3.請求人の主張

本件土地に借地権を設定したのであるから、措置法施行令25条の16第1項2号所定の「譲渡をした資産」は、本件土地の自用地としての価額に借地権割合を乗じた金額となるのであって、当該金額は、本件土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)を上回ることとなるから、結局、「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」は、本件土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)の全額となる。

4.審判所の判断

(1)法令解釈

本件特例は、一定の要件に該当する場合に、例外的な措置として、相続税を取得費として加算することを認めるものであるところ、これは、相続人が相続税の納税のため相続財産を処分しなければならない場合、その財産の処分に際して、その処分をした者に対し、被相続人の所有期間に生じたキャピタルゲインを含めて所得税を課税する(被相続人の取得価額に基づいて譲渡所得を計算する)ことから、当該納税者の負担感が強くなるという問題に対処するため、政策的な見地から、相続財産の処分をした場合、譲渡所得の計算上、譲渡した相続財産に対応する部分の相続税額を取得費に準じて加算することを認めた趣旨のものと解される。

そうすると、本件のように、相続税課税時には1つの資産として評価された土地について借地権が設定された場合、その取得費加算額は、譲渡所得課税の対象とされた当該借地権が、相続財産の課税価格の計算の基礎に算入された当該土地のうちに占める割合を考慮して算定することが相当である。

(2)検討

(本件に先立って行われた)相続税更正処分においては、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された本件各土地の評価額は、自用地としての評価額ではなく、貸家建付地として評価された金額であるところ、これは相続税の課税価格の計算上、本件土地の評価額を貸家建付地として減額しているだけであって、本件土地そのものであることには変わりはない。したがって、措置法施行令25条の16第1項に規定される「譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」として本件借地権が本件土地のうちに占める価額は、本件土地が相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額すなわち貸家建付地評価額に本件借地権の占める割合を乗じた価額とするのが相当である。

(3)請求人の主張の排斥

「当該譲渡した資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」とは、本件土地の相続税評価額(貸家建付地評価額)に本件土地のうち譲渡した資産の割合を乗じた価額となるのであって、譲渡された本件借地権に対応する部分を超えて、つまり、譲渡していない所有権(底地)に係る部分についてまで加算を認めることはできないのであるから、請求人の主張は採用できない。

(4)原処分の適法性について

上記(3)のとおり、請求人主張は認められないが、本件では、契約書に貼付けされた印紙代につき譲渡収入から控除すべき費用として請求人の納付すべき税額を計算すると、原処分の金額を下回ることから、原処分を一部取消すこととする[2]


[2] 国税不服審判所の審理の範囲は、いわゆる「総額主義」を採用しており、不服申立人の主張範囲の如何にかかわらず、処分を適法又は違法とするあらゆる理由が審理の対象となる(これに対し、不服申立人の主張の当否のみを審理対象とする考え方を「争点主義」という)。本件における原処分一部取消しの判断はその表れと解される。