今回ご紹介するのは弁護士・公認会計士の門倉洋平氏。東京大学卒業後は、公認会計士として監査法人に入所するも、25歳のころ弁護士を目指し始める。現在は、弁護士かつ公認会計士の立場から相続案件を中心に担当。親身に、かつ丁寧に話を聴く姿勢は評判で、相続のご依頼のみならず、ドラマの法廷監修やニュース番組へのコメント寄与など幅広く活躍をしている。弁護士の仕事をするにあたり、公認会計士時代に身に着けた監査要点の考え方が活きていると語る門倉氏のこれまでのキャリア、弁護士になるまでの道のりに迫ります。(取材・撮影:レックスアドバイザーズ 市川)

スケールの大きな仕事をしたい。公認会計士が司法試験に挑戦

公認会計士、そして弁護士になろうと思ったきっかけについて教えてください。

門倉:小学生のころから算数が得意だったこともあり、高校生の頃は将来数字に関わる仕事をしたいと思うようになりました。また、大企業に関わるようなスケールの大きい仕事をしたいと思ったのもこの頃。大学受験が終わり、大学1年生のときから予備校に通って公認会計士を目指し始めました。

大学受験と会計士試験、振り返るとどちらもまた違った難しさがありましたが、私の場合は会計士試験の方が難しいように感じました。両方とも受験科目が多いのは共通しているかもしれません。全部満遍なく、不得意を作らないのが合格の秘訣である点も似ていると思います。これまでの勉強方法は自分のやり方で進めるタイプで、会計士試験に合格したのは、大学4年生のときでした。

その後は、通っていた予備校で講師をするようになります。目の前にいる受講生たちが同じように会計士試験に合格をしていくのはとてもやりがいを感じていましたし、勉強方法を聞かれるなど、頼りにされるのが嬉しかった。そのため、大学卒業後も監査法人と並行して予備校講師を続けることに決めました。

監査法人は、非常勤会計士としてEY新日本有限責任監査法人に入所をしました。当時、大手の中でも規模が大きい監査法人を選んだのですが、実際に自分の監査先を日経新聞の記事で目にすることも多く、仕事自体もスケールの大きいものでした。

そういった意味では当初の目的は達成できたといえます。ただ一方では、監査の仕事は多くの利害関係者が目にする財務諸表に虚偽がないかをチェックをする仕事なので、社会的貢献度は高い反面、クライアントから直接感謝の気持ちを向けていただける場面が少ないことに物足りなさを感じていました。

自分がやりたいことは、高校生の頃に抱いていた「スケールの大きな仕事」ではなく「人にありがとう」と言われる仕事なのかもしれない。そう考えていたときに、偶然監査法人のM&Aの案件で弁護士さんと一緒に仕事をする機会がありました。M&A案件では企業を再編する際、株式譲渡や株式分割など複数の選択肢がある中で、どういう形で再編するのが望ましいかを決める必要があります。このときに、弁護士の意見がより尊重されることが多い、弁護士の方が、より案件にコミットしているように感じました。

弁護士はまさに”人にありがとうと言われる仕事”を主体的に動かしている。その姿に憧れを持ち25歳からロースクール(法科大学院)に入りました。こうして、監査法人での非常勤勤務、予備校の講師、ロースクールの学生という三足のわらじを履くことになったのです。

“出題者が何を望むのかを考える力”が欠けている。司法試験での挫折

ここまでとても順調にきましたが、ロースクールでは1年目に留年をされています。

門倉:弁護士になるためには司法試験に受かる必要がありますが、その試験を受験する権利を得るためにロースクールを卒業しなければなりません。また進級する際にも試験に合格しないといけないのですが、いざ3年コースの大学院に入学してみると、全ての法律の根幹である憲法が苦手で(笑)。1年生は進級試験に落ちてしまい、2年目も憲法は一度目の試験で不可となってしまいました。ロースクールの規定で再試験に落ちると退学となり、弁護士への道は完全に閉ざされてしまいます。さらに私は仕事もあったので、限られた勉強時間で及第点を取らなくてはなりませんでした。

もう背に腹はかえられないので教授にアポを取って「何が良くないのか分からないので教えてください」と聞きにいったり、勉強のできる同級生に教えてもらったりしました。ここで言われたのは「文章はとてもいいけれども、論点がずれている」ということ。何となく勉強の方向性が見えたので、勉強の仕方を変え、2年生、3年生と進級もでき、何とかロースクール卒業をすることができました。

ところが、この「論点がずれている」ことが、司法試験でも大きな障壁になったのです。

卒業1年目で、毎年5月に行われる司法試験を受験。9月に合格発表なのですが、手ごたえはあったので、8月末には入籍もしました。ところが出た結果は、なんと不合格…。成績の順位も出るのですが、到底受かるはずもない順位でした。その日は、新婚の妻と合格祝いをしようと外で待ち合わせをしていたのですが、不合格を知り道路の端っこで泣いていました(笑)。

自分では頑張ったつもりだったのに、なぜ落ちたのかも分からない…。留年をしたときから私は変わっていなかったのです。そこで、自分の答案を再現して、合格した友人に見てもらったところ、やはり留年当時と同じように「読みやすいけれど、論点が把握できていない。たくさん問題集を解いて、問われるパターンを理解したほうがいい」というアドバイスを受けました。

後から考えると、このときに受けたアドバイスは、単なる試験対策以上のものでした。私に足りなかったのは、“何を問われているのかを把握する力”言い換えれば、“出題者が何を望むのかを考える力”、人の話に耳を傾ける力が不足していたのだと改めて痛感したのです。

プライドは傷つきましたが、友人のアドバイスを含めて“本質的に何を求められているのか”を学ぶ機会となりました。

翌年、2回目の司法試験で合格、晴れて弁護士となります。

門倉:31歳のときに弁護士となり最初に就職したのは、上場を目指すベンチャー企業を多く顧客に持つ法律事務所でした。公認会計士時代、監査先だった上場企業での経験を活かせると思ったので選んだ就職先です。こちらで担当した案件は確かに勉強になりましたし、処理の仕方も学ぶことができ大変に有意義でした。しかし監査法人のときと同じく、だんだんと物足りなさを感じるようになっていきます。

そんなとき、妻から言われた言葉にはっとしました。「対企業の仕事が本質的に向いていないのかも。本当はもっと、対人の仕事をしたいんじゃないの?」と言うのです。それは確かに私が弁護士を目指した理由とも重なります。もっと人に深く関われる案件を担当してみたいと思い、今度は相続、離婚、刑事事件など、裁判や紛争にも幅広く関われる法律事務所へ転職しました。こちらでは2年ほど経験を積み、2015年34歳のときに独立をします。

弁護士、公認会計士の立場から相続案件に携わっていく

独立後、相続案件が増えてきていると伺っています。
門倉:
2つの法律事務所での経験を経て、自分自身を頼ってくれる方のために仕事をしてみたいと思い、司法修習の同期3人でS&Nパートナーズ法律会計事務所を立ち上げました。名前の由来はSouth&North。あらゆる方向のあらゆる案件を担当するということです。企業法務を始め、現在は相続のご相談も増えています。

相続案件は相続人が多数に及ぶ場合など利害関係者の人数が多く、また相続人はもともとお互いが家族・親族という関係のある人がほとんどです。そこで争いごとが起きる場合には、相続が開始した時点の話だけでなく、昔からの親族間のいきさつも紐解いて、円満解決に導いていく必要があります。

お話を聞く相手は、私たちに相談をしてくださるご依頼者のように弁護士を立てる方ばかりではありません。親族の中には弁護士を立てず、自ら交渉に臨む方も多くいらっしゃいます。そういう場合、弁護士対弁護士ではなく、弁護士である私と当事者である親族の方とでお話をします。

話す内容は、遺産の分割方法など案件に直接関係のある話のみではありません。まずは、親族の方の持つわだかまりやお考えをお話しして頂けるように心がけています。専門的な話や、実務的な話よりも、そういう話を聞いた方が、絡まっていた糸がほぐれるきっかけになり、円満な解決につながることもあります。

そして、こちらが話を聞いて先方の気持ちを受け取ることで、先方も態度を柔らげていただけることも多いのです。家庭内の事情や過去の話は、一見目の前の相続の案件には無関係にも思えます。しかし、人の話に耳を傾け、相手がどの部分にこだわりを持ち、引っかかっているのかを聞くことで、解決に繋がります。先入観でストーリーや見通しを決めつけず、相手が“何を望んでいるのか”を理解することが結局は解決への近道なのです。

私は公認会計士から弁護士の道へと進みましたが、会計士時代に監査の現場で忘れてはならない「実在性」と「網羅性」という視点は、現在の仕事にも通じる場面が多々あります。決算書に載っているものが本当に存在しているのかという実在性を確かめるのが会計監査であり、決算書に載せ忘れているものはないのかという網羅性を確かめるのも会計監査です。

この考え方は、弁護士として相続に携わる場面でも必要になります。相続人から「こういう遺産がある」と言われてもそれが本当にあるのか実在性を確かめる必要性がありますし、伺った話以外に例えば負債・債務はないのかという網羅性も確かめなくてはなりません。こういったときに、公認会計士として培った視点が活きてくると感じています。

そして、会計監査の仕事をしている時、監査先の担当者との一見業務とは関係のない些細な会話が、実在性と網羅性を確認するきっかけとなることもありました。「実在性」と「網羅性」もまた本質を辿れば“話を聴く力”が必要になってくると思います。相続の場面においても、ご依頼主そしてそのご家族の本音に触れて寄り添うことで、<争族>ではなく<想続>にしていけるよう、今後も弁護士そして公認会計士の視点でサポートできればと考えています。

 

【編集後記】

公認会計士の実務経験と司法試験を通じ、人としても成長できたと語られていた門倉先生。これからも相続を通じて、ご依頼主のよき相談相手となっていくのですね。門倉先生、ありがとうございました!

弁護士法人S&Nパートナーズ法律会計事務所

●創業

2016年

●所在地

東京都文京区大塚三丁目1番6号 ラ·トゥール小石川2B

●理念

常に、依頼者の方の話をしっかりと伺い、依頼者の方の考え方に寄り添いながらも、依頼者の方の真の利益となるより良い解決を目指すパートナーとなるべく全力を尽くす。

●会社HP

https://www.snplaw.jp/index.html

 


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