どうしても納税ができず、差押えられる財産もない場合など、一定の要件に該当すれば、滞納処分を停止してもらえる場合があります。今回は「滞納処分の停止」について、元国税徴収官が分かり易く説明します。

◇滞納処分の停止とは
滞納者の納付すべき国税は、租税負担の公平を考えた場合、延滞税を含め完結するまで徴収するのが本来の滞納処分です。
一方で、納付資力や徴収すべき財産もなく、このまま滞納処分を続行する意義のない事案の管理等のために、限られた徴収職員の事務量を投入せざるを得ないこととなりますと、事務の効率化にも反することになり、全体として、滞納整理における確実な徴収にも支障が生じてきます。
このため、滞納者に資力を喪失するなどの一定の事実が生じて、滞納処分を執行すればその生活を著しく窮迫させるなど、滞納処分を執行するのが不適当である場合や、滞納処分ができる財産がない場合など、一定の要件に該当するときは、税務署長は、滞納処分を停止することができます(国税徴収法第153条)。
滞納処分の停止は、滞納者の申請に基づかないで、税務署長の職権で行うことができる規定ですので、滞納者は、滞納処分の停止を受けないことについて不服申立て又は訴えを提起することはできません。
なお、滞納処分の執行が停止されたときは、その旨が滞納者に通知されます。