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【非営利法人の会計と制度】その6 ~②医療法人の会計について~

非営利法人の制度と会計において、その1では非営利法人全体について法人類型別の制度改正と会計基準などの概要を、その2では学校法人の制度と会計を、その3では公益法人の制度と会計を、その4では社会福祉法人の制度と会計を、その5①では医療法人の制度についてお伝えしました。今回は、その5の②として、医療法人の会計について少し詳しく説明します。

1. 医療法人会計の特徴について

(1)医療法人の財務報告の枠組み

医療法人会計における財務報告の枠組みは厚生省令として定められた医療法人会計基準になりますが、これは全ての医療法人に適用されるものではない点に注意が必要です。すなわち、2016年の改正医療法によって制定された医療法人会計基準は、一定規模以上の法人には強制されるものの、それ以外の法人では適用が任意であるからです。この規模基準は、会計監査の義務化と同様、次の通りになります。

  • ・負債50億円以上または収益額70憶円超の医療法人
  • ・負債20億円以上または収益額10憶円超の社会医療法人

この基準に満たない医療法人は1965年に制定された病院会計準則(1983年と2004年に改正)などを採用することが容認されていますが、病院会計準則は施設会計を目的としたものであり、法人全体の財務報告を目的としていませんので注意が必要になります。

 

(2)計算書類等の体系

医療法人会計基準が適用される一定規模以上の医療法人は、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、純資産変動計算書、附属明細表、関係事業者との取引に関する報告書を作成しなければなりません。

このうち、法定の会計監査の対象となるのは、財産目録、貸借対照表、損益計算書となります。なお、ここで注意が必要となるのは、医療法人会計基準においては、次に述べる通り、簡便的な会計処理が容認されていることから、適正性ではなく、準拠性の監査意見が表明される点にあります。

 

(3)簡便的な会計処理

医療法人会計基準では、他の会計基準と異なり、一定規模(前々会計年度末日の負債総額が200憶円未満)の医療法人について、3つの簡便的な会計処理が規定されています。

 

  1. 所有権移転外ファイナンス・リース取引について、リース取引開始日に上記の一定規模を満たしている場合、賃貸処理を行うことができる。
  2. 貸倒引当金について、法人税法における貸倒引当金の繰入限度相当額が取立不能見込み額を明らかに下回っている場合を除き、その繰入限度相当額を計上することができる。
  3. 退職給付引当金について、簡便法を適用して計上することができる。

 

(4)事業損益の区分

医療法人会計基準では、事業損益を、①本来業務、②附帯業務、③収益業務に区分しなければなりません。それぞれの業務は、医療法等によって、次のように区分されます。

 

  1. 本来業務:病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設
    なお、病院等の建物内の売店及び敷地内の駐車場、通院患者の当該病院等へ又は当該病院等からの無償搬送は本来業務に含まれる点に注意が必要です。
  2. 附帯業務:医療関係者の養成又は再教育、医学又は歯学に関する研究所の設置、医療法第39条第1項の診療所以外の診療所の設置、疾病予防運動施設、疾病予防温泉利用施設、保健衛生に関する業務、社会福祉事業のうち厚生労働大臣が定めるもの、有料老人ホーム
  3. 収益業務:社会医療法人が、本来業務に支障のない限り、定款又は寄附行為の定めるところにより、その収益を本来業務の経営に充てることを目的として行う業務

 

(5)純資産の区分

前回記載した通り、医療法人には、(1)社団たる医療法人と(2)財団たる医療法人があります。さらに、(1)社団たる医療法人には、①持分の定めがある法人と②持分の定めがない法人が存在します。

このうち、持分の定めのある社団の場合には、純資産に「出資金」が計上されます。また、持分の定めがない社団の場合で、基金制度を採用している場合には、純資産に「基金」又は「代替基金」が計上されることになります。

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