2022年の年末調整の時期がやってきました。複雑さを増すばかりの年末調整全書類の書き方について、2021年からの変更点に限らず、一から十まで懇切丁寧に解説します。
[この記事のポイント]
- 全員提出:「令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(いわゆるマルフ)
- 必要に応じて提出:「給与所得者の基礎控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「所得金額調整控除申告書」(3つ合わせて1枚の用紙になっています。いわゆるキハイショ)
- 該当する場合は提出:「給与所得者の保険料控除申告書」(生命保険・地震保険・国民年金を自分で払っている・iDeCoなどに加入している人)、「住宅借入金等特別控除申告書」「年末借入金残高証明書」(住宅ローン控除適用者)、「給与所得の源泉徴収票」(転職して今年から今の会社で働き始めた人)
年末調整書類はもはや確定申告に匹敵するほどに複雑なつくりになっており、さまざまな控除の適用を受けたい人は、自分で複雑な計算をしなければ正確な記載ができません。
大企業などでは年末調整の提出が電子化したところも増えており、また国税庁でも年末調整ソフトを公開していることから、会社の受け入れ態勢さえ整っていれば電子データで会社に提出することも可能です。
とはいっても、大多数の会社においてはまだまだ紙での提出が当分続くでしょう。
紙で年末調整書類を提出する際のポイントについて解説します。
2022年の変更点
まずは2021年から変わった点について解説します。
社会保険に関する書類がマイナポータル連携に
「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」および「公的年金等の源泉徴収票」がマイナポータル連携を開始しました。
これにより、マイナンバーカードを取得しマイナポータルで「ねんきんネット」に利用登録していると、電子データで「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」および「公的年金等の源泉徴収票」を受け取ることができます(ただし、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」は2022年分の送付はもう始まっています)。
年末調整の書類は、アプリ等で作成し、紙ではなく電子データで勤務先に提出することも可能です(コラムの末尾をご参照ください)。
2022年に増えた記載すべき項目
「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の、「非居住者である親族」欄が改正され、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の欄が新設されました。
詳しくは「全員が提出:令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で解説します。
提出しなければいけない年末調整書類とは
年末時点まで会社勤めをしており、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している場合、パートやバイトであっても年末調整書類は提出します。ただし年収が2,000万円を超えると年末調整ではなく、自分で確定申告をする必要があります。
なお、不動産による収入や副業による事業所得がある、医療費控除を適用したい、住宅ローン控除開始1年目、6か所以上ふるさと納税を行っておりワンストップ特例が使えないといった理由で、会社勤めであっても確定申告が必要な場合もあります。
ですが、そういった場合も基本的には年末調整書類は会社に提出します。
【全員提出】
- 令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マルフ)
※予定を含め1年以上海外に住む扶養親族がいる場合、親族関係書類(戸籍の附票の写しや海外在住親族のパスポートの写しなど)と送金関係書類(外国送金依頼書の控えなど)を添付する。
- 令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マルフ)
※新たに扶養親族が1年以上海外に住む場合、親族関係書類を添付する。
【年末調整を受ける人全員提出】
- 令和4年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(キハイショ)
※予定を含め1年以上海外に住む配偶者がいる場合、親族関係書類と送金関係書類を添付する。
【生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料、iDeCo、地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金控除の申告をする場合に記入し提出】
- 令和4年分 給与所得者の保険料控除申告書(マルホ)
※保険会社等から届いた証明書原本を添付する。
【住宅ローンを利用している場合(※2年目以降)に提出】
- 令和4年分 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
※住宅ローンを開始して1年目は自分で確定申告をする必要があります(確定申告期間;2月16日~3月15日)。
※税務署から受け取った「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」を添付する。2011年以後に開始した分は申告書の紙の下の部分が証明書となっています。
※金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添付する。
【2022年中に転職して今の勤務先で働き始めた人が提出】
- 給与所得の源泉徴収票
※以前の会社の給与支払者から交付を受けたもの。
全員が提出:令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マルフ)
(画像出典:国税庁「令和4年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を元に筆者作成)
・扶養親族や源泉控除対象配偶者などがいない人でも提出しなければならないこととされています。
・継続して働いている場合は、2021年の年末調整時(転職などによっては2022年中)記入済みのものです。以前の記載に訂正がある場合、訂正箇所を二重線で打ち消し、余白に新しい情報を記載してください。
・非居住者の扶養親族がいる場合、親族関係書類の添付等が必要で、送金額等を記載した扶養控除等申告書を別途作成するか、提出した申告書に送金額等を追記します。
全員が提出:令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マルフ)
(画像出典:国税庁「令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を元に筆者作成)
【全員が書く】
1.氏名・住所などの記入
・所轄税務署長
会社の所在地を所轄する税務署です。多くの場合、ここは書く必要がありません。
・市区町村長
自分の住所地等の市区町村長(例:東京都板橋区在住なら「板橋」と記入)です。
・給与の支払者の名称
勤め先の会社の名前です。
・給与の支払者の法人(個人)番号
勤め先の会社の法人番号です。多くの場合、ここは書く必要がありません。
・給与の支払者の所在地
勤め先の会社の住所です。
・あなたの氏名・個人番号・住所または居所・生年月日・世帯主の氏名・続柄
自分の名前とマイナンバー、住所を記入します。自分が世帯主の場合は、世帯主の氏名の欄にも自分の名前を書き、続柄を「本人」とします。
(マイナンバーは書かないで良い場合もあるので勤め先に確認しましょう)
・配偶者の有無
有に〇を付けた場合、用紙の「A」の欄も記入します。
・従たる給与についての扶養控除等申告書の提出
2か所以上から給与の支払を受けている人が、他の給与の支払者に「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出している場合に〇を付けます。
【当てはまる人が書く】
2.控除を受ける配偶者や扶養親族などがいる
●A 源泉控除対象配偶者
・自分自身の令和4年中の合計所得金額の見積額が900万円以下(給与のみの場合給与収入が1,095 万円以下、所得金額調整控除ありの場合は給与収入が1,110 万円以下)の場合、所得見積金額95万円以下(給与のみの場合収入150万円以下)で生計を一にする配偶者(青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除く)については名前・生年月日・個人番号(書かなくて良い場合もあり)・所得見積額・住所または居所を書きます。
・自分自身の見積合計所得金額が900万円超、配偶者の見積合計所得金額が95万円超の場合はA欄には何も記入しません。
●B 控除対象扶養親族
・2008年1月1日以前生まれの年齢16歳以上の、生計を一にする合計所得見積金額48万円以下の扶養親族(青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除く)については、名前・生年月日・個人番号(書かなくて良い場合もあり)・続柄・所得見積額・住所または居所を書きます。住所又は居所は、上に記載している人と同じ場合は「同上」で構いません。
※16歳未満の扶養親族は「4.住民税に関する事項」に記入します。
・控除対象扶養親族が1954年1月1日以前生まれの年齢70歳以上、自分または配偶者の親や祖父母などで同居している場合は、「同居老親等」にチェック。それ以外なら「その他」にチェックします。
・控除対象扶養親族が2001年1月2日~2005年1月1日生まれの年齢19歳以上23歳未満の場合は「特定扶養親族」にチェック。
・非居住者の場合は「非居住者である親族」欄に〇またはチェック。詳しくは以下「非居住者である親族」をご覧ください。
・異動月日及び事由には、例えば結婚で配偶者となった場合、「令和4年○月○日 結婚」などと書きます。
・控除の対象となる親族が自分以外の人に扶養されている場合、D欄に記入します。
●非居住者である親族
・2022年から記入欄が改正されました。
・源泉控除対象配偶者が非居住者である場合には、この欄に〇。
・控除対象扶養親族が非居住者であり、その非居住者の年齢が16歳以上30歳未満または70歳以上である場合には「非居住者である親族」欄の「16歳以上30歳未満又は70歳以上」にチェックを付けます。
・30歳以上70歳未満の場合には、「留学」、「障害者」、「38万円以上の支払」のうち該当するいずれかの項目にチェック。
・源泉控除対象配偶者や控除対象扶養親族が非居住者である場合、親族関係書類の添付等が必要です。
・また、上記の「留学」にチェックを付けた場合は、留学ビザ等書類の添付等が必要です。
●D 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
・例えば、「共働きで長女については自分ではなく夫/妻の扶養親族としている」といった場合には、長女の情報をここに記入しておきます。
3.障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生
・自分自身や同一生計配偶者や扶養親族が一般の障害者、特別障害者又は同居特別障害者に該当する場合には、該当する欄にチェックを付けます。
※なお、年齢16歳未満の扶養親族も障害者控除の対象。
・寡婦とは、事実婚状態になく、配偶者と離別・死別した本人の所得500万円以下の子供以外の扶養親族がいる女性、もしくは配偶者と死別した扶養親族がいない女性を指します。
・ひとり親とは、未婚・死別・離別問わずに、本人の所得500万円以下で生計を同じとする子(総所得金額48万円以下)を有する、事実婚状態にない単身者を指します。
・勤労学生控除は、勤労による所得を有する一定の要件を満たす学生又は生徒で、その合計所得金額が75万円(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が130万円)以下で、かつ、合計所得金額のうち給与所得等以外の所得が10万円以下の場合に適用されます。
・「左記の内容」欄には、例えば障害者に該当する場合障害者手帳の等級や取得日などを記入します。
4.住民税に関する事項
・2008年1月2日以後生まれの16歳未満の扶養親族はここに記入します。
・国内に住所を有しない扶養親族(2023年の退職所得を除いた合計所得金額の見積額が48万円以下)に該当する場合に、控除対象外国外扶養親族に〇を付けます。この場合、親族関係書類の添付等が必要です(すでに提出している場合を除く)。
●2023年に退職手当等をもらう配偶者・扶養親族
・2022年から新設された項目です。
・2023年に退職手当等(源泉徴収されるものに限る)の支払を受ける予定の配偶者(生計を一にする配偶者で、2023中の退職所得を除いた合計所得金額の見積額が133万円以下)または扶養親族(2023年中の退職所得を除いた合計所得金額の見積額が48万円以下)について記載します。
・「令和5年中の所得の見積額」欄に記入する金額は、退職所得を除いた見積額です。
・扶養親族の2023年中の合計所得金額の見積額が、退職所得を除くことで48万円以下になり、自身が「寡婦」「ひとり親」に該当するような場合は、最後の項目にチェックを入れます。