働き方改革が喧伝されて久しく、残業の制限、有給休暇取得の義務化、男性版産休制度の導入、勤務間インターバル制度の推奨など、「働きやすい環境」の実現は進んでいるはずですが、その中で、特に若手を中心に「ゆるブラック」の概念が広がっています。 働きがいと働きやすさのバランスの不均等、特に働きがいの欠如からなる結果で、働きやすさばかりを追求した働き方改革の弊害と言えるかもしれません。 ゆるブラックであることが転職理由に挙げられることもあり、もはや看過できない状況にあります。 今回のコラムでは、「成長」を軸に企業を選ぶポイントや働きがいについて考えてみます。
働き方改革で生まれた「ゆるブラック企業」
働く時間が減った、という点において働き方改革は順調に進んでいます。
厚生労働省の調査によると、年間総労働時間が2012年は1,808時間であるのに対し、2019年は1,734時間と74時間も減少しています。
しかし、「残業が減ったが、やる気も減った」と評価する若手世代の声が聞かれるようになりました。
日本の終身雇用制は崩壊しており転職は当たり前。常にスキルを磨き自分の市場価値を高めるべきである、という認識を持っている若手にとって、“働きやすさ”だけで成長できない環境はもはやリスクであるという考えなのです。
実際に聞かれるのはこのような声のようです。(日経ビジネスNo.2116)
- 働き方改革によってプライベートは充実できるが、既にスキルを確立した先輩は良くても、仕事の幅を広げる必要がある若手にとっては疑問
- 仕事一筋のハードワークを望んでいるのではないが、この環境は違うんじゃないか
- これから先の時代は、強いやりがいをもって仕事に取組み、成長しないと生き残れない
- 楽だけど、働いても自分の成長に繋がらず物足りない
長時間労働を是正するために様々な取り組みを実施した結果、ブラック企業ほど忙しくないが、ブラック企業と同じように成長を感じられない環境になってしまった。若い世代はこういった企業を「ゆるいブラック企業=ゆるブラック」と評しているようです。
これは愛工大名電時代のイチローに「素振りをするな」というようなものですね。以前のコラム「第17回-テレワーク減少にみる「働きがい」と「働きやすさ」でも考察しましたが、働きやすさと成長はある意味で矛盾する考えなのかもしれません。
働きがいと働きやすさの両立はどのようにすれば成し得るのか。
残念ながら日本企業はまだ後進のようですが、海外ではすでに取組みが活発です。
DXを機に日本でも拡がりつつある「リスキニング」について見てみましょう。