昨今、AIやRPAの導入が進むことにより多くの職業がなくなると予想され、税理士もその職業の1つに含まれているといわれています。さらに、新型コロナウイルスによる経済縮小で、顧客の売上が減少し顧問契約を解除されてしまう会計事務所も散見されます。しかし、このコロナ禍でも財務整理以外の付加価値を付けた戦略を取り入れることで、会計事務所の売上を向上させる戦略が実在します。今回は、税理士・税理士法人300事務所以上の協会員支援を行う、一般社団法人中小企業税務経営研究協会の藏田 陽一代表理事、大野 晃理事にお話を伺いました。

目次

  1. AIやクラウドの発展により税理士による税務顧問の単価が低下する
  2. リモートワークによる影響が大きい税理士業界
  3. 一般社団法人中小企業税務経営研究協会について
  4. 会計事務所の置かれている現状とその打開策をインタビュー
  5. まとめ

1.AIやクラウドの発展により税理士による税務顧問の単価が低下する

クラウド、AIやRPAの発展により、テクノロジーは人の代わりにプログラミング化された税務会計業務を、短時間かつ正確に行うことができます。AI先進国では、既に税理士の需要が低下し始めており、今後その流れはますます進むと予想されています。

日本でもAIやRPAの導入が加速し、税務会計の自動化が進めば、税務顧問業務自体で差別化を図ることが難しくなるでしょう。そうなれば、生き残りをかけた付加価値を創造するために、新しい領域へも目を向ける必要性が出てきます。

これから税理士が提供するべき付加価値とは?

今後会計事務所の差別化を図るためには、以下のような税務顧問業務以外の付加価値を提供するべきだと考えられます。

・公庫融資、銀行融資などの融資支援
日本公庫や銀行から、新たに事業をはじめる際に必要となる設備資金や運転資金などの融資支援を行います。会計事務所では代理で融資手続きを行い、融資が難しい案件にはより専門性の高い信頼できるパートナーへとパイプを繋ぎ、紹介をすることで付加価値を提供できます。

・事業再生の支援
経営不振に陥る企業を再建し、経営の健全化を図る支援を行います。企業が抱える債務超過や資金繰りの悪化などに対応するため、依頼後は貸借対照表と経営実績の精査をします。経営者の事業や生活・財産を守り、救済の支援を行います。

・相続手続き、記帳代行
企業の相続の際の手続きや、入出金の記録・請求書などから伝票や現金出納帳などの補助簿作成の代行を行います。企業は、会計事務所に依頼することで、相続手続きで適切な控除が利用でき、記帳代行では帳簿作成のアドバイスや、自計化の支援なども受けられます。

・コロナ禍における給付金・補助金の申請サポート
コロナ禍での売上低迷による企業への援助資金である、給付金等の申請サポートを行います。会計事務所では、申請サポートという形で、必要書類の確認や手続きのアドバイスを行い、申請をお手伝いします。

 

これからの会計事務所は、新しい業務をタイムリーにキャッチし、お客様がより利用しやすいサポート体制を構築していくべきだといえます。また、会計事務所だけでは対応しきれない案件に関しても、そのまま手放しにしてしまうのではなく、より専門性の高い信頼ができる別の分野のパートナーへとパイプを繋ぐことで優位性が生まれます。企業の町医者として、お客様に相談されたときに紹介ができる体制を整えておくことが重要です。