2021年1月から3月(第一四半期)のM&A(合併・買収)件数が、コロナ禍においても顕著な伸びを見せていることが分かった。M&A件数は昨年、コロナ禍で経済状況が悪化するなかでも、大きく落ち込むことはなかった。事業拡大、生き残り戦略、事業承継などのニーズから、2021年もM&A市場は賑わいそうだ。

コロナ禍で先行きが見えない経済状況が続いているが、2021年1月から3月(第1四半期)までのM&A件数(適時開示ベース)は242件と、この時期としては高水準で取引されていることが分かった。

M&A仲介大手のストライク(東京・千代田区、代表取締役社長=荒井邦彦氏)調べによると、「前年同期比で1件減少したものの、前年の第1四半期は、リーマンショック(2008年)後の最多件数を記録しており、今年もそれに匹敵する水準」。

特徴的なのは、前年同期の取引件数は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が本格化する前の数字だが、今年の第一四半期はコロナ禍にもかかわらず、M&A市場の勢いが衰えていないことを示す結果となっていること。

取引金額に関しては、2兆6817億円(金額公表分のみを集計)で、前年同期(1兆1157億円)の2倍以上に膨らんだ。1千億円を超える巨額案件は前年1件にとどまったが、今年は5件となり、米IT企業を1兆円超で買収する日立製作所をはじめ、金額上位には海外案件が並んだ。

第1四半期の月別の取引をみると、1月のM&A件数は53件と前年同月比21件の大幅減だった。これは、2度目の緊急事態宣言が11都府県に発令されことなどが、進行中のM&Aの交渉遅延等に繋がり、成約件数が減ったものと思われる。

その反動もあり、2月は前年同月比14件増の95件と、月間100件に迫った。3月も同6件増の94件と高水準を維持。2カ月連続で月間90件台に乗せた。これは2008年以来13年ぶり。

月別の取引金額も2月、3月と2カ月連続で1兆円の大台を突破。第1四半期としてこれまで最高だった2016年の2兆2495億円をおよそ4300億円上回る結果となった。