■個人のふるさと納税との違い

企業版も個人版も「寄附の一部を控除できる」点では同じです。ただ、企業版には個人版にはない特徴があります。次の4つです。

  • 1、1回当たりの寄附額は10万円以上
  • 2、寄附企業への経済的な見返りは禁止
  • 3、本社の所在する地方公共団体に寄附しても税額控除できない
  • 4、3以外で寄附しても税額控除できない地方公共団体もある

まず1です。企業にも個人にも寄附の上限額があります。しかし個人には「最低これだけ寄附して」といった条件はありません。「寄附額-2千円」が軽減されるのみです。一方、企業には「最低10万円」という寄附の下限額が設定されています。

次に2です。この制度では、寄附の見返りを禁じています。寄附した企業は、物品の受取はおろか、補助金受給や融資で優遇してもらうことはできないのです。個人が返礼品をもらえるのとは対照的です。

そして3です。本社、つまり地方税法に規定する「主たる事務所または事業所」のある自治体に寄附しても税額控除できません。一方、個人は「返礼品ナシ」という条件付きで、住んでいる自治体に寄附できます。

最後に4です。内閣府からの認定を受けていない地方公共団体に寄附しても税額控除できません。具体的には、次の条件に当てはまるところとなります。

【引用元】企業版ふるさと納税の大幅な見直し(令和2年度~)(内閣府 地方創生推進事務局)

【参考】令和2年度 不交付団体の状況(総務省)

「自らの税収だけで運営できるので国の支援がいらない自治体」が不交付団体です。都道府県なら東京都があてはまります。

このような寄附先の制約は、個人版にはありません。

■令和2年度税制改正で変わった点3つ

創設当初の企業版ふるさと納税は、手続きが複雑でメリットの少ない制度でした。しかし令和2年度税制改正で、使いやすくなりました。企業におけるポイントは次の3つです。

  • ●適用期限は令和7年3月末までに

改正前は令和2年3月31日が適用期限でした。しかし改正で延長され、令和7年3月31日までとなりました。

  • ●企業の実質負担が「4割→1割」に

税額控除は改正前、「寄附額の3割まで」でした。しかし、この割合が引き上げられ、現在「寄附額の6割まで」税額控除できます。損金算入分も考えると、実質負担は最小で1割になるのです。

【引用元】令和2年度税制改正 企業版ふるさと納税の拡充・延長(内閣府 地方創生推進事務局)

  • ●寄附時期を選ばなくていい

地方公共団体の話ですが、以前は地域再生計画の申請・認定を受けるための手続きが複雑でした。目標や事業などを細かく書かなくてはならなかったのです。また、事業費が確定してからでないと寄附を受け入れられませんでした。企業の立場からすると、都合のいいときに寄附ができなかったのです。

けれど、税制改正で手続きが緩和されました。事業費の記載がいらなくなり、「寄附の金額の目安」が新たに記載項目に設けられたのです。結果、自治体は事業費が確定していなくても、寄附を募れるようになりました。これにより、企業も急がず慌てず寄附できるようになったのです。

【引用元】令和2年度税制改正 企業版ふるさと納税の拡充・延長(内閣府 地方創生推進事務局)