今日は、とりとめのないお話にお付き合いください。時計の針を30年ほど戻してみましょう。1991年という年に何があったのか?世間では、1991年7月に日本プロサッカーリーグが誕生。そして2年後の1993年にリーグの実際の試合が始まりました。当初こそ観客も少なく先行きを案じる声もあったが、開幕後は一気にプロスポーツ主役の座をプロ野球から奪うほどの勢いで「サッカー文化の普及」が始まりました。
この「サッカー文化の普及」の時代背景には、バブル崩壊で自信を失った日本人のメンタリティの迷走があったのではないか、という社説を新聞で読んだことがあります。つまり、「自分探し」。
スポーツに見る組織論
打順や守備範囲が決まっている野球型の「縦割り組織」ではなく、選手同士が連携し自在に動くサッカー型の「横型組織」というスポーツの型に、バブル崩壊後の未来の自画像を見つけた、ということでしょうか。
確かに、この時代は、上司の指示を待ってばかりいる社員(指示待ち族)よりも、臨機応変に横と連携し、素早くその場で対応してくれる社員のほうが活躍できる時代ですね。
何よりもスピードが求められますからね!
ちなみに、筆者は、中学校で野球部、高校でバスケットボール部でした。
サッカー部の経験がないわけですが、この議論の話でバスケットボールというスポーツを考えてみます。
バスケットボールは、ある程度監督コーチとの距離が近く、ベンチからコート上の選手に指示が出るし、フォーメーションというルールが決まっている。しかし一方で臨機応変にコート上を走り回って対応しなければならないという意味では「連携」「自在」という両極端な動きが求められます。
そういう意味ではこの議論で行くと(縦か横か、野球型かサッカー型か)ちょうどその中間といえるかなと思いました。
時代とともに変化する公認会計士合格者
さて、日本がバブル後の「自分探し」のさなかにあったとき、つまりこの1991年から1993年。
筆者は、まさに「自分探し」の真っただ中でした。
(でも50年ちょっと生きてきましたが、まだ鋭意探し中。“自分”って本当にいつになったら見つかるんでしょうね?)
この2年間、公認会計士の2次試験の受験勉強に費やした2年間でした。
このコラムが出るのは7月ですが、夏が近づくと、どうしても筆者はあの頃の自分、資格試験を頑張っていたころの自分を思い出すものです(今は制度が変わり資格試験=夏、ではないようですが)。
当法人にも資格を目指しているスタッフは数多く、勉強のやり方を聞いたり、私なりにアドバイスしたりしています。
2020年の公認会計士合格者の女性比率が過去最高の25%になったことが発表されています。男女の合格率はほぼ同水準ですが、女性の志願者が増えているということです。
日本公認会計士協会によれば2016年に女性会計士の活躍を後押しする「女性会計士活躍推進協議会」という専門組織を立ち上げ2030年までに試験合格者の30%にまで女性比率を上昇させる目標を掲げている、とのことで高校や大学でのイベント開催に力を入れる取り組みを進めているようです。
時短や産休、育児支援制度を充実させ、女性が働きやすい環境の整備に力を入れる監査法人も増えています。公認会計士は今後、「女性が働きやすい」「女性が憧れる」といった資格になるかもしれませんね。
ついに来るか?税理士減少時代
一方、税理士は「合格」時点でのとらえ方はできませんでしたが「登録」者における女性の数は、令和2年度では登録者7万9404人のうち女性は15%の1万2099人です。
平成18年の女性の登録者数は全体の8.7%の約8千人。その後平成24年に1万人を超えており、着実に女性税理士の数が増えていることが分かります。
税理士として活躍する女性が増えていることは非常に喜ばしいニュースですが、反面、税理士新聞ではこんな見出しが。【ついにくるか?税理士減少時代】(第1702号/令和3年6月5日号)
日税連によると、税理士名簿登録者数は過去最高となったものの、業務廃止を理由とする登録抹消数も高止まりしており、税理士業界の高齢化が到来。近い将来、抹消者数が新規登録者数を上回る“税理士減少”時代がくるかもしれない、とのこと。
このあたりは当コラムでも過去に触れていますので、(かつとても反響をいただいたコラムでした!)ぜひご参考いただければと思います。一言でいうと、マーケットの縮小は成功するチャンスです。
→第8回-残る会計士、消える税理士/2020年11月公開
公認会計士試験・税理士試験本番当日の戦い方
さて、受験生の皆さんはこれからが頑張りどころなのでしょう。
そんな頑張っている資格試験の受験生にささやかな激励のメッセージを送るとすれば、それは「本番での戦い方」を身に着けてほしいということです。
会計士試験・税理士試験どちらにも言えることですが、「合格ラインを超える実力がある」ということと「実際に合格ラインを超える」というのは全く別物です。
確かに実力があれば合格しやすいのでしょうが、現実の合否は水物でその日の体調、調子、問題の趣向(得意不得意)等で大きく変わります。
ですので本番では、実力のあるなしに加えて「合格ラインを超える」ための戦い方が重要になってきます。
当たり前のことですしよく言われることですが、なかなかこれができない、ということを2つお伝えしておきます。試験の直前期はこれらを意識して過ごされると良いのではないかと思います。
●計算問題では時間がないことを前提に「戦い方」を考える
これを前提にすると、「解きはじめ」は特にゆっくり慎重に解いて、必ず正解に導くこと。
全てを解こうとしないで、捨てる問題を作る。
本番での合格ラインは想定以上に低く、誰もができる問題を落とすと致命傷になる、そのため誰もができる問題プラスアルファを正解すれば合格ラインは超える。
●理論問題(記述問題)では、穴を作ってはいけない
何が出ても何かは書ける、という知識の整理の仕方をする。
そのためには今までの知識の整理やインプットという勉強の仕方をよりも、記述できないテーマがないかどうか?というアウトプット型に切り替える。
人生100年時代、定年の無い時代、と言われていますが、資格を取得するというのは本当に素晴らしいことです。
しかし、敢えてお話ししますが、資格はツールにしか過ぎません。
資格を取ってからがスタートですね、立派な会計士になりたい、立派な税理士になりたいというまさにそのスタート台に立つための「資格」にしかすぎません。
冒頭の野球型か、サッカー型か、という話に戻りますと、これからの時代はやはりビジネスの世界も一つの組織も縦割りではなく積極的に横展開して攻めていくサッカー型でなければ勝つのが難しい時代です。
「資格を取得することは本当に素晴らしい」と書きましたが、問題はそのあとの活躍の仕方です。
野球型ではなく、サッカー型で活躍し、グランドで自在に走り回るように活躍できるプロフェッショルを夢見て資格試験を突破して頂きたいものです。
(関連記事)
会計士 中村亨の「経営の羅針盤」
第6回-コロナ禍で改めて問われる「ディフェンス力」の重要性 ~「景気後退期」や「危機下」こそ、財務経理機能をフル回転させよう~
第7回-キャリア論/独立したい会計士・税理士に伝える「プロフェッショナルの要件」
第9回-コロナ禍から企業が立ち上がるためのヒント「両利きの経営」
第11回-こんな時だからこそ差をつける「良い会社の経営習慣」
バナーをクリックすると㈱レックスアドバイザーズ(KaikeiZine運営会社)のサイトに飛びます
最新記事はKaikeiZine公式SNSで随時お知らせします。
◆KaikeiZineメルマガのご購読(無料)はこちらから!
おすすめ記事やセミナー情報などお届けします