起業して自分の創り出したものを社会に根づかせたい、そんな夢を胸に抱いていても、実現するためのお金がない……これまでは夢のスタートラインに立つことすら簡単ではなかった。ところが、ときは流れて事情は変わりつつある。クラウドファンディングという名の資金調達方法が世の中に登場し、徐々に根づき始めたからだ。

夢のスタートラインに立つ

クラウドファンディングとは、金融機関や親・兄弟といった特定の機関や人に対してではなく、不特定多数の人々にやりたいことを宣言して、賛同・共感してくれた複数の人から小口の資金を集めて、目標金額まで調達する方法である。

クラウドファンディングが登場してから5年間、今ではものづくり、起業、スポーツ、芸術から途上国支援や医療・社会福祉に至るさまざまな分野で広く活用されている。

クラウドファンディングは単なるお金集めではない

金融機関からの融資、補助金・助成金など、クラウドファンディング以外にも資金調達の方法はたくさんある。ではなぜ、クラウドファンディングには他の資金調達手段にはない魅力があるのか。

資金調達者にとってお金を得ることが目的ではなく、そのお金を使って新しい価値を生み出すことが目的だ。クラウドファンディングは自分が思っていることを伝え、それに賛同してくれる人と共に目標に向かっていく手段である。

作り手ではない人も制作に関与しながら、今までになかった面白いものを作り出す、ファンや応援してくれる人たちと共に新しい価値を生み出していく、というパラダイム・シフトが起こっている。これが従来の資金調達の方法とクラウドファンディングが一線を画しているところであり、クラウドファンディングの魅力ではないだろうか。

成功の秘訣は?

お金を払うということを通じて自分が関心あるプロジェクトに関わりたい、自分がよいと思うことにこそお金を投じていきたいという、資金提供者側の欲求としてもクラウドファンディングは時代にマッチしている。

しかし、支援したいけど関わり方がわからない、応援の仕方がわからないというケースもある。こういった潜在的な欲求を叶えていくためには、クラウドファンディングのサイトをうまく利用したり、支援した人にFacebookでシェアしたりしてもらうなどの可視化をしていくことが必要だろう。

また、完成したサービスや商品の提供、成功後にお金を返す約束、感謝状を贈るといったリターン目的でかまわないので支援してくださいという「リターンの提供」、更には、目標金額の達成率や過去の支援者の支援金額を表示することにより、たくさんの人が支援している素晴らしいプロジェクトであるという情報を伝えることが支援を増やすポイントとなっている。

多くの人の共感が得られ支援につながる、そんな説得的で魅力的なメッセージを紡ぐための熱のこもったストーリーを発信していくことが支援を増やす秘訣ではないだろうか。

クラウドファンディングが新しい資金調達手法として日本で注目を浴び始めたのが2011年。それからまだ5年だが、大手企業が続々と参入し1億円を超える調達を達成するプロジェクトが登場するなど、多彩なフェーズで行われ急速に浸透しつつある。

起業家として、これから大きな事業を手掛けたいと夢見ているなら、資金調達の手段として、クラウドファンディングを検討するのもひとつの手ではないだろうか。