自分の相続税は納付済みであっても、他の相続人が相続税を滞納すると、その滞納分も納めなければならない場合があります。相続税や贈与税にまつわる「連帯納付義務」について、元国税徴収官が分かり易く説明します。

◇連帯納付義務とは
相続人は、相続により取得した財産の価額を限度として、他の相続人が納付すべき相続税額について連帯して納付しなければならない義務があります(相続税法第34条第1項)。
また、財産を贈与した人(贈与者)は、財産をもらった人(受贈者)が贈与税を納付していない場合には、贈与した財産の価額に相当する金額を限度として連帯して納付しなければならない義務があります(相続税法第34条第4項)。
これを「連帯納付義務」といいます。
◇なぜ連帯納付義務があるのか
この連帯納付義務は、「同一の被相続人からの相続によって生じた相続税については、相続人が共同して責任を負うべきである」との考え方や租税回避防止などの観点から設けられているものです。
◇連帯納付義務の税制改正
しかしながら、従来から以下のような問題点も指摘されていました。
①当初の申告時に相続人等が連帯納付義務を十分に認識しておらず、また、他の相続人等の納税義務の履行状況が分からないため、連帯納付義務者にとっては、突然に納付を求められる場合があること
②連帯納付義務者が連帯納付義務を履行する時点では長期間が経過しており、既に多額の延滞税が加算されている場合があること
実際に筆者の経験談を少しお話ししましょう。平成16~17年頃の某税務署でのお話です。
相続税の年賦延納許可を受けた納税者が、毎年の分納を滞納していたことから、延納の許可取消しを行い滞納処分へ移行しました。それでも納付が見込めないことから、他の相続人へ連帯納付義務の通知を出しました。
通知を受けた相続人(連帯納付義務者)はさぞかしびっくりしたことでしょう。何故なら、自分の相続税はとっくに納税済みであり、10年近くも経って税務署から他の相続人の相続税を延滞税も含めて支払えとの催促が来たのですから。
こうした問題点に対応するために、平成23年と平成24年の税制改正によって連帯納付義務に関する改正が行われました。