国内勤務であった従業員が海外勤務となった場合、日本に残る家族の生活費等に充てるため「留守宅手当」が支給されることがあります。今回は、この留守宅手当を支給する場合の注意点について解説します。
≪ケース≫
当社の社員Aは、東南アジアの海外子会社に3年間の予定で出向するため出国しました。社員Aの給与は海外子会社が負担し現地で支払いますが、日本に残る家族の生活費に充てるため社員Aに「留守宅手当」を支給することとしました。
「留守宅手当」は、社員A名義の日本の銀行預金口座に日本の親会社から振り込む予定です。この「留守宅手当」は日本で課税されるのでしょうか?
留守宅手当は日本で課税されるのか?
海外子会社に出向した社員が日本に家族を残して単身赴任した場合や、現地子会社から支給される給与が日本の給与水準と比較して低いなどの理由から、「留守宅手当」が支給されるケースが多く見られます。

この「留守宅手当」が日本で課税されるかどうかについては、まず、この社員が所得税法上、居住者に該当するのか、非居住者に該当するのか判定する必要があります
社員Aは、3年間の予定で海外子会社に出向するとのことなので、出国の日の翌日から日本の「非居住者」になります。「非居住者」に対する日本での課税は、日本での勤務に基因して支払われた給与など「国内源泉所得」に限られます。海外での勤務に基因して支払われた給与などは「国外源泉所得」となるため、日本法人が国内で支払っていたとしても日本では課税されません。
ご質問のケースの「留守宅手当」は日本で支払われますが、出向者が海外で勤務したことに基因して支払われるものですから「国外源泉所得」となり、日本での課税関係は生じません。したがって、留守宅手当の支給に際して源泉徴収する必要はありません。