住民税の決定通知書が届いて早1カ月が過ぎました。今年のふるさと納税を考える前に、昨年分が正しく節税できているかどうかを確認してみましょう。もしかしたら、控除されていないかもしれません。

■ふるさと納税の節税の仕方は2パターンある

ふるさと納税で節税できる金額は「寄附した金額-2千円」です。そして現在、控除の方法は、次の2つとなっています。

  • ●ふるさと納税を確定申告したとき

確定申告でふるさと納税の控除をしたとき、節税額は次の「1.所得税」と「2.住民税」を足した金額となります。

1.所得税

ふるさと納税した金額は、「寄附金控除」という名目で所得から差し引きます。実際の節税額は次の式で計算した額です。

(ふるさと納税をした金額-2千円)×所得税の税率(復興特別所得税の税率を含む)

ただし、「総所得金額等×40%」までしか控除できません。

2.住民税

次の(1)基本分と(2)特例分の合計額を住民税額から差し引きます。名目は「寄附金税額控除」です。

(1)基本分

基本分は、寄附金控除の制度で差し引ける部分です。ふるさと納税以外の寄附でも控除します。控除額は次の式で計算した金額です。

(ふるさと納税をした金額-2千円)×10%

この10%は住民税の税率で、全国一律となっています。この基本分は「総所得金額等×30%」までしか控除できません。

(2)特例分

特例分は、ふるさと納税のみ控除できます。控除額は、次の式で計算した金額です。

(ふるさと納税をした金額-2千円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)

「ふるさと納税をした金額-2千円」に所得税の税率・住民税の税率を除いた残りの割合をすべて乗じる形です。言い換えると「所得税率+住民税率+住民税特例分の割合=100%」となります。

ただし、この特例分は「住民税の所得割額×20%」までしか控除できません。上記の式で計算した金額が所得割額の2割を超えるなら、「住民税の所得割額×20%」が特例分の控除額となります。

●住民税だけで控除

給与所得者や年金生活者のように、確定申告しなくていい人は、寄附した自治体が5つ以下ならワンストップ特例を利用できます。このとき、「ふるさと納税した金額-2千円」を住民税額からすべて控除します。所得税での控除額が「申告特例分」として住民税額から差し引かれる形です。

■住民税の決定通知書で確認すべき箇所は

住民税の決定通知書のチェックすべき箇所は、次の赤字の部分です。

【給与所得者の住民税の決定通知書(特別徴収)】

【引用元】総務省「第三号様式別表」を加工して作成

この用紙にある「市町村民税の税額控除額+道府県民税の税額控除額」が、おおよそ次のようになっていたら、正しく節税できています。

●確定申告をした場合

〔ふるさと納税した金額×(100%-所得税率)〕-2千円

●ワンストップ特例を使った場合

ふるさと納税をした金額-2千円

■違っていたときの原因は4つ

決定通知書の金額が合わないこともあるでしょう。本来控除されるべき金額が差し引かれなかった原因として考えられるのは次の4つです。

  • ●原因1:自治体側のミス

ワンストップ特例が最初に適用された2017年度は、自治体間の連絡がうまくいかず、住民税から寄附額が控除されていないことがありました。時間が経って作業に慣れてきたとはいえ、自治体側が忙しいことには変わりありません。ミスをする可能性は十分あります。

  • ●原因2:ワンストップ特例を申請した後の確定申告で適用忘れた

ワンストップ特例申請後、医療費控除などで確定申告をするなら、ふるさと納税分も含めて申告しなくてはなりません。所得税も住民税も、最新の申告の情報が採用されるからです。ワンストップ特例は無効となります。

ふるさと納税を含めずに確定申告すると、所得税でも住民税でも寄附分が控除されないのです。

  • ●原因3:住宅ローン控除など他の控除が発生した

多くの場合、シミュレーションサイトで損しない寄附額を予測してから、ふるさと納税を行います。予測通りに控除されればいいのですが、次のようなケースだと、そうはなりません。

  • ・コロナで配偶者の収入が激減し、配偶者控除を受けることになった
  • ・住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)があった
  • ・離婚や死別でひとり親控除を受けることになった

当初予測しなかったことが起きると、節税額は「ふるさと納税-2千円」よりも少なくなります。つまり「余分に寄附した状態」になるのです。

  • ●原因4:確定申告書の作成ミス

会計ソフトや国税庁「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作れば、ほとんどの計算や天気は自動的に行われます。しかし、ふるさと納税は注意しないといけない箇所があります。「住民税に関する事項」の欄です。

所得税と住民税の計算のしくみは似ていますが、所々異なります。所得税は「所得税法」、住民税は「地方税法」と、定める法律が違うからです。そして、所得税と住民税で異なる点は、「市区町村への連絡事項の欄」に書かなくてはなりません。この連絡の欄は、確定申告書第二表の下の「住民税に関する事項」になります。

本記事の前半で見た通り、ふるさと納税の控除の計算は、所得税と住民税とで違います。そのため「住民税に関する事項」にも寄附額を記載しなくてはなりません。申告書の作成時に見過ごすと、住民税で控除されなくなります。

【引用元】国税庁「確定申告書B第二表」から加工して作成

■間違えていたときの対処法

お伝えした原因のうち、1・2・4は控除を受け直すことが可能です。3は、上限額以上の控除はできないので受け入れるしかありません。

住民税の決定通知書が送付された後で申告をやり直すなら、次のようになります。

1.所得税・住民税で正しく控除を受けるケース

税務署で所得税の確定申告をやり直し→市区町村で住民税の確定申告のやり直し

2.住民税で正しく控除を受けられればいいケース

市区町村で住民税の確定申告をやり直し

たいていのケースは2になるかと思われます。ただ、いずれにしても、ふるさと納税をした自治体からの「寄附金受領証明書」が必要です。紛失してしまったのなら、寄附先に連絡し、再発行してもらいましょう。また、住民税の申告に関しても、お住まいの地域の自治体に直接確認してください。


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