減価償却は、店舗や小売などの設備を持つ個人事業主の確定申告の関門の一つです。「考え方が分かりにくい」という声も。今回は減価償却の考え方や計算の流れ、青色申告・白色申告それぞれの償却方法についてお伝えします。
■減価償却とは「固定資産の劣化部分を数字にすること」
減価償却とは、固定資産の取得価額を使用できる期間で少しずつ費用として計上していくことを言います。
…と言っても、なかなかピンと来ないかもしれません。「ペンは買ったらすぐに全額経費になるのに、どうして車は一度に費用にできないんだ」というのが普通の人の感覚です。
減価償却の考え方は次のようになっています。
- ●考え方1:高額なものほど事業への影響度は大きい
たいてい、モノの値段と価値は相関関係があります。モノの価値は事業に影響します。
100円そこそこのペンは使った瞬間に価値がなくなります。どのペンにするかで事業に大きな影響はありません。イケアやニトリで買った3万円前後のデスクも、1年で価値がなくなります。使い心地の問題はありますが、事業を左右するほどではありません。
しかし車や建物といった百万、千万単位の財産は別です。こういった高額なものは長く使えます。長く使える分、長期間にわたって事業に影響を及ぼします。
こういった財産の取得価額を一度に経費にすると、事業の成績を表す「損益計算書」を正しく作れません。
- ●考え方2:経年劣化部分は「売上を作るための努力」として数値化
ペンもデスクも車も建物も、ただ買うわけではありません。「事業に必要だから」買うのです。見方を変えれば、こういったモノの費用は「売上を作るための努力」に当たります。
しかし建物や車といった高額なものの購入価額は、一度に経費計上できません。事業への影響度合いが高く、数年に渡って影響します。同時に、時間や使用に伴い、必ず劣化します。
そこで、この劣化部分を事業への貢献つまり「売上を作るための努力」と考え、数値化して費用計上します。これが減価償却です。
- ●土地は減価償却しない
減価償却するのは土地以外の固定資産です。土地は減価償却しません。時間の経過や使用で価値が目減りしないからです。
■減価償却費の計算の流れ
では減価償却費の計算の流れを見ていきましょう。計算に必要な要素は、法律で決まっています。固定資産から判断し、数字を探しながら算出します。
1.固定資産を分類する
減価償却をする固定資産を内容に応じて分類します。「建物」「車両」「工具器具備品」「機械装置」などです。
2.耐用年数を探す
耐用年数は1で分類した資産ごとに探します。ただし、用途や構造に応じて異なるので注意しなくてはなりません。同じ建物でも木造と鉄筋コンクリートでは違います。さらに木造でも事務所用か店舗用かで変わるのです。
3.「耐用年数」と「償却方法」で償却率を探す
2の耐用年数で償却率を探します。ただし、この償却率は後述する「定額法」か「定率法」で変わります。耐用年数20年でも、定額法では「0.050」定率法は「0.125」です。
4.減価償却費を計算
減価償却費を算出します。計算式は、定額法か定率法かで次のように異なります。
- ・定額法:取得価額×定額法の償却率
- ・定率法:前年末の未償却残高(減価償却していない部分)×定率法の償却率