣府では「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義されています。
当グループでも仕事と家庭の両立は重視しており、家庭の状況に合わせて時短勤務という選択肢もありますし、産休取得からの復帰率は100%です。
コロナでテレワークが浸透したこともあってか、採用の面接では当グループのワーク・ライフ・バランスの取組みについて質問を受けることも増えてきました。
ただ私は、このワーク・ライフ・バランスを「与えられるもの」として受け身で捉えているビジネスパーソンが非常に多いことに警鐘を鳴らしたいと思います。
「仕事と生活の調査=ワーク・ライフ・バランス」、つまり自分が望む人生を送るために必要なのは制度だけではなく、ワークとライフ、それらをいかにマネジメントするかという、積極的な姿勢であるはずです。
誰しも、自分の人生の主人公であり、自分の人生の経営者であります。
会社ではまだ新人・スタッフレベルの若者であっても、経営者目線(この言葉、嫌う人は多いですが)で自分の生活を見つめ直してはいかがでしょうか。
- ●君は人生の主人公だ
- 何者にもその座を譲ってはならない
良いマネジメントをしようと思えば、まず何よりも自分の人生にとって「何が大事なのか」を明確にしておく必要がありますね。
過去のこのコラムでも「たった一つのこと」というテーマで似たようなお話をさせていただいております。
会計士 中村亨の「経営の羅針盤」第12回-生涯現役で活躍するために必要なたった一つのこと
他にも
・欲も持ちなさい、欲が磨かれて志になる
・3年で物事が見えてくる。30歳で立つ、35歳で勝負は決まり。
・プアなイノベーションより、優れたイミテーションを。
・書くと覚える。覚えると使う。使うと身につく。
など、全部で珠玉の「25の言葉」がズシリと心にそして脳裏に響く、1冊です。
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