世界中を襲うコロナ禍の影響により、サラリーマンが家で仕事をする「テレワーク」という勤務形態が一気に浸透しました。それまで家で仕事をする環境がなかった人にとっては、パソコンの購入費用・光熱費・通信料等々、経費として計上したい項目は山盛り。会社から給与をもらうサラリーマンが自分の所得から経費を控除するには、「特定支出控除」という制度が用意されていますが、本制度を使ってテレワーク関連費用を経費として控除できるのでしょうか。

特定支出控除が使える支出は限定的

給与所得者が経費を所得控除するための仕組みとして、「特定支出控除」という制度が設けられています。

給与所得者は税務上、収入を完全に把握されたガラス張りの中におり、必要経費は「給与所得控除」で控除するという制度設計になっています。

それでは自営業者などと比べ不利だということから1987年に特定支出控除制度が生まれ、また給与所得者も自らの収入や経費をきちんと把握した方が良いという近年の議論の流れにより、何度か拡充されてきました。

おかげで使いやすい制度になったのかといえば、そこは今一つと言わざるを得ません。

なぜかといえば、まず経費として認められる項目が以下に限定されていることが挙げられます。

①通勤費
一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出

②職務上の旅費
勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出

③転居費
転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出

④研修費
職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出

⑤資格取得費
職務に直接必要な資格を取得するための支出
※弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象

⑥帰宅旅費
単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出

⑦勤務必要経費(図書費・衣服費・ 交際費等)※65万円が上限額

次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限る)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの

(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)

(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)

(3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

上記の中で、テレワーク関連費用に当てはまるものは何かあるでしょうか。

従来ならオフィスにいるところ家にいるために余分に掛かった光熱費を経費とするのは、水道光熱費が含まれないためできません。

テレワークのために新たにWi-Fi回線を引いた場合も、通信費は対象となっていません。

また、備品も経費として認められないので、仕事上必要となるためにパソコンやプリンター、もしくは机や椅子を新たに購入した場合でも、やはり対象となりません。

仕事で必要となる書籍や新聞を購入した場合は⑦勤務必要経費に該当するため、これなら特定支出として認められそうですが、ここで金額の制限が問題になってきます。