国税庁はこのほど、令和2事務年度(令和2年7月~令和3年6月)の調査事績を公表しました。各税目とも新型コロナウィルス感染症の影響により調査件数は減少したものの、大口・悪質と思われる事案に絞って調査を実施した結果、1件当たりの追徴税額は軒並み増加しています。

所得税の調査事績~シェアリングエコノミーなど重点調査

新型コロナウィルス感染症の影響により実地調査の件数は大幅に減少しましたが、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を優先的に調査した結果、1件当たりの追徴税額は増加しました。

特にインターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等の新分野の経済活動を行う個人に対して積極的な調査を実施しています。

シェアリングエコノミー等の新分野の経済活動とは、シェアリングビジネス・サービス、暗号資産(仮想通貨)取引、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動を総称した経済活動をいいます。

新型コロナウィルスの影響で巣ごもりや在宅勤務が普及し、料理宅配サービス「ウーバーイーツ」などの利用が拡大しています。国税当局は「ウーバーイーツジャパン」に対し配達員の報酬金額や振込先の銀行口座などの情報提供を求めており、今後もシェアリングエコノミーに対する重点的な調査は続くものと思われます。

また、有価証券や不動産などを所有し海外投資に積極的な「富裕層」の調査にも力点を置きました。1件当たりの申告漏れ所得金額は2,259万円で、所得税の実地調査全体の1.5倍となっており、1件当たりの追徴税額は 543 万円で、所得税の実地調査全体の2倍となりました。

特に、海外投資等を行っている「富裕層」に対しては、1件当たりの追徴税額は 879万円と高水準を維持しています。

国税庁によれば、海外投資を行っている個人や海外資産を保有している個人などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度のほか、CRS情報(共通報告基準に基づく非居住者金融口座情報)などを効果的に活用し、積極的に調査を実施していくとしています。