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会計士 中村亨の「経営の羅針盤」第17回-テレワーク減少にみる「働き甲斐」と「働きやすさ」

最近は、緊急事態宣言の重みも薄らぎ出社して働く方が多い(或いは出社を要請する会社が多い)ようです。
これは恐らく「テレワークでは仕事が十分に進まない」という声が多かったのだろうと推察します。

今回のコラムでは、テレワークのこれからの形を予想しながら、モチベーションを高く維持し続ける「働き方」について考えたいと思います。

テレワークが減ってきた?

レノボが2020年に世界各国で実施した調査によると、「テレワークでは、オフィス勤務時よりも生産性が下がる」と回答したのは、諸外国が10%台であるのに対し日本はなんと40%。生産性の面でネガティブな意見が突出して高く出ています。

また、日本生産性本部が発表した「働く人の意識調査」(2021年7月)によると、テレワークの実施割合が昨年5月の調査以来最少となり、「在宅勤務の効率、満足度が低下し、『テレワーク疲れ』が出ている」と指摘しています。

テレワークの実施率は、緊急事態宣言下においては高まるものの、宣言が解除されれば低下します。

結局は「緊急事態宣言対策のその場しのぎ」と捉える企業が多いのかもしれませんね。日本においてはテレワークという新しい生活様式は浸透どころか、一過性のトレンドで終わってしまうかもしれません。

しかし、コロナで分かったこともあります。それは「出社は仕事にあらず」ということですね。

例えば、営業。

まずは、①移動時間がかからない、したがって②営業活動に充てる時間が増える、また③広い地域に営業活動が行える、さらに④ウェブ面談を通じて上司はより多くの営業同行ができる。

テレワークをやってみるとオンラインのメリットが大きい仕事も確かにあります。業績を上げるのが仕事の最終ゴールなわけですので、それを達成するならばツール(出社かテレワークか)は関係なく、そもそも出社はツールでしかないというわけです。

これからはハイブリット型

しかし、テレワークではどうしても効率良く進まないな、と感じるのは「細かいニュアンスを伝えたい」、「大事な話をしたい」など、コミュニケーションが重視される場面。レノボ・ジャパンが2021年4月に実施した調査では、回答者の実に46%が「同僚との対面コミュニケ―ションがなくなったことで、ストレスや不安を感じる」と回答しているようです。他にも、「他者から発想を得たい」「気持ちを切り替えたい」などクリエイティブな場面でも同様でしょう。

そう考えると、同僚と話す何気ない会話、昨日テレビで何を見たとか、ランチはあそこのお店がお勧めとか、一見どうでもいい会話が仕事を進める上でコミュニケーションの良いスパイスになっているのかもしれませんね。

それ以外の会議、ミーティング、営業はほぼオンライン化が定着するのではないか?(つまりテレワークが定着するのではないか?)と思います。6割が出社で4割がテレワーク、くらいのイメージでしょうか。出社とテレワークを業務によって使い分ける「ハイブリッド型」が主流になっていくでしょう。

出社とテレワークのどちらかに100%舵を切らない(切れない?)のがなんとも日本らしいとも思いますが。

ちなみに東京都では「テレハーフ」というのを推進しています。

半日・時間単位で行うテレワークのことで、2021年5月には従業員30人以上の都内企業の17.8%が導入したとのこと。これですと「出社を控え人流を抑制する」という当初の目的達成には疑問が残るものの、これも新しいハイブリッド型ですね。

100%テレワークができる業務の未来は?

100%テレワークで完結する業務(テレワークジョブ)は要するに外注と変わりませんから、おそらくクラウドソーシング(ランサーズやクラウドワークス)、或いはRPAにとってかわられる可能性が大きい気もします。

BPOもその範疇にあるかもしれません。ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略で、業務のプロセス全体を外部に委託することで業務の運用だけではなく設計、効果検証、改善など業務一連のプロセスを委託することです。

実は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、経理や会計部門のアウトソーシングを検討する企業がじわりと増えています。「自宅からシステムにアクセスできない」という理由から経理部門がテレワークに踏み切れず、それを解消する方法の一つとしてBPO導入を検討し始めた、ということです。

いずれにせよ、デジタル化、AI化の波はコロナによって加速し、「淘汰」が本格的に来るという危機感は持っておいた方が良いかもしれませんね。

モチベーションが保てない??

テレワークを見直す会社が出てきていると書きましたが、生産性やコミュニケーションの問題の他に、テレワークではモチベーションが保てない、士気が向上できない、という従業員側の意見もあるようです。

オフィスに出社し、ある程度上司の目の届く範囲で仕事をしていればそれなりに気持ちに張りが出ます。部下の仕事ぶりをいつでもすぐに確認できる安心感もあります。同僚との競争もあるかもしれません。そんな緊張感のある環境から離れるとモチベーションが保てない、そういう気持ちになってしまうのでしょうか。

ここで、少し古い言葉になってきたのかもしれませんが「働き方」という言葉を少し深く掘り下げて「働きやすさ」と「働き甲斐」という言葉を考えてみたいです。

混同してませんか?「働きやすさ」と「働き甲斐」

採用面接で聞きたい質問(けど聞きにくい?本音の質問)ナンバーワンは「残業はどのくらいありますか?」ではないでしょうか?過酷な残業は社会問題になりましたし、今や残業時間の長さはブラック企業のレッテルを貼る一つの目安ですね。残業が少ない企業は、デジタル化・DX化を進め業務効率を上げる努力をしていると評価もできますし、大切な質問です。

次点は「福利厚生」でしょうか。私なら気になります。家賃補助や退職金はあるのか、ランチ代補助など嬉しい制度があるのかどうか。

ただ、そのような自分にとっての「働きやすさ」を追い求めても、仕事への高いモチベーションを維持し続けるのは難しいですし、もちろん「働き甲斐」を得ることはできません。

働きやすさと働き甲斐は両立しにくい要素を抱える概念です。

  • ・働きやすさ…外的要因に起因。不満に感じる要素がない状態
  • ・働き甲斐…内的要因に起因。満足に感じる要素がある状態

働きやすさとは、「残業がない」「給料が高い」「人間関係が良い」など、職場環境や労働条件といった外部から与えられるものです。

一方の働き甲斐とは、「仕事を通して成長できる」「達成感を得られる」といった内面から湧き出るもので、モチベーションを高める動機付けとなるものです。

この違いを理解せずに「働きやすさ」だけを追求すると、いつかは満足度も天井に届きますし自分が成長できない(=働き甲斐がない)ことへの不満につながるでしょう。モチベーションが高められず、ぬるま湯に浸かったような状態で仕事をするのは幸せでしょうか。

働きやすさと働き甲斐が両立できる環境が最高の職場であることは言うまでもありませんね。

ただ、スキルをまだまだ身につけたい(身につけなければならない)会計士や税理士に対して「残業するな」というのは、イチロ―や大谷選手に対して「素振りをするな」というのと同じでそもそも矛盾しているともいえます。

将来得られる働き甲斐のために、また「成長」というキーワードから考えると、ある程度の「働きやすさ」を犠牲にしなければならない場面は、プロフェッショナルを目指す人にはあるのではないでしょうか。

テレワークを見直す企業が増えてきたと述べてきましたが、テレワークの評価は「働きやすさ」であり、それが働き甲斐、ひいては個人の成長に繋がっていない現状がそうさせているのかもしれませんね。

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著者: 中村亨

日本クレアス税理士法人|株式会社コーポレート・アドバイザーズ代表/ 公認会計士・税理士

富山県出身、大阪府立北野高等学校卒業。早稲田大学政治経済学部卒業後、公認会計士第二次試験合格・監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)入所。2002年中村公認会計士事務所設立。後に「日本クレアス税理士法人」「日本クレアス社会保険労務士法人」「株式会社コーポレート・アドバイザーズM&A」「株式会社コーポレート・アドバイザーズアカウンティング」へ組織再編。株式会社エムアウト(取締役)、日本ファイナンシャルアカデミー株式会社(監査役)など兼務。趣味はゴルフ。

■日本クレアス税理士法人
https://j-creas.com/

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