5.資格による超過収入

ここまで、
- ・コスト=その資格を取得するのにかかる費用
- ・リターン=年収、生涯収入、もしくはそれらをもとに算出したDCF
として各資格を分析してきましたが、改めてリターンについて考えてみます。
資格取得のみならず、転職、昇格昇給などを経済的価値の観点から眺めた場合、それぞれのイベントにより得られるリターンとはその後の年収や生涯収入そのものでしょうか。それとも一般的な収入やそれまでのキャリアで得られた年収を超える部分でしょうか。
投資意思決定においては、投下資本とそれにより直接得られるリターンを対比させて意思決定を行いますが、これを当てはめるならば、資格取得による直接的なリターンとは「有資格者の年収・生涯収入」から「その資格がない場合の平均的な収入」を控除した超過収入であると考えられます。なぜならば「それまでの年収」「日本における平均的な収入」とは特別な投資を行わなくとも得られるだろうリターンだからです。
以下ではリターン=超過収入と捉えて再度分析していきます。なお本稿では「資格がない場合の平均的な収入」を「最終学歴が高校の場合の平均年収」とし、「有資格者の年収・生涯収入」から控除して超過収入を算出することとします。
(1)最終学歴が高校の場合の年収と生涯収入
高校を卒業し、すぐ働き始めた場合の年収と生涯収入は以下の表の通りです。
* 生涯収入は年収×48年間(18~65歳まで)にて算出

(2)超過収入(年収ベース)
続いて、資格を取得したことで得られる超過収入についてまとめたのが以下の表です。
超過収入(年収ベース)=各資格の平均年収-最終学歴が高校の場合の平均年収

順位は「3.リターン(1)平均年収」と変わりません。なお6位社労士の超過収入は、額面では21万円、手取では13万円となり、月収に直すと額面で2万円、手取で1万円に留まります。あくまで平均値を基にした場合ですが、年収ベースでの超過収入はさほど期待できないことになります。
(3)超過収入(生涯収入ベース)
生涯収入ベースでの超過収入を見ていきます。
超過収入(生涯収入ベース)=各資格の生涯収入-最終学歴が高校の場合の生涯収入

こちらも「3.リターン(2)生涯収入」と順位は変わりません。1位弁護士、2位会計士では手取の超過収入が1億円を超えており、高収入とのイメージ通りの結果になっています。3位司法書士は5千万円とそれなりに金額が大きく、4位行政書士、5位税理士は2千万円台となっています。
なお社労士の超過収入はマイナスとなっています。これは最終学歴が高校の場合と年収が大きく変わらないことに加え、働く年数が高校卒業者48年に対して社労士44年であり、4年短くなっているためです。
資格を取ったことによる経済的なリターンがマイナスになりうるというのは驚きです。あくまで平均値に基づく推計であり、実際は働き始めるタイミングや何歳まで働くか、また勤務先や独立開業によっても年収や生涯収入は大きく変動するとはいえ、このようなケースも想定した上で将来を検討する必要がありそうです。
一方、医師を見ると高校卒業者の生涯収入の倍以上を稼ぎ、超過収入は1億8千万円を超えています。これは弁護士の1億4千万円を大きく超える数値であり、超過収入で見てもやはり医師の経済的なリターンは大きいと言えます。
(第3回に続く)
【注釈】
*1 最終学歴が高校の場合の年収と生涯収入については下記のサイト等を参照
・令和2年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2020/index.html
・高卒の平均年収はどのくらい? キャリアを築いて給料を上げる方法は?(工場タイムズ)
https://04510.jp/times/articles/-/11818?page=1
*2 手取(税引後)金額算出に当たっては下記のサイト等を参照
・月収と年収の手取り計算|給与シミュレーション(ファンジョブ)、https://funjob.jp/keisan/gekkyu/
・年収別 手取り金額 一覧 (年収100万円~年収1億円まで対応)(酒居会計事務所)、https://www.sakai-zeimu.jp/blog/archives/7051
・手取りの意味と月給・年収の額面から手取りを計算する方法(doda)、https://doda.jp/guide/oubo/tedori/
【参考】
・クリスティー・シェン, ブライス・リャン他,FIRE 最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド,ダイヤモンド社,2020年
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