■「資本の部」の考え方は会社法と税法で違う
会計上の資本の部は、資本金・資本剰余金・利益剰余金から構成されます。一方、法人税法では、独自のルールにより、資本の部を資本金等の額・利益積立金額に分けています。
図にすると次のようになります。
【引用】「法人税法(令和3年度)税大講本」国税庁P130より加工して作成
●法人税法の「資本金等の額」「利益積立金額」とは何か
資本金等の額は「資本金」と「資本金の額以外のもの」でできています。資本金は、会社法に規定する資本金や出資金と同じです。一方、資本金の額以外のものは、法人税法で「株主等が拠出した金額のうち、資本金の額に組み入れられずに留保されているもの」とされています。
「資本金等の額」が増減しても、株主の出資分が動いているに過ぎず、法人税法上の損益には影響しません。
一方、利益積立金額は「法人の所得で課税済みのもの留保分」となります。株主の拠出部分ではありません。課税済みの利益の残りです。
●会計の「資本の部」と税法の「資本の部」は一致しない
会計と法人税では、収益や費用の考え方が異なります。会計で費用に計上できても、法人税で費用にならないものがあります。その逆も然りです。したがって、会計の「資本の部」と法人税法の「資本の部」は一致しません。つまり、会計上の資本剰余金からの支払いでも、「法人税法の『資本等の額』だけで構成されている」とは限らないのです。
法人税法・所得税法では、通常の配当以外の株主への支払に関してルールを定め「株の配当や売却益と実質的に同じものについては課税する」などとしています。
■日本郵政からの配当は「配当所得」「譲渡所得」の2つ
今回、日本郵政から受け取った配当金は、先ほどの「2.資本剰余金からの配当」に当たります。ここで支払われたお金は、次の2つの所得を含んでいます。
●みなし配当の部分は「配当所得」で課税
みなし配当の部分は、法人税法上の「資本金等以外の部分」つまり「利益積立金額」にあたります。税法上は資本取引ではなく、内部留保した利益の配当です。そのため、受け取った個人側では「配当所得」が生じ、所得税・住民税の対象となります。
●みなし配当以外の部分は一部が「譲渡所得」で課税
みなし配当以外の部分は、法人税法上の「資本金等の額」の払戻になります。資本取引になるので、受け取った個人にとっては「払い込んだ出資金の一部が戻ってきただけ」なのです。しかし、法人側では払い戻した分だけ、純資産が減ります。結果、払戻の対価と払い戻された出資金の差額は売却益とみなされ、「譲渡所得」として所得税・住民税がかかるのです。
全体を図にすると、次のようになります。