スコッチライト事件

他方、スコッチライト事件という訴訟も大変有名です。「スコッチライト」と呼ばれる信号用品を輸入した納税者が、神戸税関長から30%の税率で関税を徴収されたところ、同時期に、同物品につき横浜税関長及び大阪伊丹出張所長は20%の税率で関税を徴収していたことから、これを差別的取扱いで不当であるとして国を訴えた事件です(同事件については、酒井克彦『スタートアップ租税法〔第3版〕』174頁(財経詳報社2015)参照)。

この事件は租税法律主義と租税平等原則の関係性を論じる際のリーディングケースとして大変重要な事件ですが、スコッチライトが関税率表に定める物品のいずれに該当するかが争点の基礎となっています。原審神戸地裁昭和41年11月28日判決(訟月13巻2号256頁)は、科学技術の観点から、スコッチライトの構造、用途および特性等を踏まえた上で、重要な特性を与える物品は合成樹脂層であると認めるのが相当であるとして、神戸税関長の判断に違法はないとしました。

関税法はいわゆる掲名主義を採用しており、当該対象物がどのような性質の資産であるかという形式的な分類に当てはめることによって適用対象税率が確定する仕組みを採用しています。すなわち、上記バリケン事件では、ある納税者が海外から輸入した「バリケン」なる鳥が、果たして「あひる」なのか否かが極めて重要な論点になったというわけです。これは、上記のスコッチライト事件でも同様の論点であるといってよいでしょう。

金属マンガン事件

また、物品税に関する事例ですが、いわゆる金属マンガン事件では、「金属マンガン」という物質が、当時の地方税法489条1項2号にいう「合金鉄」に含まれるか否かが争われました(同事件については、酒井克彦『レクチャー租税法解釈入門』12頁(弘文堂2015)参照)。

結果として、金属マンガンは、同条項にいう「合金鉄」には該当しないとされ、その上で、約15年の長きにわたり金属マンガンの製造に使用する電気について非課税の事実状態が継続したからといって、市長が過年度分にさかのぼって電気ガス税の賦課決定をすることは、禁反言の法理又は信義則に違背しないと示されています(仙台高裁昭和50年1月22日判決(裁判所HP))。

地方税法上の「合金鉄」に該当すれば電気ガス税が非課税となるところ、「金属マンガン」という物質が果たしてどのような物質なのか、その物質の科学的な性質次第では課税か非課税かが変わってくるわけですから、自然科学分野の議論がダイレクトに租税法上の議論に接続した事例といってよいでしょう。