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「租税条約等に基づく情報交換」の実施状況~CRSによる情報入手は206万件と大幅増加:元国税庁国際担当官 多田恭章の海外取引に関する税金知識

国税当局が海外取引や国外財産の情報を収集するための重要なツールの一つが「租税条約に基づく情報交換」です。国税庁は「令和元事務年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要」を公表しました。我が国にとって2回目となるCRS情報の自動的情報交換では、日本の居住者が海外に保有する金融口座に関する情報約206万件を86カ国の外国税務当局から受領しました。

「情報交換」とは、外国の税務当局との間で、調査に必要な税に関する情報をお互いに提供し合う仕組みをいいます。税務当局は近年、この情報交換を積極的に活用し、外国の税務当局から調査に有効な情報の入手に努めています。
情報交換には、「自動的情報交換」「要請に基づく情報交換」及び「自発的情報交換」の3類型があります。このうち、「自動的情報交換」には、近年注目を浴びている国際的な脱税や租税回避行為に対処するためのCRS(Common Reporting Standard:共通報告基準)に基づく金融口座情報(CRS情報)があります。

CRSでは206万件の情報を入手

CRSは、国際的な租税回避に対処するために、OECD(経済協力開発機構)で策定された制度で、各国の税務当局が自国の金融機関に対し、外国に住む顧客(非居住者)の金融口座情報を報告させ、各国と情報交換する仕組みをいいます。この制度を活用することにより、日本の国税当局は、日本人が海外に保有する預金等の情報を入手することが可能となります。

CRSによる情報は、海外にある資産やそこから生じる所得の把握などに効果的であると言われており、国税当局は、国外送金等調書や国外財産調書などの各種調書や既に保有している資料情報等と併せて分析を行い、税務調査に積極的に活用しています。

国税庁によると、令和元事務年度では、日本の個人や法人が海外に保有する金融口座情報約206 万件を86カ国・地域の外国税務当局から受領したと発表しました。昨年(平成30事務年度)は74万件の受領であったことから、大幅に増加したことが分かります。これは、平成30事務年度は、新規開設口座と口座残高1億円超の個人口座が対象となっていたのに対し、令和元事務年度以降は、これらに加え1億円以下の個人口座と法人口座も交換対象とされたことが増加の要因となっています。

地域別にみると、国税庁が受領した206万件の情報のうち、アジア・オセアニアからの情報が約8割を占めています。アジアでは、台湾と日本との間の情報交換が2020年から実施されています。台湾は日本と経済的な交流が深く、日本居住者の中には台湾に口座を保有している者が一定数以上いるものと思われるため、台湾に金融資産を保有している者は注意が必要でしょう。

【令和元事務年度におけるCRS情報の受領・提供の状況】

(出典:国税庁報道発表資料)

CRS情報の活用例

CRS情報は、税務調査で威力を発揮しています。国税庁からは、CRS情報が端緒となって申告漏れが把握された活用例が公表されています。

【活用例1】
外国税務当局から受領したCRS情報をもとに、調査対象者であるAの個人名義の海外預金口座を把握したが、所得税申告書等には関連する所得や財産についての記載がなく、所得税の申告漏れが想定された。税務調査の結果、Aは海外で金融商品への投資や不動産の購入、貸付及び売却を行っていたにも関わらず、投資収益や不動産の賃貸料、売却益などの所得税の申告が漏れていることを把握した。

【活用例2】
CRS情報から、被相続人BがX国の金融機関に口座を保有していることを把握したが、相続人Cの相続税申告書には当該預金口座の記載がなく、相続税の申告漏れが想定された。そこで、Bの相続開始時点でのX国の金融機関口座の預金残高を示す資料の提供をX国税務当局に対し個別に要請した結果、Bの相続開始時の預金残高が判明し、Cの相続税の申告漏れを把握した。

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